日野市・百草団地の商店街を歩いていると、ふと目に飛び込んでくる光景があります。レンガ敷きの広場に置かれた木製のテーブルと椅子、そして存在感抜群の大きな本格ピザ窯――団地の商店街に佇むそのお洒落な外観に、思わず人々が足を止めます。
こちらは、カフェバー「futollante(フトランテ)」。くすんだオリーブグリーンの壁に、温かみのある木のカウンターがぽつりと置かれた半屋外の空間は、どこかキャンプ場のような開放感があります。
平日の昼間は、近所のお年寄りがコーヒーをゆっくりと飲んでいるようなのどかな雰囲気ですが、夜になるとクラフトビール目当てのお客様が集まり、にぎやかな飲み場へと変貌します。昼と夜で全く違う顔を持つこの店を切り盛りするのは、「東京コヤノ堂」代表の小谷野大樹さんです。
「ビールとダイエット」という意外性のあるコンセプト

「futollante」という店名は、「太らない」という言葉を文字って付けたという小谷野さん。店のテーマは「ビールとダイエット」。一見まったく相容れない二つの言葉を、小谷野さんはあえて並べています。
「ビールを飲むと太るというイメージがあるけれど、そんなことないよっていうのを提唱したくて」
毎晩お酒を飲みながら半年で16kgのダイエットに成功した小谷野さん自身の体験が、このコンセプトの原点。その体験から生まれたのが、同店の看板商品「東京風アンダカシー」です。

沖縄の伝統菓子・アンダカシーを独自に改良した豚皮スナックで、糖質ゼロ・高たんぱく・高コラーゲンというヘルシーさが特徴。お酒のおつまみとして開発されたにもかかわらず、30〜60代の女性を中心に幅広い層に支持されています。店頭でも購入できるため、ぜひ手に取ってみてください。
お酒もスナックも、選び方次第でダイエットの敵にはなりません。小谷野さんはその考えを、店そのもので体現しようとしています。カウンターには地元・日野のクラフトビールが並びます。タップから丁寧に注がれる一杯はキンキンに冷えていて、軽く心地よい喉越しが楽しめます。

高さ190cm、重さ1.2トンのピザ窯がやってきた

店の顔ともいえるピザ窯は、廃業する都内のピザ屋から「捨てるくらいなら」と小谷野さんに譲られたものだそう。高さ190cm、重さ1.2トン。そんな規格外の代物を、小谷野さんはSDGsの観点から「いいじゃないか」と受け入れたといいます。
メニューはマルゲリータ(1,300円)、クアトロフォルマッジ(1,600円)のほか、生地とソースを持ち込み、好きな具材でオリジナルピザを作れる「持ち込みピザ作り体験」(1,200円)も用意されています。
「ビールとダイエット」がテーマの店でピザを焼く……矛盾しているようで、「チートデーがあってもいいじゃないか」という小谷野さんの懐の深さが滲み出ています。

持ち込み自由。ここは団地の「みんなの居場所」

futollanteのユニークな点は、ビールやピザだけではありません。この店、なんと商店街で買ったものを持ち込んで食べていいのです。
隣のお肉屋さんのコロッケを買ってきて、ビールと一緒に飲む。お寿司を出前してもらって広げる。焼き鳥を片手にクラフトビールを傾ける……。
そんな自由な使い方を、小谷野さんは心から歓迎しています。
「商店街には、お肉屋さんの唐揚げやお寿司屋さんのお刺身もある、焼き鳥もある。全部僕が作らなくても、この団地に美味しいものはすでにあるじゃないかと思って。だったら、フードコートみたいな場所にして、みんなで楽しめればいいと思ったんです」

今回の取材では、ブルー、エダム、プロヴォラ、モッツァレラの4種のチーズをふんだんに使ったクアトロフォルマッジに加え、唐揚げとクラフトビールを注文しました。ピザ窯が飲食スペースのすぐ横にあるため、焼かれる様子を自席から眺められる点もおすすめです。
アツアツのピザを頬張ると、濃厚なチーズが鼻腔をくすぐり、チーズ好きにはたまらないはず。隣の「日野醸造所」で作られた樽生クラフトビールで流し込むと、思わず「最高!」と声が出そうになります。揚げたての唐揚げも加わると、またビールが進んで…….。「太らない」という店名に反して、カロリーの誘惑からは逃れられそうにありませんでした。
小谷野さん自身もブログで、「毎日でなければピザを食べてもいい」とチートデーを肯定しています。ダイエットの伝道師も認める免罪符を手に、ここfutollanteで過ごすのも悪くないかもしれませんね。
団地に、新しい風を
小谷野さんはfutollanteが佇む百草団地の出身です。
「帰ってきたら、こんなに寂れちゃったんだって感じで」と当時を振り返ります。かつては夏祭りなどで人がすれ違えないほど賑わっていた商店街が、すっかり静かになっていたといいます。

「だからこそ、僕はfutollanteを『誰が来てもいい場所』にしたかったんです。昼間はおじいちゃんおばあちゃんがコーヒーを飲みに来て、夜はクラフトビール好きが集まります。遠方から足を運ぶお客さんもいれば、近所の住民がふらりと立ち寄ることもあって。futollanteは、そんな雑多で温かい場所になっていると思います」
「店に来て喜んでくれる人が非常に多くて、何か地域に還元したいなという思いがあります」と小谷野さんは続けます。
最近は、廃校になった地元の小学校の跡地活用についても日野市に企画書を提出し、話を進めているといいます。スナックの全国展開を目指しながら、足元の地域も元気にしていく……。小谷野さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。
アクセス
futollante -フトランテ-
会社名
株式会社FC&S
住所
〒191-0033
東京都日野市百草999 百草団地SC2-8-1-108
企業HPリンク
https://www.coyano.com/




