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スポット  |    2025.10.30

かつてのうどん屋で音楽ライブ!?地域に愛される多目的ハウス『川崎や』|滋賀県長浜市

「先日、『原点回帰』というライブを開催しました。ここは古い家ですが、アコースティックな音を聞くにはちょうどいいと思っています。ここが原点です」

そう語るのは、滋賀県長浜市にある古民家を利用した多目的ハウス『川崎や』のオーナー、清水さん。清水さんは眼鏡店を営む傍ら、ボランティアで多目的ハウスを運営しています。

『川崎や』で開催されているのは音楽ライブだけでなく、「長浜市史を読む会」や「蛍鑑賞会」などの地域の催し、お笑い、演劇など。1年間に約60公演が実施されています。

今回はオーナーの清水さんに、『川崎や』の歴史や運営を続けるなかでの思いなどを伺いました。

まちづくりの拠点にしたかった

眼鏡店を営みながらボランティアで『川崎や』を運営している清水さん

「ここは昭和の終わりぐらいまでうどん屋さんを経営されていたのですが、経営者が亡くなられて、長い間放置されていました。取り壊す話もあったのですが、しばらく経ってから相続された方と偶然つながって、借りられるようになったのが今から23年前のことです」

当時は商店街がまだ元気だったので、『川崎や』をまちづくり活動の拠点として利用する計画でした。建物自体はかなり古く、1階の天井が朽ちて落ちてしまっている状態だったとのこと。

ステージの上は天井が抜けたため広さを感じる

修繕の際には市の補助金と県の補助金を利用し、さらに商店街から資金を調達しましたが、資金が足りずに最終的には商店街の人たちの努力でなんとか形になったといいます。

ところが、修繕が完了するころになると商店街は少しずつ活気が薄れ、『川崎や』を拠点にしたまちづくりの計画は頓挫してしまいました。

「その後、『川崎や』での音楽ライブを開催したのですが、実際に開催できたのは年に2、3回というところです。そうなると、商店街では維持ができなくなってきて、『どうしよう?』という話になり、結果として私が借りることになりました」

清水さんが一人で運営を始め、現在の『川崎や』の形態になったのが今から7年前のことです。

「ライブハウス」ではなく「多目的ハウス」

チラシもすべて清水さんが制作している

「この辺りは住宅街なので、『ライブハウス』の看板を掲げることで、よくないイメージを持たれるかもしれません。それに、実際に音楽ライブ以外の活動にも使っていただいています」

現状は音楽ライブの利用が多くなっていますが、演劇やお笑いライブ、長浜市史を読む会、蛍の観察会なども開催実績があります。また、利用者はアマチュアだけでなく、これまでプロのライブも多く開催してきました。直近でも有名アーティストのライブが予定されています。

興味深いのは、『川崎や』の利用システムです。

入場料はすべてアーティスト側が決める方針

『川崎や』ではプロのアーティストにも会える

「有料で開催されるライブやイベントの場合、こちら側からは入場料を指定していません。すべてアーティストが決めているので、無料のときもあれば、100円のときも4,500円のときもあります。施設使用料だけいただいているので、あとはアーティスト側の報酬になるシステムです」

アーティストやイベントによって、入場者数は大きく異なると清水さんは言います。一方で、入場者が多くても少なくても『川崎や』に入る料金は決まっているので、『川崎や』にはほとんど利益がありません。

「アーティストを応援したい気持ちもあるので、利益にならないようにしています」

と清水さん。ここから有名になっていく人を輩出したいとの思いも語ってくれました。しかし、利益が無いことで、どうしても費用的な課題がつきまといます。

音響設備や放送設備もすべて小遣いから捻出

複雑な放送設備を操作する清水さん

「音響設備や放送設備にかかる費用は、すべて私の小遣いから捻出しています。過去に、設備が悪いことで、アーティストに苦言を呈されたことがありまして、『なにくそ』と思って少しずつ揃えました」

『川崎や』には、所狭しとスピーカーやカメラなどの機材が並べられています。最新の機材も揃っていて、操作も難しそうです。

「慣れたら大丈夫ですが、なかなかここ(映像設備)を触れる人はいません」

8台のカメラを駆使してLive配信しているという(画像出典:Facebook)

清水さんは、Live配信用の設備を操作しながら言います。音響、撮影、放送、チラシ制作、ポスター制作、コーヒー豆の焙煎まで、すべての作業をほぼ一人でこなしている清水さん。

「あまりにも忙しそうにしているときは仲間が手伝ってくれます」と語りながらも、今後も一人で『川崎や』を切り盛りしていく気概を感じます。

『川崎や』が最後の砦

音楽ライブの様子(画像出典:Facebook)

「滋賀県湖北地方で、アマチュアの人が音楽とか演劇を気楽に発表できる場はほとんどありません。そう考えると、『川崎や』は最後の砦です。ですので、可能な限り続けていこうとは思っているのですが、僕はもう来年で70歳なので、いつまで続けられるかはわかりません」

『川崎や』の運営が道楽のようになっているとおどける清水さんですが、アーティストや地域への貢献度はかなり高いでしょう。清水さんがアマチュアアーティストを応援することで、清水さん自身も応援されているのかもしれません。

今夜も『川崎や』では、心温まる音楽が流れています。近くへお越しの方は、ぜひ『川崎や』で贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

『川崎や』の詳細情報
入場料利用料
入場無料9,000円
金額にかかわらず有料の場合11,000円
  • 川崎やに掲示するポスター1~2 枚(ご希望があれば相談)
  • 前ライブ時に配るフライヤー20 枚程度
  • お客様用飲料(自家焙煎コーヒー等)
  • 機材使用料 含む
  • 控え室(2 階)の使用料込み
使用禁止楽器

以下の楽器は使用不可です。

  • エレキギター
  • ドラムセット
  • 金管楽器

詳細は直接お問い合わせください。

アクセス

駐車場はありません。近くのコインパーキング等をご利用ください。

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この記事を書いた人

のがわ

滋賀県担当のアラフィフライター「のがわ」です。地元の滋賀県や隣県の福井県に関する情報をお届けします。趣味の剣道は練士七段ですが、試合は中学生にも負けるレベルです。色々な地域に出稽古に行き、出会った方々の物語や観光情報などを記事にします。

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