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もの・こと  |    2024.02.23

牧野大神楽|佐原囃子が繋いだ小江戸佐原の伝統と祈り

お祭り大好き「えいも」です。

毎年、私の地元のお祭りでお世話になっている「牧野下座連」のかた達が、普段練習などを行っている牧野区公会堂の建て替えが完了したとのことで、お披露目があり、そこで「牧野大神楽」を上演するという情報を得て、見学に行ってまいりました!

牧野神楽保存会のかたは、気さくで優しい人ばかり。快く資料も提供していただきましたので、牧野大神楽とその歴史をご紹介します。

神楽ってなに?

そもそも「神楽」ってなんでしょうか。

私自身、改めて説明しろと言われると抽象的な言葉しか思い浮かびませんでした。

せっかくの機会です。勉強し直してきたので、まずは「神楽とは」からご説明します。

神楽の歴史と基本情報

神楽は神事や奉納のための舞で、起源を辿ると、日本書紀や古事記までさかのぼると言われています。

神楽はもともと「神がかり」のための儀式が起源であり、神楽を舞う巫女さんに神様をおろして交信するのが目的でした。

現在では神への奉納の舞として行われ、神々への感謝や豊作を祈る儀式として受け継がれているのが一般的です。

神楽の舞は、その地域や系統によってさまざまな形式があり、大きくは「御神楽(みかぐら)」「里神楽(さとかぐら)」の2種類に分けられます。

御神楽は主に宮中で行われる儀式で、一般には公開されないものです。

一方で、里神楽は神社やお祭りなどで行われるもので、巫女神楽、出雲流神楽、伊勢流神楽、獅子神楽などがあります​​​。

お祭りや神前式で目にする、獅子舞や巫女さんたちが鈴を持って”シャンシャン”と踊っているのを思い浮かべて貰えばわかりやすいかもしれません。

祈りのかたち”神楽”の役割

神楽は”祈りのかたち”であり、地域や神社の交流の場として長く受け継がれてきました。

使われる道具や衣装に楽器といった物としても、作法や音楽としても、その地域で受け継がれる「文化」としての価値はもちろん重要です。

しかし、厄除けや豊作祈願として、みんなで集まって過ごす時間としての役割こそ長く受け継がれてきた理由でしょう。

神事は、五穀豊穣、子孫繁栄、厄除けなどの祈りの儀式であり、いわばお祭りです。

「たくさんお米ができますように」「安全に過ごせますように」
「健康に過ごせたことへの感謝」「たくさん野菜ができて嬉しい」

そんな「いいことありますように」という気持ちを、近所のみんなで分かち合う時間としての役割が強いように感じます。

牧野大神楽の特徴

それでは、ここからが本題!

香取市の牧野地区に伝わる「牧野大神楽」についてご紹介します。

牧野大神楽の歴史

牧野大神楽(まきのだいかぐら)は、毎年4月初旬に「高天神社例大祭」で奉納されている神楽です。

香取市牧野地区で200年以上の歴史があるとされていますが、昭和30年の上演を最後に伝承が途絶えていたのです。

当時を知る人の「牧野の神楽をもう一度見たい」という言葉をきっかけに、牧野地区で活動する佐原囃子の演奏団体「牧野下座連」のメンバーを中心に「神楽研究会」を発足。平成19年に「牧野神楽保存会」を結成しました。

口伝で伝わることも多い世界ですから、もちろんわかりやすい楽譜や台本はありません。

古い録音テープに残っていた一丁の笛のみの音源を元に譜面を起こしてお囃子を復元。太鼓や鼓のリズムは近隣地区に伝わる神楽の演目を参考にしたのだとか。
神楽舞については、当時を知る70代80代の先輩方から舞の手ほどきを受けて復活に漕ぎつけたそうです。

こうした努力を重ね、平成20年4月に53年振りに神楽舞が復活、奉納されたのです。

 

演目と見どころ

牧野大神楽の演目は、迫力ある獅子の舞による「布舞(ぬのまい)」「御幣(ごへい)の舞」といった神楽四方舞(かぐらしほうまい)だけでなく、余興としてユーモアのある「鬼」「鍾馗(しょうき)」「医者と看護婦」という3つの演目があります。

神楽四方舞は、二人一組で舞う獅子舞で、家内安全、町内安全、作物の豊作を願い踊られてきた神聖な踊りです。

余興の演目は物語になっていて、お祓い箱を盗みにきた悪い鬼が鍾馗大臣に成敗されます。
そこに医者と看護師が登場し、さまざまな方法で鬼の蘇生にチャレンジするというストーリーです。

お囃子

私が特に注目して欲しいのが「お囃子」です。

そもそも、牧野大神楽を知ったきっかけは、牧野下座連の方達との交流があったからなのです。

香取地方では、お囃子のことを「下座」と呼び、演奏する人たちのことを「下座連」と呼びます。

牧野地区をホームタウンとする「牧野下座連」は、現存する最古の下座連とも言われており、牧野流の本流です。

祭礼では、佐原の大祭(秋)で、下新町・多古町祇園祭で、本町・鹿島神宮神幸祭で大町の3箇所に乗っていますから、ぜひ聞きにいっていただきたい!

「砂切(さんぎり)」は、必ず始めと終わりに演奏される曲目であり、牧野大神楽も、砂切で始まり馬鹿囃子、終い砂切で終わります。

近代化と過疎化が神楽に与えた影響

先ほどご紹介した通り、牧野大神楽は250年以上の歴史があるにも関わらず、50年以上の間伝承が途絶えていました。

これには、時代の流れの中で人口の減少や働き方が大きく変化していったことが要因のようです。

地元に住み続け、仕事をしていくことは簡単ではありませんよね。
自宅で商店や農業を営む家も減っていますから、行事や集会に気軽に参加できる人が減っているのが現実です。

さらに、身近な娯楽の種類が増えたことも大きな要因でしょう。

そんな中、自分の住む街の歴史や伝統に興味を持ち、動き出した人がいるのは素敵ですよね。

そんな想いに応え、香取市は「牧野大神楽」を市の無形民俗文化財に指定しました。

歴史ある街並みや神社仏閣、見どころの多い佐原だからこそ、町ぐるみで、伝統や文化を守り育てたいという気持ちが垣間見えます。

神楽を通じた祈りと地域の関わり

「牧野神楽保存会」のメンバーは、神楽を復活させ定期的に公演を行うことで「小さな頃から神楽に親しみ、楽しんでもらうことで次世代の担い手として育成したい」と語っており、復活を果たした”今”だけでなく、未来に長く受け継がれる伝統として考えているそうです。

夏と秋に行われる「佐原の大祭」では、特設ステージで上演を行ったり、近隣のショッピングセンターで上演したりと、積極的に多くの人に知ってもらう機会も作っています。

この地域で生まれた使命感でやってきた。香取市無形民俗文化財として認められたのは本当に嬉しい

牧野神楽保存会:大須賀さん(だいじん)

本来、神との関わりを作り、祈りや感謝を伝えるための”神楽”は、時を超えた今その存続を祈ることとなりました。

しかし、神楽の継承や繁栄を通して住民の絆を再確認させ、街の繁栄につながることを祈る機会にもなっているように感じます

時を超え時代が変わっても、神楽は祈りの形であり続けるのでしょう。

歴史はお囃子の音とともに

下座連や保存会の皆さんは本当に気さくで、神楽のお話だけでなく佐原のことやお祭りのこと、神社のことなど、丁寧に教えてくださいました。

伊能忠敬で有名な佐原は、大祭や香取神宮など歴史という積み重ねを感じさせる魅力が街全体に感じられます。
さらに、ロケ地としても有名な「佐原の街並み」には、小野川の流れと同じくゆったりとした時間が流れていて癒し効果も抜群ですから、神楽を見た後は、小野川沿いをゆったりお散歩するのがおすすめです。

田舎の気のいいおじちゃんが、熱く楽しく、大切に繋ぐ伝統を見届けに、香取市へ出かけてみてください。

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この記事を書いた人

AMO-えいも-

お祭り・ハイボール・音楽・読書を愛し、美容とらーめんへの探究を続けている、好奇心旺盛なライターです。 座右の銘は「美味しく食べたらゼロカロリー」と「メメント・モリ」 都会も田舎も誰かの大切な”地元”であって欲しいと思い、地域活性や地方創生の一助となるべく活動しています。

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