
フランスにいるようなおしゃれな雰囲気なのに、友だちの家に来たかのような居心地のよさ。
豊田市の山間部・田茂平町にある「サヴォアのお菓子と料理」は、気づけば何時間も時が過ぎている、そんな空間です。
オーナーの新田さんは、料理と自然、そしてこの町の暮らしを心から楽しんでいる女性。
今回はそんな新田さんにお店への想いを聞かせてもらいました。
「サヴォアのお菓子と料理nitta」について

緑あふれる静かなロケーションと温かみのある扉。店内に一歩足を踏み入れると、飾らないのになぜか絵になるセンスのよい空間が広がります。

さりげなく植物が飾られたテーブルからは青々とした山や蝶々が舞う庭の景色も。自然とアンティークの調和が心地よく、のんびりリラックスしながら過ごせます。
フランスサヴォア地方のレシピをベースにした料理は、身近にある食材を使用した身体に優しいもの。
サヴォア名産の「クロゼットサヴォア」や「ビスキュイ・ド・サヴォワ」のほか、その時期に一番おいしい食材を使用した野菜料理や肉料理、ジビエ料理などを楽しめます。
もちろんチーズやワインの種類も豊富。一日を通してお茶、食事、アペロ(夕方から友人とお酒を飲んでおしゃべりすること)ができるのも、魅力のひとつでしょう。
レジ前に置かれた焼き菓子は、お土産やプレゼントにもおすすめです。
自然とともに暮らすフランスでの生活

店主の新田さん
「写真を見て一目ぼれしたんです」
名古屋のパティスリーで働いていた時代、1ヶ月の夏休みを利用してお菓子の本場フランスに行こうと思った新田さん。そんな時、とある交流会で知り合ったフランス人のおじさんからサヴォアをすすめられたそうです。
「『いいところですか』と聞いたら『すごくいいところだから行っておいで』と言われて。写真を見せてもらった瞬間、きれいすぎて『絶対行きます』って言いました」
その後、1ヶ月サヴォアに滞在。知り合った人から現地のパティスリーを紹介してもらい、1年半の料理留学を果たします。
「サヴォアの人たちって、自然が暮らしの中にあるんです。名古屋での暮らしとのギャップを感じるとともに、そんな生活が好きなんだと気づきました」
庭のハーブを摘んで食卓に飾る、飼っている鶏が産んだ卵で料理を作る…。そんな生活に名古屋育ちの彼女は驚きと感動を感じたそうです。
「それと、若い子からお年寄りまで食べることを大切にしていて。一緒に食べる時間や料理について話す時間を何よりも大切にしてるんです。一日中食に関することをしてる(笑)」
そう言って笑う新田さんは、自然と寄り添い、食を楽しむサヴォアの暮らしを日本で再現したいと思うようになります。
「サヴォアのお菓子と料理nitta」オープンへ
「フランスから帰ってきて、空き家だったおばあちゃんの家を片付けることになったんです。掃除や畑の手入れをしているうちに『ここでならサヴォアと同じような暮らしができる』と思うようになりました」
こうして2022年7月、「サヴォアのお菓子と料理nitta」をオープン。あまり知られていないサヴォア地方の料理を、地元の食材を使い提供しはじめました。山々に囲まれたサヴォアは、どこか田茂平に似ていたのかもしれません。
「すべてはご縁だったと思います。ここでこういう場所を作るために、すべてが用意されていたんだと感じました」そう語る新田さんの、ピュアな笑顔が印象的でした。
お店へのこだわり

「古いもの、今あるものを活かしつつ新しいものと共存させたい」
古民家を改装した店内は懐かしさと新しさが溶け合った空間。木の梁や土壁のぬくもりに、アンティークの家具や季節の草花が静かに寄り添います。
「料理のこだわりは?」と聞くと「自分の家族や大切な人たちに食べさせるような料理を提供したいんです。お金と時間を使ってきてくれるお客さんに、安心安全な料理を食べさせてあげたい」とのこと。
丁寧に作られた料理とひとりひとりを想った接客は、そんな気持ちの表れなのでしょう。
食材も地元のものや知り合いの生産者さんのものを使い、極力無添加、無農薬を心がけているそう。庭でハーブを摘んでくる姿は、サヴォアの女性そのものでした。
田舎での生活
「ここで暮らし始めて、夜って暗いんだということに気が付きました。当たり前のことなんですけど」
と笑う新田さんは、ここでの生活を本当に楽しんでいるよう。
「季節の移り変わりを感じられるのは田舎暮らしの特権ですよね。少しずつ変わる葉っぱの色や、季節ごとに咲く花を見ると幸せを感じます」
柔らかな笑顔でそう告げる新田さんは、実は2歳の男の子を育てるお母さんでもあります。
「息子が生まれて、この場所全体ができあがった気がします」
子育てをしながらの仕事も大変だと感じることはなく、みんなが協力してくれていい感じにまわっているそうです。人との縁を何より大切にする新田さんならではの子育てなのでしょう。
看板商品【ビスキュイ・ド・サヴォワ】
お店の看板商品【ビスキュイ・ド・サヴォワ】についても聞いてみました。
ビスキュイ・ド・サヴォワ
14世紀が起源とされるサヴォア伝統の素朴なケーキ。サヴォアに滞在するローマ皇帝を歓迎するため、パティシエが考案したのが始まりとされています。フランスの中でも古い歴史を持つ、卵・砂糖・小麦粉だけで作られる素材の持ち味を生かしたシンプルなケーキです。
参考文献:一般社団法人日本洋菓子協会連合会
「素朴だけどサヴォアで一番愛されているお菓子なんです。伝統が今でも引き継がれているのがすごい。違う国で1400年代に生まれたお菓子が食べられると思うとワクワクしません?」
そう語る新田さんは、サヴォアをテーマにした絵本も執筆(お店で購入可能です)。
かわいらしいイラストと優しい文章、サヴォアへの愛情に心がほっこり。レシピや季節ごとのおすすめの食べ方も載っています。

実際にいただいてみるとカステラともシフォンケーキとも違う、雲のような軽やかさにびっくり。卵の優しい甘みとふんわりとした香りが、口の中にゆっくりと広がります。
シンプルイズベストという言葉がぴったりのビスキュイ・ド・サヴォワ。おやつとしてだけでなく、チーズやサラダを合わせて軽食にするのもおすすめです。
フランス・サヴォアの味をここ豊田で
先日まで息子さんとサヴォアを訪れていた新田さん。今後はレシピを発信したり、いろんな場所で出張料理をしていきたいそうです。
「料理を通して幸せな気持ちになってほしいです」笑顔で締めくくる新田さんのお店「サヴォアのお菓子と料理nitta」で、フランス気分と豊かな自然、愛情たっぷりの料理を楽しんでください。
店舗情報
住所:〒470-0423 愛知県豊田市田茂平町道下50-3
営業時間:10:00〜17:00(不定休の為お店にお問い合わせを)
電話:0565-77-4940
アクセス:猿投グリーンロード「中山」インターから車で約15分