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バックストーリー  |    2026.06.11

東京学芸大学駅発 古本屋「流浪堂 」の唯一無二の魅力とは?【後編】

はじめに 前編のあらすじ

「流浪堂」は、二見彰(ふたみあきら)さんが、イチからはじめたお店。以来20年以上、今では本好きの人だけではなく、東急東横線の学芸大学駅エリアから発信される文化の拠点として支持されています。

二見さんは、10代後半から20代にかけて音楽に夢中になり、ロックバンドのドラマーとして活動、アルバイトをしたお店が偶然にも古本屋だったことが、「流浪堂」をオープンするきっかけとなります。

その後も、観るものを惹きつける想像を超えた舞台装置と詩的世界を持つ芝居集団に感情を揺さぶられ、まさに興味の赴くまま、音楽、本、お芝居の世界、を縦横無尽に行き来してきました。そんな二見さんと共に今の姿になった「流浪堂」は、いつしか人気店になりました。

この記事では、前編、後編と6つの項目に分けて、「流浪堂」の唯一無二の魅力とこれまでの歩みをお伝えします。

前編はこちら

東京学芸大学駅発 古本屋「流浪堂 」の唯一無二の魅力とは? 【前編】

前編

まずは、「流浪堂」をぐるりひと回り

二見さんと音楽

後編

古本屋チェーン「湘南堂ブックサーカス 」から「流浪堂」へ

街について、地元、2024年7月リニューアル 東横線の学大高架下

「本の市場」とは?

「水族館劇場」について

「流浪堂」への歩き方

渋谷駅から東急東横線で10分の学芸大学駅改札を出て西口に。左手「GAKUDAI KOUKASHITA(学大高架下 )」沿いに真っすぐ徒歩3~4分、「流浪堂」は、東横線の高架下沿いにあるお店です。

流浪堂

東京都目黒区碑文谷6−7−22
営業時間:12:00ー22:00 日・祝12:00ー21:00
定休日:木曜日
公式Facebook:https://www.facebook.com/ruroudou/?locale=ja_JP

古本屋チェーン「湘南堂ブックサーカス 」から「流浪堂」へ

「流浪堂」店主の二見彰さんが20代後半まで所属していたロックバンドは、96年に解散します。そんな時、当時の音楽業界の知り合いが働いていたのが、古本屋チェーンの「湘南堂ブックサーカス 」でした。

映画のポスターにCD、レコード、フィギュア等のサブカルチャー関連のグッズも取り扱う「ヴィレッジヴァンガード」のようなお店だったのでは?と想像していますが、そんな自由な空間に陳列されている古本に興味を抱いたのです。

「流浪堂」は、二見さんが、31歳のときに始めたお店です。「湘南堂ブックサーカス」で経験を積んだ後、現在の「流浪堂」から数分の場所にある洋菓子店「MATTERHORN(マッターホーン)」の近くで、2000年にオープンしました。

1冊、2冊の買取りから、数万単位の買取りまで依頼される「流浪堂」には、オープン以来、22年の時をかけて本や周辺雑貨が増えていきました。当初のお店は、本やモノが床から天井まで埋め尽くす別世界の空間だったようです。

「流浪堂」は、徐々に地元の人々の支持を集め、その評判は周辺地域にも広がり、有名無名の本好きな人々だけでなく、文化活動の基地として評価されるお店になりました。

「散歩の途中、出かけていった先や帰り道に、時には、飲食店ではない営業中のお店を発見して、ふらり立ち寄り、例えば本を手に取ったりする空間が、暮らしのなかで必要不可欠な人たちがいる、そんな人たちとの出会いと日々の積み重ねで、『流浪堂』は存在しています。

東日本大震災やコロナ禍など困難な時を経験するなかで、『流浪堂』は単に本を売るだけでなく、アジール(避難所)のような機能を持つ『開かれた場』としてそこに在る、ことがおそらく社会のなかでの役割なんだろうと実感しました」と、二見さんは言います。

街について、地元、2024年7月リニューアル 東横線の学大高架下

2000年に学芸大学駅西口で開店して、着実にファンを増やした「流浪堂」ですが、2022年に、お店があったマンションの老朽化による取り壊しが決定します。

そんな事情でやむを得ず閉店した「流浪堂」でしたが、2024年7月、以前と同じ西口の「GAKUDAI KOUKASHITA」で再スタートを切ります。

「流浪堂」のスタンプカードには期限がありません。「スタンプカードは取っておいてください、必ず、学芸大学に戻ってきます」と告知していたそうです。

大好きなお店にそんな風に言われたら、はい、待っていよう、と思いますよね。

現在の「流浪堂」の場所は、「GAKUDAI KOUKASHITA」内の「GAKUDAI PARK STREET」というエリアです。

「GAKUDAI KOUKASHITA」は、学芸大学駅を中心に、五本木から碑文谷公園周辺までの南北約1kmに渡っています。

2012年に東急東横線・学芸大学駅の高架橋の耐震補強工事とともに誕生したのが「GAKUDAI KOUKASHITA」です。

さらに、目黒区が進めている学芸大学駅周辺地区整備の一環で、周辺の整備や碑文谷公園の活用も視野に入れ、2021年よりリニューアルプロジェクトが本格的に始まりました。

「GAKUDAI KOUKASHITA」は、8つのエリアに分かれ、多機能マーケット「学大市場」、「学大横丁」、「GAKUDAI PARK STREET」などがあり、今後も順次オープンする予定です。

【参考】

【学大高架下 GAKUDAI KOUKASHITA
https://gakudai-koukashita.com/

東急株式会社 学芸大学駅高架下リニューアルプロジェクト 2023年秋から2024年春にかけて順次オープン!

「東横線学芸大学駅の高架下を利用した商業施設「GAKUDAI KOUKASHITA」がグランドオープン 東急株式会社」

「本の市場」とは?

「流浪堂」は、現在、お店に並んでいる本以外にも、並びきれない在庫の本も含め、常時、数万単位の本を扱っています。

店頭に持ち込まれた1、2冊から、事務所、会社、大学などから依頼された万単位まで、出張、買い取り査定を行っています。


そんな大量の本を、一体どうやってホコリや湿気から守っているのでしょう。伺ってみました。

簡単に説明すると、「流浪堂」は、東京都古書籍商業協同組合(東京古書組合)の加盟店です。

地区ごとに支部があり、本部の東京古書会館(千代田区神田小川町)の他に、西部古書会館(杉並区高円寺)、南部古書会館(品川区東五反田)と、3つの会館があります。

各会館では年間を通して、各種古本市、即売会、古書展示が開催されています。本の競りが行われる市場のフロアや、ロッカーと呼ばれる空調管理されたフロア等に分かれていて、そこから選別して、お店の間を車で行ったり来たりして出し入れをしているそうです。

また、2020年に新型コロナが日本に上陸し、まだ新しい病原体の正体もわからず世界中が迷走している時期に、東京古書組合の広報を任されていた二見さんは、ある「おしらせ」を出しました。

これを読むと、本屋に行くこと、各種イベントやライブ、アート、演劇、などの文化活動ができない状況が、業界の人々や世間一般の人々にとって何を意味するのか、改めて思い起こさせてくれるのです。抜粋してご紹介します。

古本を愛してくれるお客さまへ
〈前略〉 
今日も古本屋は自分の行く道が正しいのか間違っているのか、日々悩み、心は揺れ、疲弊していっています。 困難の時代はまだ続くでしょう。
しかし文化の火は絶対に消してはいけない。
疲れ切った心を抱え冷たく閉ざされた世界に、本の力は必要です。

どうか皆さま。古本を愛してくれるお客さま。
この古書業界を、古本屋たちを、暖かく見守っていてください。
いつの日かウイルス禍が終息し、また街に古本屋の灯りがともると確信しています。〈後略〉

古本を愛してくれるお客さまへ | 東京の古本屋

全文は、こちら↓
東京古書組合 おしらせ
https://www.kosho.ne.jp/?p=374

その他、公式HPでは、本の市場での競りの様子、本のロッカーと呼ばれるフロア画像が公開されてますので、百聞は一見にしかず、ぜひご覧になってください。

市場の一日

東京都古書籍商業協同組合(東京古書組合)


東京都千代田区神田小川町3-22
https://www.kosho.ne.jp/

こちらのHPでは、JR五反田駅東口から南部古書会館までの歩き方(5分~7分)と古本市の様子が動画で公開されています。

南部古書会館 五反田遊古会

品川区東五反田1-4-4 南部古書会館内
https://www.kosho.ne.jp/sales/sales-1759/

水族館劇場について

二見彰さんと妻の祥子(さちこ)さんは「水族館劇場」のサポートメンバーです。

「水族館劇場」(すいぞくかんげきじょう)は、桃山邑(ももやまゆう 1958ー2022)が1987年、福岡県筑豊(ちくほう)で立ち上げた野外芝居集団です。福岡県の筑豊地区は、かつては炭鉱の町として栄え、労働者の街として知られていました。

一貫して野外での公演にこだわり、芝居小屋を自力で設営し、興行が終われば場をきれいに整え去っていきます。昔から人々の生活に寄り添ってきた神社の奉納芝居、流浪する旅芸人、サーカスなどが原点です。

60年代以降の前衛演劇の流れを汲みながら、非日常空間の体験を通して、観る人の感情を呼び覚まし、現代社会の在り方を問いかけています。

二見彰さんと祥子さんは、そんな「水族館劇場」に興味を持ち、設営や足場づくりなどの作業を手伝ってきました。彰さんは時には役者として、演じることもあります。

「水族館劇場」が、最初に世に認知されたのは、2009年の早稲田大学演劇博物館の企画展示「やぶれ船で流浪する水夫たち 水族館劇場20年の航跡」がきっかけでした。

【早稲田大学演劇博物館】
企画展 やぶれ船で流浪する水夫たち 水族館劇場20年の航跡

2017年のヨコハマトリエンナーレでは、「もうひとつの この丗(よ)のような夢 ―寿町最終未完成版―」が上演されました。

「水族館劇場」のHPで、設営の様子や芝居の一部が公開されています。
【水族館劇場】
https://suizokukangekijou.com/info/

二見さんが書かれた「水族館劇場」についてのコラムをご紹介します。

「水族館劇場を観ると、いつも人間の熱量に、感動してしまうのだ」
POPEYE Web 【#3】水族館劇場 観劇のススメ 執筆:二見彰(流浪堂)
https://popeyemagazine.jp/post-69134/

取材を終えて

色々とお話を聞いているうちに、ロックバンド、古本屋、お芝居には共通点がある気がしてきました。そんな感想を言うと、二見さんは最後に語ってくれました。

「(音楽も古本屋もお芝居も)人間がやってるわけですからね。自分の経験・体験、そして想像力をフルに使って描いていく作業なので、全部に通じると思います。

店を始めたのは30代。当初は勢いだけでやってたような気がしますね。もっと自分、自分、だったような。

でも店を継続していく中で目線は社会へと向いていきました。社会といっても自分の手の届く範囲、身の回りの関わりですけど。

それはとても大きな変化でした。この先続けていく意味みたいなものをしっかり見つけることができました。

そうなれたのは、ひとえに妻の祥子のおかげです。一緒に店をやれてなかったら、アドバイスやフォローがなければ「流浪堂」は続けていけなかったと確信しています」

洋菓子・喫茶室 MATTERHORN(マッターホーン)

東京都目黒区鷹番3-5-1
東急東横線 学芸大学駅西口 徒歩4分
https://matterhorn-tokyo.com/

以前の「流浪堂」があった場所のすぐ目の前にあった洋菓子店「マッターホーン」は、1952年創業、喫茶併設の洋菓子店。バウムクーヘン、各種ショートケーキ、サバラン、シュークリームに焼き菓子類、目移りするほどの菓子が勢ぞろいしています。

二見さんは、必ず喜ばれるお土産として時々購入されるようです。二見さん自身は、それほど甘いものは食べない、お酒は元々飲めない、煙草は40代で止めた、そう!

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この記事を書いた人

萩山元子(旧まやぎはとこ)

萩山元子・はぎやまもとこ(旧まやぎはとこ) 広島出身、東京23区在住。 食べること着ることが好きな一方、どケチで優柔不断、そのせいで常に頭が混乱、書くことで正気を保とうとする日々、興味の対象は人間、食べ物や服の好み、趣味、仕事……目の前にいる人になるまでの人生を聞くことが好き。日本を含めた世界中の人々がどんな食べ物をどういうスタイルで食べるのか、何をどう着ているのか、気になります。

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