ハンドメイド作品の魅力は、ひとつとして同じものがない“作り手の物語”にあります。埼玉・桶川で10周年を迎えた「おけがわ手づくりマーケット」は、そんな作家たちが安心して挑戦できる場として、これまでに延べ3,420組以上が出店してきました。
10月5日(日)に、10周年記念の第61回目を迎えます。


主催は、自らも作家として活動する菅又春香(きらきらsun)さん。若手作家にも門戸を開くべく立ち上げた経緯から、マーケットの歴史、そしてこれからの展望までを伺いました。
2015年初開催から10周年へ|おけがわ手づくりマーケットの歩み
ーーマーケット開催のきっかけを教えてください。
菅又さん:2013年に夫の転勤で埼玉に引っ越してきたのですが、当時は横の繋がりがないと出店できないイベントが多くて…。若手作家や、まだ知り合いの少ない作家が活動できる場がほとんどなかったんです。それならば自分で“誰もが挑戦できる場”をつくろうと決めました。
Instagramで作家紹介|出店者の想いが伝わる情報発信
菅又さん:商業施設で行えば人は集まりますが、それは“たまたま通りかかった人”かもしれません。だからこそ、イベントがなければ人が集まらない場所で勝負したかったんです。集客が私たちの実力を測るものさしになりますから。
当時、営利目的でイベントが許可される施設は近隣にほとんどなく、100台以上の無料駐車場を備えた会場は限られていました。そんな条件のもとでの開催は挑戦でもありましたが、現在まで、定期開催が継続しています。

2016年には公式Instagramを開設。出店作家を一人ひとり丁寧に紹介する投稿は、すべて菅又さん自身の執筆です。これまでに紹介した作家は数百人規模にのぼります。
これらの紹介文は、作家の想いが伝わる「温かさ」を感じるもの。
この投稿を見て、「一度、行ってみようかな」そう感じる方も少なくないでしょう。
作家の声から見えるマーケットの価値
これまでにマーケットを続ける中で、その存在意義を強く感じた出来事もあったのだそう。
菅又さん:出産や転勤で活動を一度離れた作家さんが、数年ぶりに戻ってきてくれたんです。そのときに「必ず戻れる場所があるから作家を続けられた」と言っていただきました。マーケットが、挑戦だけでなく“帰ってこられる場所”にもなれているのだと実感しました。
10年以上続くマーケットとして、地域と作り手の双方にとって欠かせない存在となっています。


出店できるイベントを探していたときに「おけてま」を知りました。SNSを見て、手しごとの作品が好きなお客様に喜んでもらえるイベントなんだろうなと感じて応募したのがきっかけです。実際に参加してみると、毎回遊びに来てくださるファンの方が多くてびっくりしました。初参加の時から「初めてですか?」と声をかけていただいたり、回を重ねるごとに「前のデザイン違いが欲しくて」と立ち寄ってくださる方が増えたり。同じお顔にまた会えることが楽しみであり、安心感にもつながっています。
(おけがわ手づくりマーケットで3年の出店経験を持つ、am creationさん)
おけてまへの出店のきっかけは、初回開催の頃に知人から誘われたことでした。対面販売は初めて。準備不足や至らない点も多かったのですが、その時に助けてくださったのが菅又さんでした。資材の選び方や仕立ての工夫など、販売のノウハウを丁寧に教えてくださったんです。
菅又さんのアドバイスを受けながら出店を重ねるうちに、自分の作品づくりにも手応えが持てるようになりました。気づけば10年、作品づくりや出店、ネット販売を続けてきました。出産や子育てで思うように出店できなかった時期もありましたが、ネット販売を始めるきっかけをくださったのも菅又さん。作り続けられたからこそ、再び出店に戻って来られたと思っています。
出店したことで得られたことは本当に大きいです。菅又さんとの出会いを通じて活動の幅が広がり、思いもよらない依頼をいただけるようになりました。また、長く続けてきたことで、顔なじみの作家さんやお客様とも絆ができました。私の子どもの成長を一緒に見守ってくださる作家さんや、同じく子育て中の仲間、子育ての先輩方との交流があり、孤独になりがちな子育ての時期にも心強い存在でした。
おけてまにはリピーターのお客様が多く「この前作ったものとは別のものも作りたくて来ました!」「入学式に付けるブローチを探しています」といった声をかけていただけるのが嬉しい瞬間です。結婚式でブローチを身に着けてくださったり、娘さんの誕生日フォトに私の作品を使ってくださったりなど。作品が誰かの大切な場面に寄り添っていると実感できるのは、作家として最高の喜びです。
「次はいつ出店しますか?」とお客様に声をかけていただけるのも、おけてまならでは。戻りたいと思えば戻れる場があり、作家としても「次も!」と前を向けるイベントだと感じています。私にとって、おけてまは好きなものづくりを通じて社会とつながれる、かけがえのない場所です。
(おけがわ手づくりマーケット第一回目から出店を続ける、Apricot*zakkaさん)
今後の展望と来場者へのメッセージ
ーー今後についてどのように考えていますか?
菅又さん:開催回数を増やすことは考えていません。量より質を大切に、質の高い作品をお客様に届けることを続けたいです。開催することが目的ではなく、“誰に何を届けたいのか”を見失わないことを常に意識しています。
ーーおけがわ手づくりマーケットへ参加するみなさんへメッセージをお願いします。

菅又さん:「おけがわ手づくりマーケットは、本気度の高い作家のみを集めた審査制のマーケットです。ハンドメイド作品や一点ものがお好きな方、また駆け出しの作家を応援したい方には見応えのあるイベントです。喧騒から離れ、ゆったりとした休日をお楽しみください」
10月5日(日)開催|10周年記念のマーケット情報
10周年を迎える「おけがわ手づくりマーケット」は、偶数月の第1日曜日にべに花ふるさと館で開催されています。次回は 10月5日(日)。ハンドメイド作家が心を込めて作った雑貨やアクセサリー、フードなど、ここでしか出合えない一点ものが並びます。
イベントの最新情報や出店者紹介は、公式サイトやSNSでチェックできます。ぜひご家族や友人と一緒に、手作りの温もりを感じる「おけてま」へおいでください。

おけがわ手づくりマーケット
日時:2025年10月5日(日)10:00~16:00
会場:べに花ふるさと館(埼玉県桶川市加納419-1)
アクセス情報:
JR桶川駅東口より桶川市内循環バス利用「べに花ふるさと館」下車
自転車:駐輪場あり
駐車場:約100台
公式サイト:おけてま公式ページ
Instagram: @oketema
Facebook:おけがわ手づくりマーケット
X(旧Twitter):@oketema2016
※2026年2月は会場都合により第二日曜日の開催になります。
※2026年上半期はイベントのクオリティ保全のため出店者の募集はありません。
画像提供:おけがわ手づくりマーケット運営部