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人  |    2025.08.17

家庭、仕事、競技の両立。千葉県印西市から日本一を目指す、スパルタンレーサー・駒井勇輝さん

世界40カ国で開催されている、世界最大級の障害物レース「スパルタンレース」。日本では2017年に初開催されて以来、競技者数が増加傾向にあります。駒井勇輝(こまい ゆうき)さんは、そんなスパルタンレース競技者の一人。千葉県印西市を拠点とし、“日本一”を目標に日々トレーニングを重ねています。

駒井さんは、どんなキッカケからスパルタンレーサーになったのか。競技する中で感じている魅力やトレーニングと仕事の両立法、そして今後の目標などを詳しく伺いました。

より良い子育て環境を求めて千葉県印西市へ移住

駒井さんは中学と高校では陸上競技部に所属し、長距離選手として競技していました。しかし、大学では部活動に入らず、市民ランナーとして走っていたそうです。

「高校卒業後は、救急救命士の資格を取得するため大学へ進学しました。大学にも陸上部はあったのですが、そこまで力を入れて取り組みたいというほどではなく。逆に市民ランナーとして、自分なりの方法で走ってみたいという思いがあったんです。それ以降、現在まで走ることは続けていますが、学生時代より今の方が速いですし、距離も走れています」

大学卒業後は救急救命士として、地元である神奈川県で消防職員として勤務。5年ほどの経験を経て東京都内の医療機関に転職し、2022年に千葉県印西市へ移住。2024年4月からは、同市内にある大学病院で働いています。

「以前は、東京都町田市の持ち家に住んでいました。しかし、知人などが来た際に狭いと感じるようになっていて、2人目の子どもが生まれた年に住み替えを検討し始めたんです。上の子も保育園などに行っていなかったので、移るならこのタイミングかな…と。印西市は親戚から良い場所だと話を聞いたことがあり、調べてみたら自然が近くにありながらも、子育てしやすく活気ある地域だと分かりました。当時は都心で働いていましたが、町田も印西も移動時間はさほど変わりません。それなら、のびのび子育てしやすい場所が良いなと思い、家を買って移りました」

5歳と3歳という二人の女の子に加え、犬も飼っている駒井さん。芝生のある大きな公園が多いなど、自然豊かな印西市は子育てのみならずトレーニング環境としても適していると言います。駒井さんが初めてスパルタンレースに出場したのは、2023年9月にGALA湯沢(新潟県湯沢町)で開催された21kmレース。まさに駒井さんのスパルタンレーサーとしての道のりは、印西市からスタートしたわけです。

時間と環境を活かしたトレーニング

仕事はシフト制のため、土日平日、夜間を含めて仕事がある駒井さん。そのため、大会への出場はもちろん、日々トレーニングを行うことも容易ではありません。では、どうやってトレーニング時間を確保しているのか。そこには、“地域との関わり”という存在がありました。

「近所でトレーニングを通じて街づくりに取り組む、TRAINICATIONというコミュニティがあります。走るだけでなく、筋トレなど日によってさまざまなトレーニングを実施していて、そちらに参加させて頂いているのですが、その活動が私にとって重要な土台になっています。また、転職して職場が近くなってからは、“通勤ラン(往復15km)”で移動もトレーニングに充てられるようになりました」

▼トレーニング内容例

平日仕事朝早く走るor通勤ラン ※水曜:TRAINICATION(5:00~5:30と5:30~6:00)でスピード練習
土日仕事日勤の日はTRAINICATION(筋トレ系が多い)後に通勤ラン TRAINICATIONに参加しないときは、市民ランナーと集まってポイント練習することもあり
仕事なし朝3時に起床し、家のことを済ませて4時頃から家族が起きるまでにロングラン 子どもを保育園に送ってから、トレーニング後に戻ってお迎え

水曜のTRAINICATIONに参加した際は、家に戻って保育園の準備などを終えてから通勤ランするとのこと。また、仕事のない日は多くの時間を割けるため、少し遠出して茨城県の山を走ったり、佐倉市の岩名運動公園にあるクロスカントリーコースを走ったり、なるべく不整地を走るようにしているそうです。隙間時間まで有効活用してトレーニングしつつも、しっかり家庭のことも両立されている駒井さん。だからこそ、家族も応援してくれるのでしょう。

「近所にある牧の原公園に、小高い“ひょうたん山”や芝生を走れる場所があります。また、色んなトレーニング器具が設置されているので、これらを上手く使うことで、スパルタンレースに必要なトレーニングが行えています。たとえ限られた時間でも、工夫次第で色んなトレーニングができるんですよ」

実際のトレーニングを見せてもらうと、公園という環境をさまざまな方法で上手く使っていました。飛び越えたり、登ったり、くぐったり…まさにスパルタンレーサーだからこその視点に驚かされます。スパルタンレースについて知ったとき、“障害”に対してどう対策されているのか疑問だったのですが、その光景を見て納得しました。

日本一へ!海外への挑戦で得た新たな目標

市民ランナーだった駒井さんですが、スパルタンレースと出会いは人と人との繋がりがキッカケだったと言います。

「TRAINICATIONの仲間とリレーマラソンに出場した際、豊洲で同じような活動を行う“DTP(Daddy Park Training)”のメンバーから、スパルタンレースのオフィシャルコーチを紹介してもらいました。飲み会の場で練習に誘われて、すぐ翌週に行ってみたんです。詳しく話を聞いてみて、消防職員だった際に培った筋力や体力、そして高校卒業から続けてきたランニングを組み合わせることで、戦えるのではないかと思いました」

駒井さんは以前から、海外で活躍したいという思いを持っていたとのこと。しかし、ランだけで日本のトップに到達することは難しく、他の要素を織り交ぜた競技をやってみたいと考えていたそうです。そんな駒井さんにとって、スパルタンレースとの出会いはまさに光明だったのではないでしょうか。

2024年のデビュー戦では日本人TOP10を狙っていたものの、結果は18位。さっそく海外を目指すうえで壁に当たった駒井さんですが、あくまで気持ちは前に向いていました。レースを振り返り、何が足りないのかを考え、トレーニングにも盛り込むことでレベルアップを続けています。

「スパルタンレースでは障害物が目に付きますが、私の場合はそれ以上にトレイルランがダメでした。市民ランナーとしてランニングの大会にはいくつも出場していましたが、自分がここまで山を走れないとは思っていなかったですね。そもそもデビュー戦では、障害物までたどり着く前に、トップ争いで太刀打ちできませんでした。ですから、それ以降のトレーニングでは、不整地やクロスカントリーを多く取り入れるようにしています」

その後、早くも駒井さんは海外でのレースに出場。2024年4月の「高雄(台湾)SUPER」では6位という成績を残し、さらに同年9月の「太白(韓国)BEAST」では1位に輝きました。しかし、国内と海外いずれでもレースを経験したからこそ、新たな目標が見つかったようです。

「海外では優勝や入賞を経験しました。でも、まだ日本一が取れていないんです。日本はマラソン人口と同様に海外に比べてスパルタンレースも競技人口が多く、特にアジア圏で見れば抜きん出ています。ですから、今は日本一を目標にして取り組んでいるところです。スパルタンレースの日本代表は“JAPAN SELECTED RACERS”と呼ばれ、メンバーは年間を通した成績で決まります。私の場合、今のところ単独レースでの最高成績は4位。まだ遠い目標ですが、必ず果たして見せます」

2025年8月には、中国で開催される『Spartan Race Ultra』への挑戦を控えている駒井さん。これは日本未上陸のカテゴリで、50kmの距離を走りながら60もの障害を乗り越えるレース。国内での最長レースは21kmのため、倍以上の距離です。そのため、マラソンでは2024年に初めてフルマラソン以上の距離に出場。トレーニングでも、以前より長い距離を走るようにしているそうです。

スパルタンレースを通じた限界への挑戦

最後に、駒井さんの感じているスパルタンレースの魅力について伺いました。

「スパルタンレースは、走るだけでなく全身を使う競技です。平地を速く走れても山を走れなければいけないし、障害物を突破するには上半身の筋力も必要になります。まさに総合力が試され、自分の限界に挑戦できることが魅力ですね。また、障害物の難易度や重量は大会によって違いますし、選手も国によって特徴が異なります。例えば中国は非常にアグレッシブですが、私はランナー出身のためフィジカルが弱い。ですから、海外の大会で自分を鍛え、それを日本で活かしたいと考えています。競技を通じて幅広い成長の可能性が実感できるのも、スパルタンレースに出会えて良かったと思えている点ですね」

仕事と家庭、さらに競技を両立させながら、スパルタンレースで日本一を目指す駒井さん。その目標達成までの道のりを、今後も応援しています。

駒井勇輝さん

1992年5月19日生まれ。神奈川県綾瀬市出身、千葉県印西市在住。中学・高校では陸上競技部で長距離走に取り組み、大学進学と共に市民ランナーへ。2023年から世界最大級の障害物レース「スパルタンレース」への挑戦を始め、日本一を目指している。

▼主な競技成績

  • 2025年5月「千葉SPRINT」4位
  • 2025年3月「高雄(台湾)BEAST」2位
  • 2025年2月「茨城SPRINT」4位
  • 2024年9月「太白(韓国)BEAST」1位
  • 2024年9月「新潟BEAST」5位
  • 2024年6月「千葉SUPER(年代別日本選手権)」1位
  • 2024年4月「高雄(台湾)SUPER」 6位

参考:TRAINICATION

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この記事を書いた人

三河 賢文

"走る"フリーライター、ナレッジ・リンクス(株)代表、ランニングクラブ「WILD MOVE」主宰コーチ。宮城県仙台市出身、千葉県印西市在住の4人の子を持つ大家族フリーランス。マラソンが趣味で国内外を旅して走り回っています。100km超のウルトラマラソンも数多く完走。自らの足で見て、聞いて、感じた、地域の魅力をお届けします。

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