花を愛で、自然を感じ、五感を取り戻す。
茨城県の石岡市、八郷(やさと)地区にある『いばらきフラワーパーク』は生まれ変わりました。「見る」から「感じる」フラワーパークへ…。
日々、IT機器やコンクリートジャングルに囲まれて、いつしか鈍ってしまった五感を取り戻す。再び研ぎ澄ますことができる。そんな素敵な空間が広がっているのです。
1985年の「つくば科学万博」開催に合わせて、花卉(かき)文化の向上と石岡市への観光客の誘致を目指して開園した、歴史のある公園です。しかし2010年、老朽化が進んだために改修工事が実施され、さらに2020年から大胆な改装も行われて、2021年にリニューアルオープンしたのでした。
…この新生フラワーパークが凄い!
「見る」だけではない。「香る」「味わう」「触れる」「聴く」。視覚だけではありません。嗅覚、味覚、触覚、聴覚、五感すべてで楽しむことができる公園なのです。
特に秋のシーズンは「秋バラ」が見事、という噂を耳にしました。早速、現地に行ってみましょう!
まずは園内を俯瞰する
駐車場はとても広く、かつ、入口近くだけではなく、周りにも複数の駐車場が設けられています。今回は午前中に訪問したのですが、すでに多くの車が停まっていました。県内のみならず、県外ナンバーもたくさん…。

チケットを購入して中に入りますと、正面のバラ園からすぐ、バラの美しい姿と香りが私の目と鼻に届いてきます。…凄いバラの数だ!
しかし、ここは焦らない。私はバラ園の方向へまっすぐに突き進みたくなる気持ちをこらえて、園内マップが描かれた案内板の前でしばし作戦を練ることにしました。

「…よし、まずは山のほうに向かおう。高い所で園内を俯瞰してから、メインのバラをじっくりと鑑賞する」
そのように作戦を定めた私は、入口から入って左手の池のほうへと向かいます。噴水が勢いよく上がっており、その向こうには、花と木々が立ち並ぶ様子が見て取れました。

…うん、何だろう、あれは?
私は噴水の上、さらに向こうの山の上に、展望台らしき黄色の塔があるのを発見しました。
「確か、園内地図に『トンビの塔』と書いてあったな…」
山はなかなかに高く、急勾配のようです。しかしここまで来たからには、登らない選択肢はない。私は意を決すると、山のほうへと向かいました。
キャンプ&リゾート花やさと山
池の近くには、私を応援するかのように、見事なダリアやサルビアが咲き誇っていました。

そう、バラだけではない。このフラワーパークは、文字通りの百花繚乱!素晴らしい花畑がこれでもかと広がっているのです。秋だけではなく、どのシーズンに来ても見どころが多い。
やがて私は、山道の入り口にたどり着きます。そこには『ふれあいの森散策』という地図の案内板がありました。

「サクラはさすがに秋には咲いていないだろう…。竹林もあるのか。季節によって、それぞれ違う花が咲いていくようだ。あっ、やはり、上のほうに展望塔がある…!」
頑張って坂道を登っていきます。私と同様に、山の上からフラワーパークを見てみたい、という方々が元気に登っていました。

「これは、良い運動になるわね…!」
「どんな眺めなのかしら?」
前向きな会話が、風に乗って聞こえてきます。何だか私も勇気をシェアしていただいた気分。徐々に体が温まってくる。上着を脱ぐ。汗が出てくる。生きている実感。果たして、山の上には何が待っているのでしょう…?
頂上では、黄色の展望塔が、天に向かって伸びていました。

これが『トンビの塔』でしょうか? 高さは20メートル。螺旋階段が外付けになっています。正直、ちょっと怖い。でも、ここまで来たからには、行ってみるしかないでしょう。
…爽やかな風の中で、塔の上から私が見た眺望は、それはもう、トンビの視点を借りたかのような、素晴らしいものでした。
花に彩られたフラワーパークの園内はもちろん、筑波山、加波山(かばさん)などがそびえる八溝(やみぞ)山地(筑波山地)の山々。盆地である八郷の綺麗な田園風景。そして…。
「何だろう、あの丸いものは?」

円形につくられた、木製の回廊のような施設です。ぐるりと歩いて回れるようでした。
塔を下りた後、私はここにも寄ってみました。どうやら『サークルロッジ』と呼ばれる宿泊棟で、日帰りでも様々なアクティビティが楽しめるようです。焚火でお湯を沸かしてコーヒーを淹れたり、オリジナルのキーホルダーをクラフトしたり…。
『キャンプ&リゾート花やさと山』と名付けられたこのエリアでは、冒険気分を存分に味わえるようでした。
五感で楽しむ、五感を取り戻す
さて、頂上からバラ園の方向へ、違う道から下りていきます。
その私の耳に、突然「ガーッ!」という音が聞こえてきました。何だろう? そう思って山道から覗いてみると、そこには『スポーツスライド』のコースが!
全長800mのコース。国内第二位の長さ。
ローラー付きのソリに乗り、山の中を走り抜けることができるという優れものです。レバーを傾けるだけで簡単にソリに乗って上り、下りることができます。有料ではありますが、風の中で五感を存分に「取り戻す」ことができるアトラクション! 子どもはもちろん、昔、子どもだった皆様も、とても楽しそうに乗っていました。

このスポーツスライド乗り場から、さらに山を下りていきます。やがて、目にも鮮やかな緑の丘が広がってきました。『グリーンヒル』と呼ばれるエリアです。

アルプスの少女が乗るようなブランコがある。芝生では、家族を連れてきたお父さんが座ってくつろいでいました。子どもたちはトンボを追って大はしゃぎ!
その緑の丘の横では、鮮やかな秋のバラや他の花々が咲き誇っていました。…まさに「絶景」です。考えるな、五感で感じろ。私は、自分にそう言い聞かせました。花を見る。香りを楽しむ。自然に触れる。風の音や鳥の声、葉がさらさらと動く音を聴く…。

「『味わう』は、どうなんでしょう?」
ええ、ご安心ください。バラが咲き誇るエリアの中に、美味しそうなレストランが建っていました。テイクアウトのカフェもあります。ここで今回、私がチョイスしたのは…。

バラのソフトクリームでした。
山登りを敢行し、ここまで公園の中のアップダウンをひたすら歩き回ってきた私を、香り高いソフトクリームが優しく包み込んでくれます。…こうして私は、いばらきフラワーパークにて、「五感を取り戻す」ことに成功したのでした。
いばらきフラワーパーク
〒315-0153 茨城県石岡市下青柳200番地
◆公共交通機関:最寄りの駅は、JR常磐線の『石岡駅』です。石岡駅東口から、土日祝にフラワーパークへのバスが運行しています。所要時間は、約30分です。ただし本数が少ないため、発着時間、帰りのバスなどをくれぐれもご確認の上でお乗りください。
◆自動車:最寄りの高速インターは常磐高速自動車道の『石岡小美玉スマートインター』です。インターを降りた後、八郷方面に向かって西に進みます。一般道を通って約12キロ、約20分で駐車場に着けます。また、『土浦北インター』で降りて「朝日トンネル」を抜けても行けます。フラワーパークの南へと抜けられて、こちらも約12キロですが、フルーツラインという比較的まっすぐに伸びる道路のために、約15分で駐車場に着けます。西から向かう場合には、2025年9月に開通した「上曽トンネル」を使うことで、宇都宮や筑西市方面からフラワーパークの北に出ることも可能です。その場合は、フルーツラインを南下して道なりに進めば駐車場が見えてきます。
駐車場は、第1駐車場から第7駐車場まであり、全部で1,000台以上も駐車できます。しかし、一番近い第1駐車場は満車になることが多いようです。




