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スポット  |    2025.11.20

絶景を独り占め!噴火湾を望む白い貝塚|世界遺産「北黄金貝塚」

誰もが思わず「わー」と声をあげてしまうような、真っ白な貝塚。
ここは北海道伊達市の「北黄金(きたこがね)貝塚」です。
本来は地中に埋もれて見ることのできない「縄文時代の貝塚」が復元されています。

市民が守り育てた「北黄金貝塚」

伊達市南部の内浦湾岸に位置する「北黄金貝塚」は、縄文時代前期(約6000年前)から約1000年かけて作られた貝塚を伴う集落遺跡です。
現在でも道内屈指の漁場として知られる内浦湾は、周囲に活火山が多いことからしばしば噴火湾と呼ばれ、縄文時代から豊富な魚貝類や海獣を求めて人々が住みつき、沿岸には多くの貝塚が作られました。

この遺跡は1948年に付近の貝塚を調べていた地元の高校教員が発見したもので、地主の援助を得ながら本格的な調査・研究が続けられました。1987年に地元の人たちの働きかけなどにより国の史跡に指定され、その後「史跡 北黄金貝塚公園」となりました。
そして2021年には世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」に登録されました。

そのシンボルである丘の上に復元された貝塚は、市民が持ち寄った貝殻で出来ています。 
今年で26回目となる、市民が縄文文化を楽しみながら学ぶ「だて噴火湾縄文まつり」や、一昨年から稼働を始めた「復元貝塚再生プロジェクト」など、今も市民の理解と協力のもとに美しい貝塚の姿が保たれています。

丘の上の貝塚を見に行こう

以前は牧草地であったというだけに、とにかく広い!
あまりの広さに全景を捉えることができません。
丘の上に白く見えるのが貝塚です。

丘の上には2つの貝塚が復元されています。
先ずは、下からは見えない丘の左側にある貝塚を目指します。
遠目からは緩やかに見える丘は、思った以上に勾配がついています。

斜面を登っていくと、丸い貝塚が見えてきました。
大きさは15×15m、貝層の厚さは約30㎝。約6000年前に作られた貝塚です。
丘の一番奥まった場所に作られています。

この貝塚が作られた約6000年前は現在より気温が2〜3度高く、海面は今より5〜6mも高かったと考えられています。そのため海水が陸地奥深く入り込む「縄文海進」と言われる現象がおこり、今よりもずっと近くまで海が迫っていました。

市民が持ち寄ったハマグリ、マガキ、アサリ、ウニの殻が、地表に敷き詰められています。
実際はハマグリが多くを占める貝塚で、現在は地中に埋められ保存されています。

次に、下からも見えていたもう一つの貝塚へ向かいます。

近くにくると、その大きさに驚きます。
大きさは80×20m、貝層の厚さは約80㎝。

この貝塚は約5500年前に作られ、北海道最大級の大きさです。
この頃になると気候の寒冷化で海の水位が下がりはじめ、それに伴って海岸線は退いていきました。
それを追いかけるように、丘の先端に貝塚が作られるようになりました。

反対側を見ると先ほどの丸い貝塚がとても小さく見えます。
この貝塚には寒冷な海で成長するカキが多く見られ、マグロやオットセイ、クジラなどの骨もありました。自然環境の変化によって縄文人の食生活が変わったことを示しているようです。

貝塚は宝の山?

日本の「貝塚」の多くは縄文時代に作られたもので、主に縄文人が食べた貝の殻が積み重なったものです。
日本の土壌は酸性なので、通常は植物や動物の骨、人骨などの有機物は土の中で分解され殆ど残りません。ですが「貝塚」の中では、貝殻の持つ炭酸カルシウム成分により酸性の土壌が中和され、様々なものが残っていることがあります。

食料とした魚や動物の骨、使い終わった土器や石器などの道具、祭祀などで利用した土偶や石棒(せきぼう)、さらに竪穴建物やお墓なども発見されることがあります。

細長い貝塚の真ん中にシカの角が置かれていました。
これはシカの角を使った儀礼を再現したものです。
貝塚は彼らの食生活だけでなく精神世界までが詰まった、まさに宝の山なのです。

貝塚から出土した遺物は、併設の「情報センター」で見ることができます。
「クジラの骨で作られたスプーン」や「シカの角で作られたヘアピン」など、ここならではの出土品も展示されています。

まとめ

「北黄金貝塚」は2つの復元貝塚をはじめ、縄文時代の森を復元した「縄文の森」や水が沸き出る「水場の祭祀場」など、広い丘には見どころがいっぱいあります。
殆どが草で覆われアップダウンも多いので、来訪の際は動きやすい服とスニーカーをお勧めします。

実は利用できるのは毎年4月1日から11月30日まで。残念ながら雪の降る冬期は閉鎖されます。
期間限定の美しい貝塚を、春のお出かけの候補にしてはいかがでしょうか。

基本情報

史跡北黄金貝塚公園(北黄金貝塚遺跡・情報センター)
住所 北海道伊達市北黄金町75
電話 0142-24-2122
開館時間 9:00~17:00  
休館日 12月1日~3月31日
入館料 無料

主なアクセス ・道央自動車道 室蘭ICから車で約10分
       ・JR室蘭本線 黄金駅から道南バス「北黄金貝塚公園前」下車、徒歩5分

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この記事を書いた人

のんてり

神奈川県在中の元インテリアコーディネーター・アート好き / 偶然に出会った縄文土器や土偶の魅力に憑りつかれ、以来10数年、全国各地の縄文時代の遺跡や博物館を訪ね歩いています。その土地土地で出会った摩訶不思議な縄文の世界を紹介します。

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