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スポット  |    2025.10.06

「人生にひとしずくのうるおいを」|ちゃぶ台のある本屋さん「本・ひとしずく」【後編】

瀬戸の魅力

引用:瀬戸市公式Instagram

瀬戸市

名古屋の北東部に位置する瀬戸市は
1300年以上前から焼き物の生産が続く陶器の街。
毎年9月の第2土曜・日曜日に開催される「せともの祭」には、
例年数十万人もの人が全国から訪れます。

「銀座通り商店街」や「末広町商店街」など、
昔ながらの商店街が残るのも魅力のひとつ。
現在も数10軒ほどのお店があり、和菓子屋やパン屋、
喫茶店などの専門店が軒を連ねます。
近年は昭和レトロな町並みを活かしたおしゃれなカフェや雑貨屋さんも増加。
定期的なマルシェやイベントも数多く行われています。

「この辺はカオスなのが面白いんです」

瀬戸の魅力は?との質問に、綾さんの口から出てきたのがこの言葉。

「古い建物がある横にめちゃくちゃ新しい建物があったり、すごい老舗のお店がある中に、おしゃれなお店があったりする。中にいる人たちも個性的でおもしろいのに、自分で気づいてない人が多いんですよ」

小さく笑う綾さんは、何より人が魅力的だと続けます。

「瀬戸の人たちのほとんどは人と関わることが好き。距離感も近くて、熱量も高い。瀬戸に対しても、自分の仕事に対しても」

そんな商店街には、外からやってきた人も多いそう。歴史がありつつ新しい瀬戸の街は、町自体が魅力にあふれているのかもしれません。

前編はこちら

「人生にひとしずくのうるおいを」|ちゃぶ台のある本屋さん「本・ひとしずく」【前編】

ひとしずくのこと

ひとしずくがオープンする前、カフェでの読書会や期間限定の古本屋を開いていた綾さん。イベントを通して、本の持つ力を実感したと言います。

「本はいろんなジャンルがあるから、どんなこともテーマにできる。どんな人にもマッチするから、どんな人でも受け入れられる。懐が深いと思います」

そう穏やかな表情で告げる綾さんですが、電子書籍は苦手とのこと。

「電子書籍はなんだかぬくもりややわらかさがなくて…。紹介する分にはいいんだけど、手でめくって、触りたいと感じるんです」

インクの香りや紙の質感も、本の魅力のひとつ。ページをめくるときのときめきは、電子書籍では味わえないのかもしれません。

スナックひとしずく

引用:公式Instagram

トイレを設置するためにトイレにまつわる作品集『ノートイレ!ノーライフ!』を販売したり、クーラーをつけるために「スナックひとしずく」を開店したり。斬新なアイデアは、どのように思いついたのでしょうか。

「全部お客さんです。トイレが欲しいなあってぼやいた時に、『トイレっていうテーマでみんなに作品を書いてもらってそれを売ればいいじゃん』ってお客さんがアイデアをくれたんです。それがもとになって『ノートイレ!ノーライフ!』ができました。スナックひとしずくも、『しゃべることが好きならスナックやったらどう?』って言われたんです。その一言で、スナックのアイデアが生まれました」

店内には遊び心満載の本棚やドリンクボックスもあります

なにごとも「楽しい方がいい」と話す綾さんは、楽しい方ががんばれると笑います。ピンチも楽しむその精神が、お店をますます輝かせていくのでしょう。

診療所としての「ひとしずく」

引用:公式Instagram

そんなひとしずくには、不思議と人生に悩んでいる人が訪れるそう。求職中の人や介護中の人、さまざまな悩みを抱えた人がやってきます。

「ここは建物の力がすごいんです。なんだか優しい雰囲気の空間だからか、つい自分の悩みをぽろっと言ってしまうのかもしれません。先日トークイベントをしてくれた方にも『診療所みたいだね』って言われました。お客さん同士で人生相談が始まることもあります」

ちゃぶ台のある本屋さん「本・ひとしずく」。懐かしい雰囲気と不思議なぬくもり、あたたかな綾さんの笑顔に心がゆるみ、思わず胸の内を打ち明けてしまうのでしょう。

これからについて

「人が変わっていく姿を見たときが一番うれしい」と語る綾さん。今後は本の移動販売をしたいと展望を語ります。

「本屋にアクセスしにくい団地に移動販売に行きたいんです。軽バンも購入したので、数か月後には始められると思います。地域の方たちに、少しでも本を好きになって欲しい」

「本はコミュニケーションツール、世界を広げてくれるもの」と語る綾さんは、本を通じて人と人、人と地域をつなぎ続けてくれることでしょう。

さいごに

古民家ならではのあたたかさと、ゆるやかな空気感が魅力の「本・ひとしずく」。ひとしずくのうるおいが、心の渇きを満たしてくれるはずです。

本・ひとしずく

築100年超の古民家を改装し、2021年5月にオープン。新刊、古本、絵本、リトルプレスのほか地元瀬戸市ゆかりの作家作品や本関連の雑貨も取り扱っている。

2023年1月からは2階をレンタルスペース「ふたしずく」として開放し、地域の作家による展示会や本関連イベントなども開催。「せとまちブックマルシェ」などのイベントも多数行っている。 

2025年11月15日(土)・16日(日)には「国際芸術祭あいち2025 灰と薔薇のあいまに」の連携企画として行われる「瀬戸 まちなか本の市」にも参加。近くの商店街では、フリーマーケット形式の古本市「せと末広町 本のさんぽみち」も開催される。

「本・ひとしずく」では「せとまちブックマルシェ 〜ZINE づくりspecial!〜」として、ZINEを自分で作るためのワークショップやトークイベントを多数開催予定。詳しくは公式HPにて。

住所:愛知県瀬戸市陶生町24(名鉄瀬戸線「尾張瀬戸駅」から徒歩約10~15分)

営業日:木〜日 10:00〜16:30(祝日も営業/月・火・水曜は定休日)

駐車場:近くの宮川駐車場が利用可能

公式Instagram

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この記事を書いた人

Risa Suzuki

豊田市生まれ豊田市育ち、フリーライターのrisa suzukiです。 その人・お店だけが持つ魅力を引き出しながら、「会ってみたい!」「行ってみたい!」と思えるような記事をお届けします。 Mediallでは豊田市近郊のナンバーワン・オンリーワンスポットをご紹介。 地元民だからこそ知るステキな人・お店の情報を発信していきます。 イベント取材、インタビューなども柔軟に対応するので、お気軽にご相談ください。

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