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フード  |    2025.01.18

「添加物の少ないうどん」品質へのこだわりを貫く大月の老舗製麺所

─トウエイ物産が目指す「本物の味」─

トウエイ物産の細うどん

山梨県大月市で40年以上にわたり製麺を手がけてきたトウエイ物産。長年地域に親しまれてきた同社のうどんやほうとうなどの製品は、近年インターネット販売でも新たな販路を広げている。

「とにかく納得のいく良いものを作って商売したい。細々でもいいから」と語る社長の藤本秀明さんは、大量生産・価格競争の波に飲み込まれることなく、品質重視の姿勢を貫いている。

地域に根付いた製麺の歴史

原料は北海道産小麦100%

大月から富士吉田にかけての地域は、かつて織物産業が盛んだった。工場で働く人々の手軽な食事として、太麺のうどんが好まれ、各家庭に製麺機があるほど親しまれていた。トウエイ物産もその歴史を受け継ぎ、地域の食文化を支えてきた。

安全性を追求した製法

真空パックで添加物の使用を最小限に

トウエイ物産の特徴は、添加物の使用を最小限に抑えた製法だ。約20年前、麺を真空パックにするための設備投資を決断。防腐剤・乳化剤を使用せず、アルコールと真空包装で日持ちを確保する方法を確立した。保存用のアルコールはうどんを茹でている間に飛んでしまう上に、もし口にしても食品用アルコールなので安全である。

「保存に必要最小限のアルコールは使用していますが、その他の添加物は入っていません。安全性とお客さんの健康を第一に考え、真空パックを採用しました。真空パックでは麺が少し硬く見える点はありますが、これは品質保持のための工夫とご理解ください」と藤本さんは語る。夏場でも冷蔵保存で1ヶ月の日持ちを実現している。

「日東富士製粉」の厳選された小麦粉「北疾風」

原料も国産小麦にこだわり、うどんに相応しい質の高いものを突き詰めた結果、北海道産小麦にたどり着いた。製粉会社「日東富士」の厳選された粉「北疾風」を使用。大量生産では難しい品質管理を、少量生産だからこそ実現している。

職人の感覚を大切に

手作りならではの繊細な感覚で小麦のおいしさを最大限に引き出す

現在は社長自らが製麺を手がける。季節や天候による微妙な変化に応じて、水の量や製法を調整している。

「うどんを200個作るとすれば、夏と冬では水の量が1.5kgも違う。雨の日も違うし、晴れの日も違う。うどんは天候に敏感なんです」

「練った粉を握ってみたりすると、感覚で分かります。それでちょうど良いなめらかさになるように調整します」

手作りならではの繊細な感覚が、小麦粉のポテンシャルを最大限に引き出すのだ。

また、品質向上のため、他店にも積極的に足を運ぶ。

「自分のうどんが絶対一番だから、他所のうどんなんか食わないというのは視野が狭い。いろんなところに行って食べてみるのは大事なことです」

その日の天候で変える水加減。職人の感覚が生きる一本

うどんの美味しさはつるっとした食感と歯ごたえ、と藤本さんは語る。

「究極を言えば、醤油だけかけて食べられるようなうどんでなければダメ」という言葉に、麺へのこだわりが表れている。

藤本さんは今日も、より良いうどんを求めて研究を重ねている。

事業継承の課題を乗り越えて

かつては13名の従業員を抱え、山梨県内の高速道路サービスエリアに広く製品を納めていた同社。しかし、後継者不在という課題に直面し、約10年前から事業規模の縮小を決断。その分、品質向上のため一層注力する道を選んだ。

「うちは大企業にはかけられない手間と愛情をかけている。お客さんに『お宅のうどんはスーパーで売ってるうどんとは全然違うね』って言われたら嬉しいじゃないですか」

お客様の喜ぶ声が一番のやりがいだと藤本さんは目を細める。

新たな時代へ

製麺機から生まれる打ちたての生うどん

近年は、地元の常連客に加え、東京や千葉、埼玉など関東圏や、兵庫など関西からの注文も増えている。一度食べた人からの口コミで広がり、30個、50個とまとめ買いする顧客も少なくない。

インターネット販売という新たな販路を開拓しながら、創業以来の品質第一という理念は変わらない。

「今の時代は情報発信が非常に大事。山梨県では全国区で知名度のある『ほうとう』、最近有名になった『吉田のうどん』がある。同じように伝統食として地元で愛されてきた『大月のうどん』をどんどん情報発信していきたい」と、新しい取り組みにも意欲的だ。

時代は変われど、本物の味を求める消費者の期待に応え続けているトウエイ物産。職人の技と経営者の理念が織りなす味は、これからも多くの人々の舌を楽しませ続けることだろう。

トウエイ物産

https://toueibussan.official.ec

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この記事を書いた人

金子 よし子

山梨県出身、山梨県在住のwebライター。 山梨県の魅力をたくさん発信していきたいと思います!

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