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フード  |    2024.11.29

キッチンも心もオープンにお客様を迎えるベーカリー「Mon Ami」の店主坂口毅さん|大阪府茨木市

大阪と京都の間に位置する茨木市には、地域密着のお店がたくさんあります。阪急電鉄「茨木市駅」から徒歩10分ほどの位置にあるベーカリー「Mon Ami(モンアミ)」もそのひとつです。店名の「Mon Ami」はフランス語で「私の友人」を意味します。その意味のとおり、常連客が多く訪れる人気店です。

1997年5月8日にオープンして以来、地域の人を中心に愛され続けているのにはどのような秘密があるのでしょうか。店主の坂口毅さんにお話を伺いました。

自転車旅に明け暮れた高校生活

生まれも育ちも茨木市である坂口さんは、姉が二人いる家庭の長男として生を受けます。

「姉が2人いるなかでの末っ子だったので、両親からはとても可愛がられました。ただ、それが少し照れくさいのもあり、嫌だなと思う時期もありました(坂口さん)」

姉2人の環境だと、末っ子男子には少し居づらいこともあったのでしょう。高校生になると、坂口さんは内に秘めた冒険心を爆発させます。

「自転車で旅に出ようと思ったんです。まずは高1の夏に友人たちと琵琶湖を一周しました。このときは野宿をしながらママチャリで疾走しましたね。琵琶湖の景色や、ゴールした時の風景は今でも心に残っています(坂口さん)」

その後も坂口さんの冒険心はとどまることを知りません。高2の夏には1週間近くかけて紀伊半島を一周。高3の春には、丹後半島から鳥取砂丘まで自転車旅に出るのでした。

「これだけ自転車旅をしていて、ふと日本一周してみたいと思ったんです。そこで高校を卒業した夏に、2か月かけてマウンテンバイクに乗って日本一周しました(坂口さん)」

日本海から新日本海フェリーで北海道に行き、宗谷岬から九州の佐多岬までの旅程では、最初の2日ほどは民宿に泊まったものの、あとは野宿生活だったそうです。

「買い物をしようとスーパーに寄った際、とても迷惑そうに見られたこともありました(笑)(坂口さん)」

そんなバイタリティーあふれる坂口さんは、とある人の存在を知ったことで、さらに行動範囲が広がります。

植村直己に憧れて海外へ

高校生のころに書籍で冒険家「植村直己」の存在を知った坂口さんは、海外への憧れを抱くようになっていました。

「最初に行った海外はインドでした。インドで井戸掘りをするという仕事を目にして、そこに参加したんです。最初の1週間は旅行もできたのですが、そこからは井戸掘りの日々です。色々とカルチャーショックを受けましたよ(坂口さん)」

インドから帰国して就職したのがパン屋さんでした。

「母親がパートに行っていた店で働くことになったんです。それまでパン屋で働くなんて考えたこともなかったんですが、面白いと聞いて働くことにしました(坂口さん)」

ここまでパン屋とは無縁だった坂口さんが、ようやくパン屋と出会います。パン屋で働いている間に、ベルリンに3か月修行に行った時期もありました。

「ちょうど、東西ドイツの統一の時期でした。ベルリンの壁の近くには危なくて行きませんでしたが、統一されていく空気を肌で感じましたね(坂口さん)」

インドでの井戸掘り、ベルリンの統一、この双方を経験したことのある人は少ないでしょう。

「3年半、そのパン屋で働いていたのですが、また海外に行きたくなったんです。決めたらすぐ行動してしまうもので、仕事を辞めてニュージーランドへ行きました(坂口さん)」

ニュージーランドへ行った理由は、歩いて一周しようと考えたからだそうです。ニュージーランドの大きさは日本の3分の2ほど。日本では自転車で一周できたのだから、ニュージーランドは歩いていこうと決めました。本当に冒険家気質ですね。

帰国、そして「Mon Ami」の出店

ニュージーランドから帰国してからは、大阪・天満のパン屋さんに就職されます。そこで3年半働いたころ、坂口さんの友人が亡くなられてしまいます。

「友人の葬式に参加した際、彼の父親の知人から『お前、パン屋をやれ』って言われたんです。自分にとって、友人の死が人生で一番辛い経験でした。であるなら、仮に独立して失敗しても、これ以上辛いことはないだろうと思って独立を決めました(坂口さん)」

亡くなった友人の分も幸せになろうと考えた坂口さんは、すぐに退社を決意。独立に向けて準備を進めます。ちなみに店名である「Mon Ami」の意味の「私の友」には、この亡くなった友人に対する想いも込められているそうです。

出入りをしていたメーカーの担当者に相談したところ、個人で営業しているパン屋さんを紹介してもらい、直接訪ねては、店を持つための勉強をされるのでした。

「ちなみに『パン屋をやれ』と言ってくれた人に、出資のお願いをしに行ったら『何の話?』と知らん顔されました。お酒の席の言葉は真に受けたらいけませんね(坂口さん)」

紆余曲折もあり、現在の店舗がある場所からすぐ近くで「Mon Ami」はオープンします。

「今から思えば、当時の実力でよく店を出したなと思います。実力もなければ、知識もありませんでした。ただ、自分は運に恵まれていたなと思います(坂口さん)」

友だちのようにお客様と付き合いたい

オープンした時も、移転をした現在の店でも、オープンキッチンが設けられているのが「Mon Ami」の特徴です。坂口さんは、パンを作りながらお客様の動きにも目を向けます。

「パンを作りながらお客様の動きを見ていると、実際の売れ行きがわかります。オープン当初、パンの配置すらわかっていなかった自分にとって、日々、多くの気づきを得ることができました。例えば、子ども向けのパンは、子どもの目に止まる高さへ置くことが大事だとわかったのも、オープンキッチンのおかげですね(坂口さん)」

お客様と友だちのような関係を築きたいと語るように、店に入ると正面にパンを作る坂口さんの姿があります。さまざまな場所に多くのパン屋がありますが、オープンキッチンのお店はそれほど多くないのではないでしょうか。

「自分のことを職人だと思っていません。パン屋仲間のなかには、こだわりの配合や材料を追求しているものもいますが、自分にはそこまでのこだわりはありません。それよりも、来られたお客様の名前を覚えるなどして、信頼関係を構築したいと思っています(坂口さん)」

そんな坂口さんの想いもあり、「Mon Ami」は人気店として、地域の人に愛される店になっていきます。

ハプニングがきっかけで誕生した人気企画

現在「Mon Ami」で作られているパンは全部で70〜80種類です。それもお客様の動向を見ながらどれくらい作るかを調整されています。

また「Mon Ami」には「モンアミdeナイト」という人気企画があります。これは焼き立てのパンを食べながら、持ち込んだ飲み物を堪能する企画です。この企画が誕生したのは、とあるハプニングがきっかけでした。

「ある時、ベーコンエピを作っていた際、焦がしてしまったんです。その焼き立てのパンを食べた所、驚くほどおいしかった。これまでパンをたくさん作ってきましたが、焼き立てを食べる機会はあまりありませんでした。この体験をきっかけに、焼き立てのパンを食べてもらう企画を始めました(坂口さん)」

確かに焼き立てのパンを食べる機会はなかなかありません。この企画は人気を博し、多くのリピーター客も生まれています。焼き立てのパンを割った時に出てくる湯気は、なかなか見られるものではありません。

取材に伺った際には、丁度、メロンパンが焼き立てだったので食べさせていただきました。まるで空気を食べているような柔らかさで、今までにない感動を味わうことができました。

焼き立てのメロンパンは月に一度販売されるので、ぜひチェックしてみてください。

「自分が楽しめないと、お客様も楽しめない。今後も楽しいことをやっていきたいですね(坂口さん)」

おいしいパンを作るだけでなく、新たなパン文化を生み出す坂口さんが、今後、どのように素敵な企画を生み出していくのか楽しみです。

Mon Ami情報

店名:Mon Ami
住所:大阪府茨木市水尾1-1-15
営業時間:7:30~18:00
定休日:水・木曜日
HP:https://www.instagram.com/monami0508/

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この記事を書いた人

にのまえはじめ

大阪府茨木市在住の複業ライター。システムエンジニア/プログラマー、速読教室の運営、パーソナルトレーナー、IT企業の経営などを並行しながら、ライターとしても活動。得意ジャンルはマンガ・アニメ・ゲームなどのサブカルチャー(80年代中心)、IT関連のSEO記事、インタビュー記事。趣味はプロレス観戦。

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