
千葉県の房総半島を、自らの足で走るというマラソン大会『房総半島1周300K』。その最南端を越えて、いよいよ選手たちは後半戦へと突入します。すでに約150kmを走っているので、選手たちの位置はバラバラ。リタイア者も出ており、疲労はピークを迎えようとしていました。
眠気との闘い…二度目の夜を迎える

しばらく海沿いを走り、千倉、鴨川、そして勝浦方面へと向かいます。青い海と空のコントラストは最高に素晴らしい景色ですが、それだけに…暑い。いっそ、思い切り海に飛び込んでしまいたいと思われた方も多かったはずです。
また、館山以降は内房線からコースが離れていたのですが、千倉からは再び駅付近を通るようになります。疲労がたまり始めると、つい心が弱くなって「やめようか」という気持ちが…。駅が見えたり、標識で駅が近いことを知ったりすると、リタイアという文字が頭に浮かんだ方も多かったようです。

滝口駐車場から約25kmで、和田浦駅近くにある花の広場公園のエイドに到着。ここまでエイド間はそれぞれ40km前後の距離だったので、とても短く感じました。こちらでは水シャワーが用意されており、暑くなった体をクールダウンさせていく選手もチラホラ。また、ベンチとテーブルが快適なのか、長居される方も多かったようでした。
屋根はありますが、時間と共に日影の位置が変わるので大変。長時間エイドを開設してサポートしてくださるスタッフの皆さまには感謝しかありません。温かいものは温かく、冷たいものは冷たい状態で提供する工夫など、サポートあってこそ走り続けられたという選手も多かったでしょう。

鴨川を通過して勝浦へと向かう道中、再び空が暗くなり始めました。本大会、二度目のオーバーナイトラン(夜通し走る)の始まりです。一晩なら徹夜できても、二晩目はさすがに強い眠気が選手たちを襲います。眠くなる前に、少しでも前に進みたい。選手たちの懸命な姿からは、そんな気持ちが感じ取れました。

そして辿り着いたのが、約213.1km地点にある八幡岬公園のエイドステーション。周囲には街灯などなく、暗闇の中にテントの明かりが見えました。
気が付けば残り100kmを切っており、ここからはまさに終盤戦という状況。身体的な疲労は当然ながら大きく、椅子に座るとなかなか立ち上がれない…なんていう選手がいたかもしれません。それでも走り続けるのは、きっと強い気持ちがあればこそなのでしょう。
美味しいTKGでお腹が満たされる

二晩目ということで、仮眠した選手も多かったのではないでしょうか。強い眠気に襲われると意識が朦朧としてしまい、いつものようには走れなくなってしまいます。「たくさん幻覚を見た」という声もあり、いかに過酷なオーバーナイトランだったかが伺えます。
一宮付近からは、海沿いを離れて内陸へと向かいます。そんな中で待ち構えていたのが、「たまごかけごはん」と書かれた旗でした。こちらは、約258.6kmに位置するエイドステーション「みのりファーム」です。


みのりファームは地元・房総のたまごやさん。そしてエイドステーションは、農場内にある販売所のすぐ近くです。美味しい卵を使った“TKG(たまごかけごはん)”が提供されており、選手たちの心を満たしてくれます。私も食べさせていただきましたが、とにかく美味しい!しかも栄養豊富なので、マラソン大会の補給食としては最高です。疲労困憊なはずの選手たちも、TKGを食べて自然と笑顔になっていました。

周辺は緑に囲まれており、これまで走ってきた海沿いとは違った癒しの景色。自然豊かな房総半島を満喫できる、贅沢な時間を過ごしていることを改めて感じました。
酷暑をこえて感動のゴール!

ここまで来れば、あとはゴールを目指すのみ。茂原を通って到着した小中池公園は、本大会で最後となるエイドステーションです。もう走れなくなり歩いて進む選手や、制限時間ギリギリで滑り込む選手…。ゴールの制限時間が近づくにつれて、どんどん気温も上がっていきます。
疲労が蓄積すると、起こりがちなのがコースロスト。皆さん紙やスマホの地図、あるいはランニングウォッチにインストールした情報をもとに走っていますが、頭が働かなくなると「いつの間にか全然違う場所にいた」なんてことが起こります。特に海沿いより、道の入り組む内陸部は間違いやすいため要注意。制限時間が近づくと焦ってしまいますが、だからこそ冷静な判断が大切です。

そして遂に、300kmの道のりを終えてゴール!房総半島を1周、自らの足で走り切りました。
先にゴールしていた選手、そしてスタッフの皆さんが集まって拍手でお出迎え。走り終えた選手には、喜びと安堵の表情が伺えます。疲労に眠気、暑さ…。一人ひとり、それぞれのストーリーがあったことでしょう。自然豊かな房総半島を、きっと思い思いに満喫していただけたはずです。
もちろん、中には走り切れずリタイアを決断した方もいらっしゃいます。ゴールしても満身創痍で、満足のいく結果に至らなかった方もいるでしょう。それでも本大会での経験は、皆さんにとって貴重なものになったことと思います。非常に過酷な大会ではありますが、ぜひ来年も、房総半島を満喫しに来ていただけたら嬉しいです。

スタート&ゴールとして利用させてくださった「薬湯市原店」や、各所でサポートしてくださったスタッフ、ボランティアの皆さま。大会が安全に開催され、選手たちが心置きなく満喫できたのは、その尽力のお陰です。多くの方々が房総半島を訪れ、その魅力を走りながら感じ取れる大会。ぜひ今後も、継続して開催していただければと思います。大会が気になったというランナーの皆さんは、ぜひ公式ホームページで次回開催をチェックしてください!