私たちの暮らしに欠かせない存在であるカフェ。
大手チェーンのカフェで新作ドリンクが出るとつい気になってしまうという方や、昭和レトロな雰囲気に浸ることができる純喫茶が好きという方は多いのではないでしょうか。
本記事で紹介するのは、創業70年を越えるJAZZ喫茶「海」。現存する日本のJAZZ喫茶の中では、もっとも古くから営業しているといわれています。
今回はマスターが淹れたおいしいコーヒーを飲みながら、「海」の創業当時のお話を伺いました。
米軍基地のすぐそばにオープン
JAZZ喫茶「海」は1952年、埼玉県朝霞市の栄町に誕生しました。
現在は静かな住宅街が広がる栄町ですが、「海」がオープンした当初は巨大な米軍基地「キャンプ・ドレイク」がすぐそばにあり、軍関係者で非常に賑わっている町でした。
「海」の近くには米軍を相手にするキャバレーやクラブが多く存在し、この辺りは夜になるとネオンが輝く混沌とした場所だったことから、「埼玉の上海」と呼ばれていたそうです。
「東洋のパリ」「日本のヴェネツィア」といった例えは旅行ガイドなどでよく目にしますが、「埼玉の上海」は埼玉に住んでいる私も初めて聞きました。
当時の面影は現在ではほとんど残っていませんが、栄町を歩いていると時折古い建物が目に留まります。言われてみないと気がつきませんが、たしかに「キャバレーだったのかな?」と思わせるような派手な色づかいのタイルで装飾された建物も見受けられます。
国境と時代を越えて愛される空間
「海」という店名は、創業者である初代マスター(現在のマスターのお父さま)が海軍出身だったことから名付けられました。
英語が得意な初代マスターは米軍との繋がりを活かしてアメリカからレコードを買い付け、JAZZを聴かせるお店をオープンしたのです。
当時のお客さんはほとんどが軍関係者や米軍を相手にするキャバレーの女性で、特に事務方の駐在員は一日中「海」に入り浸っていたとのこと。
この頃のサラリーマンの平均月収は約10,000円。当時3,000円ほどの価格帯だったレコードは、決して簡単に手に入れられるものではありませんでした。
憧れのレコードが奏でるJAZZを堪能することができる「海」はたちまちお客さんの憩いの場となり、それは時代が進み客層が日本人の地域住民などへ変化していっても変わることはありませんでした。
眺めているだけでも楽しいレコードジャケット
現在の「海」は基本的に近所に住む常連客で賑わっていますが、JAZZ好きの若者がレコードでJAZZを聴くために遠方から訪れることもあるそうです。
また、近年では地域の高校生と一緒にJAZZのイベントを開催したり、アーティストを呼んでライブを行ったりと、今も昔と変わらず音楽好きが集まる交流の場となっています。
現在の店内には壁一面にレコードジャケットが飾られており、眺めているだけでも楽しいです。
アメリカ文化を存分に感じることができる店内で臨場感あふれるJAZZを聴いていると、思わず踊り出したくなってしまいます。
堅苦しさはまったくないので、「JAZZ喫茶は敷居が高いかも…」と感じている方もぜひ足を踏み入れてみてください。きっと楽しい時間を過ごすことができますよ。
水にこだわって淹れられたコーヒー
最後に、「海」のメニューをご紹介します。
イチオシはなんといってもコーヒー。豆だけでなく水にもこだわって淹れられているのが特徴で、マスターが各地を探し回って見つけた高品質な天然水が使われています。
雑味がないため飲みやすく、一口飲んだ瞬間深みのある香りが広がるとてもおいしいコーヒーでした。
ほかにも、クリームソーダや柚ジュースといったソフトドリンク、ハンバーグやカレーライスといった食事系、そしてビールやウイスキーといったお酒のメニューが豊富に揃っています。
バーボンを飲みながらJAZZを堪能する…なんてアメリカンな夜を過ごすのも良いですね。
五感で楽しむJAZZ喫茶
今回は埼玉県朝霞市の歴史あるJAZZ喫茶「海」を紹介しました。
音楽好き、カフェ好き、歴史好きの方は特に楽しめるお店だと思います。
ぜひレコードが奏でるJAZZとおいしいコーヒーを味わいに訪れてみてくださいね。
JAZZ喫茶「海」の情報
住所:埼玉県朝霞市栄町3-7-43
TEL:048-468-4048
アクセス:東武東上線「朝霞駅」南口より徒歩15分
公式HP:https://www5e.biglobe.ne.jp/jazz-umi/