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フード  |    2025.05.10

春の直売所で見つけた宝物、今しか手に入らない信州の伝統食「凍り餅」|長野県安曇野市

北アルプスのふもと、長野県安曇野市。穏やかな日差しの中、市内の直売所に寄ると、旬の野菜たちが並び、その活気にワクワクと胸が躍ります。

長野県は豊かな自然に囲まれ、四季折々の山の幸、畑の恵が豊富です。その恩恵を受けた直売所は、県内各所に点在し、地元の人々だけでなく、観光客にとってもその土地ならではの味覚と出会える宝物のような場所。

そんな春の直売所の一角で、ふと私の視線は他の野菜たちとは異なる白い紙に包まれた素朴な佇まいのものに引き寄せられました。それが「凍り餅」です。

長野県の伝統食「凍り餅」とは?

凍り餅の原料は、もち米です。このもち米を蒸しあげ、搗いて作った餅を、冬の寒さが最も厳しい時期に、水に浸して屋外にさらし凍らせます。

そして、凍結と融解を繰り返しながら3か月ほどゆっくりと時間をかけて乾燥させるのです。

この自然の力を利用した製法こそが、凍り餅独自の風味と食感を生み出す鍵となります。

冷凍技術が一般的ではなかった時代、特に雪深く寒さの厳しい長野県において、食料を長期保存するための工夫は、人々の暮らしに欠かせないものでした。

その中で、凍り餅は貴重なエネルギー源であるもち米を、長い期間保存するための知恵の結晶として、重要な役割を担ってきたのです。

手軽にエネルギーを補給できる食品として、忙しい農作業の合間の食事やおやつとして重宝されてきました。

長野産まれ、長野育ちの私が人生で初めて凍り餅に触れる

実は、著者は長年長野県に住んでいながら、実際に凍り餅を口にしたことが一度もありませんでした。

珍しいその姿に惹かれ、思わず手に取り、薄い紙に包まれた餅をまじまじと見つめていると、同じく珍しそうに商品を手に取る白髪の女性が。

「これ、珍しいですよね」と声をかけると、「広島から来たのですが、初めてみました。買ってみようかしら」と笑顔でカゴに入れていました。

私も無性にこの凍り餅を味わってみたくなり、白い包を手に直売所を後にしました。

いざ、凍り餅を味わう

開封してまず目に入るのは、結ばれたビニール紐。

凍り餅独自の製法を想像させるその姿にワクワクします。

つい先程まで吊るされていたかのような10個の餅
和紙だろうか、ざらざらとした手触りの薄い紙に包まれている
半分に割ると、断面はミルフィーユ状

商品と共に店頭で並べられていた「紙張り付き凍り餅の食べ方」を参考に調理開始。

まずは、紙と餅を離すために紙のまま10~15分ほど水に浸します。

10分後、餅を紙からそっと剥がし、耐熱容器に大さじ1~2の水と共にいれ、500wのレンジで1分加熱します。

見た目はまるでお粥のよう

加熱後、容器の蓋を開けると、ふわっともち米の良い香りがし、思わず深く息を吸い込んでしまいました。よくスーパーで売られている切り餅と比べ柔らかい凍り餅は、パッケージに記載の通り離乳食としても使い勝手が良さそうです。

一口食べると、蓋を開けたときよりもさらに強くもち米の香りが鼻に抜けます。

「おいしい……」

凍結と融解を繰り返す中で素材そのものの風味が凝縮されたような味わいでした。味付けせずそのまま食べてもおいしいのですが、きな粉と黒砂糖をまぶして食べたところ、まるで山梨名物「信玄餅」を生で食べているかのような味わいに。

また、いちご大福にアレンジしたり、凍り餅の形状を活かし、ピザやお好み焼きの具として食べたりする方法もあるようです。

まとめ

春の安曇野の直売所で偶然出会った凍り餅。白い紙に包まれた素朴な姿は初めて目にする著者にとってどこか懐かしく、そして不思議な存在でした。

しかし、実際に口にすると、厳しい自然の中で生き抜くための先人たちの知恵と工夫、そして長い年月をかけて受け継がれてきた故郷の味を思いがけず体験することができました。

直売所の店員さんに話を聞いたところ、凍り餅は例年1月頃から3か月ほどかけて製造し、店頭に並ぶのは春ならではの光景なんだとか。

凍り餅は県内各所の直売所や、土産物店で買うことができます。春の長野にお立ち寄りの際は、今だけの味覚を是非堪能してみてはいかがでしょうか。

今回立ち寄った直売所はこちら
  • 旬の味ほりがね物産センター
  • 住所:長野県安曇野市堀金烏川2696
  • 電話番号:0263-73-7002

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この記事を書いた人

水田 朝陽

【ライター】長野県在住、自然が大好きな2児の母です。体験したことを分かりやすい文章で伝えることを得意としています。「読んだら行ってみたくなる」そんな発信をしていきます。好きな食べ物は焼き芋。

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