瀬戸内海の穏やかな海に面した広島県福山市の「鞆の浦(とものうら)」は、古くから多くの人々に愛されてきた港町です。映画やアニメの舞台としても知られ、独特の情緒があります。
今回はこの魅力的な港町、鞆の浦の概要や映画のロケ地となった場所まで、その魅力を詳しくご紹介します。
時間の流れがゆったりと感じられる、海辺の散歩を楽しんでみませんか。
「潮待ちの港」鞆の浦

鞆の浦は、広島県福山市の南に位置する歴史と風情が豊かな港町です。古くは「潮待ちの港」として栄えました。
潮待ちの港とは、鞆の浦周辺が満ち潮と引き潮のぶつかる場所であったため、多くの船が次の潮の流れを待つために立ち寄ったことに由来します。この地理的な重要性から、鞆の浦は江戸時代を通じて経済的・文化的な交流の拠点として発展しました。
現在もその歴史的な町並みが残されており、国の「重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されています。古い町家や神社仏閣が密集し、どこを歩いてもノスタルジックな雰囲気に包まれます。
鞆の浦を含む瀬戸内海の風景は「瀬戸内海国立公園」として、日本で最初の国立公園のひとつに指定されています。
穏やかな海に浮かぶ「仙酔島(せんすいじま)」や「弁天島(べんてんじま)」など、絵画のような美しい景色が広がる場所です。
また、鞆の浦では初夏に弁天島から例年約2,000発の花火が打ち上げられる「鞆の浦弁天島花火大会」が行われ、多くの人で賑わいます。
この歴史と自然の美しさの調和こそ、多くの観光客を魅了している要因といえるでしょう。
地元で有名な観光名所

鞆の浦の象徴的な観光名所といえば、港に立つ「常夜燈(じょうやとう)」です。
常夜燈は、江戸時代末期に航路の安全を願って建てられた、高さ約7.7メートルの石造りの灯台です。現存する江戸時代の常夜燈としては日本最大級と言われ、その雄大な姿は鞆の浦のランドマークとして親しまれています。夜になると灯りがともり、その雰囲気はとても幻想的です。
江戸時代の港湾施設である「常夜燈」「雁木」「波止場」「焚場跡」「船番所跡」がほぼ完全な形で現存しているのは、全国でも鞆港だけです。

常夜燈のすぐそばにあるのが、潮の干満に関わらず船の荷揚げができる階段状の船着場「雁木(がんぎ)」です。現在も漁船が利用しており、生きた港町の姿を伝えています。
映画『崖の上のポニョ』の舞台になった観光名所
鞆の浦は、世界的にも有名なスタジオジブリ映画『崖の上のポニョ』の舞台のモデルとなったことでも有名です。宮崎駿監督が構想を練る際に、この町に数ヶ月滞在して作品のインスピレーションを得たと言われています。

映画の舞台とされる場所として挙げられるのが、鞆の浦の古い町並みや海沿いの風景です。作中に登場するような入り組んだ路地や、海を見下ろす高台にある家々、そして船が浮かぶ穏やかな港の様子はまさに鞆の浦の日常といえるでしょう。
鞆の浦を歩くと、映画のシーンと実際の風景を重ね合わせることができ、作品の世界に迷い込んだような特別な感動を味わえます。

「御舟宿いろは」は、坂本龍馬が談判の場に使用した魚屋萬蔵宅をリノベーションした宿で、宮崎駿監督が設計デザインに携わりました。
ポニョの名所巡りと一緒に、宮崎駿監督の足跡を感じるのもいいでしょう。
『ウルヴァリン:SAMURAI』の舞台になった観光名所
鞆の浦は、邦画だけでなくハリウッド映画のロケ地にもなっています。その代表が、人気アメコミヒーローを主人公とした映画『ウルヴァリン:SAMURAI』です。
作中、主人公のウルヴァリンが日本の古い町を訪れる重要なシーンのロケ地として、鞆の浦の町並みが使われました。特に、古い家々が連なる路地裏や歴史を感じさせる港の風景が、日本の伝統的な雰囲気を出すために選ばれています。

映画に登場する特徴的な場所の一つが、「太田家住宅」の周辺です。
太田家住宅は、鞆の浦で江戸時代から作られている薬用酒「保命酒(ほうめいしゅ)」の蔵元だった建物で、重厚な佇まいの建物や風情のある街並みが、映画の持つ独特の雰囲気と見事に融合しました。
ハリウッドの目にも留まるほど、鞆の浦の町並みが持つ「古き良き日本」の風景は価値あるものと認められています。映画を観てから訪れると、きっと作品の世界をより深く感じられることでしょう。

ヒュー・ジャックマンさんが撮影中に宿泊した宿が、こちらの「汀邸 遠音近音(みぎわてい おちこち)」です。
最上階のアッパースイートルームに泊まり、美しい景色と温泉を堪能されたみたいです。
また、ヒュー・ジャックマンさんは福山市の観光大使にも選ばれています。
参考:ふくやま観光・魅力サイト|えっと福山|観光大使第1号~ウルヴァリン~
時間のゆっくり流れる海辺の町で散歩を

鞆の浦は観光名所を巡るだけでなく、ただ町を歩くだけでも心が癒される場所です。海沿いに立つと波の音と潮の香りが心地よく、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
鞆の浦観光情報センター内では、ヒュージャックマンさんをはじめとする著名人のサインや見どころ観光マップが展示されています。
鞆の浦観光情報センター

| 住所 | 〒720-0201 福山市鞆町鞆416-1 |
| 公式サイト | http://www.tomotetsu.co.jp/tomonouratic/index.html |
| 営業時間 | 9:00~17:00 |
| 休日 | 無休 |
| TEL | 084-982-3200 |
| アクセス | JR福山駅南口から鞆鉄バス鞆線で「鞆の浦」下車 バス停前 |
| 駐車場 | 普通車 20台 (観光で駐車の場合、平日 500円/土日祝 1,000円) |
観光で駐車場を利用する場合は、下記の県営駐車場が広くて料金も安く、お得です。
広島県営鞆町鍛冶駐車場
| 利用時間 | 24時間/年中無休 |
| 駐車台数 | 230台 |
| 料金 | 8:00~22:00/4時間まで1時間毎150円、 4時間を超え7時間まで1時間毎100円、7時間を超える場合1,000円 22:00〜8:00/1時間毎100円 |
| 大型バス | 駐車不可 |
| お問い合わせ先 | 福山観光コンベンション協会(TEL:084-926-2649) |
また、鞆の浦からフェリーで約5分の無人島「仙酔島」に渡るのもおすすめです。「仙人も酔うほど美しい島」という名前の通り、自然がそのまま残されたパワースポットを楽しめます。
歴史、文化、自然、そして映画の舞台となった風景が共存する鞆の浦。時間の流れが緩やかなこの海辺の町で、心ゆくまで散歩と発見を楽しんでみてはいかがでしょうか。





