ヒストジオいなお、と申します。「歴史と地理」が好きなライターです。
本記事では、茨城県の県庁所在地、水戸市にある「千波湖(せんばこ)」を紹介していきます!
水戸市の偕楽園と千波湖
「水戸市と言えば『日本三名園』の一つである『偕楽園(かいらくえん)』がある街ですね! 水戸と言えば、梅の都だ。梅の季節には、それは見事で綺麗な梅の花を観ることができるんでしょうね…」
今、そう思われましたか? しかし、偕楽園の魅力は梅林「だけ」ではありません。
『陰陽思想』に基づいて設計されている庭園です。明るく華やかな「陽」の梅の花だけでなく、暗くしめやかな「陰」の竹の林なども見応えがあります。そして偕楽園のすぐ眼下に広がっている「千波湖」は、それはもう、息を呑むほど美しいのです。それらをすべてひっくるめて味わうことで、魅力がより深まっていく、というもの。


ただ、この千波湖は「観光地」であるとともに、訪れる人たちの「憩いの場」としても毎日活用されています。一周、約3キロメートル。ランナーやウォーカーがたくさん訪れ、本気のスピードで走る人もいれば、風光明媚な四季を愛でながら、ゆっくり歩いている人もいます…。
水戸駅からそんなに離れていない街の中心地にある湖です。中心にこれほどの立派な湖がある街は、なかなか他にはない、かもしれません。
朝の千波湖を巡る
では、早速「千波湖」と、そこからすぐの「偕楽園」周辺の見どころを紹介していきましょう! その爽やかな「朝の風景」を…。
周回コースのスタート地点の近くには、健脚で知られる諸国漫遊の伝説、水戸黄門様で有名な「徳川光圀(みつくに)公」の像が立っています。実に大物です。説明不要の有名人! まるでランナーやウォーカーたちを優しく見守り、カッカッカッと明るい笑い声で勇気づけているかのようです。

その横には『好文Café』という小粋なお店もありました。もちろん早朝なのでまだオープンはしていませんでしたが、ハクチョウをかたどったシュークリームなど、素敵なスイーツやランチ、お茶を楽しむことができます。

「…湖には、ハクチョウがいるんですか?」
ええ、いるんですよ。しかもハクチョウだけでなく、季節に応じてたくさんの種類の鳥が行き交っています。鳩もたくさんいました。鳥好きの方にはたまらない湖…。

少し歴史を紐解きますと、千波湖のハクチョウは、1860年の『桜田門外の変』で水戸藩の浪士たちに討たれた大老、井伊直弼(いいなおすけ)に由来しているそうです。明治維新から約百年が経った頃、井伊直弼の本拠地だった滋賀県の彦根の街と、水戸の街が「仲直り」をしました。その「仲直りの証」として、彦根からハクチョウが贈られてきたのです。千波湖を優雅に泳いでいるハクチョウたちは、その時のハクチョウとつながりがある、とのこと。
なお、湖にはリアルなハクチョウだけでなく、ハクチョウの「ボート」もたくさん浮かんでいます。天気の良い日には、ボートに乗って湖面にゆっくり浮かんでみるのもいいですね!

さて、そのボート乗り場から上り坂に向かって、JR常磐線の線路の上を跨線橋で渡れば、そこはもう偕楽園です。
坂の途中には「大日本史完成之地」の石碑がありました。偕楽園をつくらせた第九代藩主、徳川斉昭(なりあき、最後の将軍である徳川慶喜の実父)など、歴代の水戸藩主は「大日本史」と呼ばれる歴史書を連綿とつくってきました。その巻数、何と全397巻! 大作です。編纂には、250年ほどの歳月がかけられたそうです。歴史の重みを、ずしんと感じます。

坂を登り切れば、ほどなくして偕楽園の東門に着きます。
偕楽園は台地の上にあります。以前は入場無料だったのですが、現在は有料になっています。特に、2月から3月にかけての「梅まつり」の時期には、全国から多数の観梅客が押し寄せてごった返すため、ピークの時間をずらして早朝に訪れるのもあり、かも。

坂の下には「JR偕楽園駅」があります。この駅はいつも電車が停まる駅ではなく、梅まつりの時期などに限り特別に乗り降りできる「臨時駅」です。鉄道ファンの方なら、一度は訪れたいレアな駅…!

その駅の近くには、ひっそりと「烈公梅」と呼ばれる梅の木が植えられていました。烈公(れっこう)とは、偕楽園をつくらせた徳川斉昭の異名。本記事の撮影時にはまだ花は咲いていませんでしたが、徐々につぼみが膨らんできていて、花を咲かせる時期を今か今かと待ち望んでいるようでした。

…梅の花は、冬の寒さに耐え、時期が来ればパッと花を咲かせます。
しかし、春がたけなわになると、主役の座を桜の花に譲り渡して、自らは潔く散っていく。春の先駆け。そのさまは、世の無常を感じさせる。少し寂しい。…ですが、花は散っても、その後には「実」がなります。梅の実は梅干しや梅酒に生まれ変わり、人々の健康におおいに貢献してくれるのです。
再び、千波湖に戻ってきました。
だいぶ日が昇り、明るくなってきた。日課のランニングを終えて帰る人、これから走る人、ゆっくり散歩する人…。まさに、人それぞれです。そう言えば梅の花も、早咲き、遅咲き、それぞれ。平坦な梅林に華麗に咲かせる梅もあれば、斜面でありながら懸命に咲かせる梅もある。それらを眺めているだけでも、自分自身の花をいつ、どこで咲かせるべきだろうか、と考えさせられます。

千波湖は、いつでも皆様を待っています!
偕楽園の魅力は「偕楽園だけ」で成り立っているわけではない…。
そのことを、私は本記事の執筆を通して、改めて感じることができました。眼下に広がる千波湖と揃ってこそ、偕楽園の良さも際立つ、というもの。
梅の花と同じく「花を咲かせる」その日を目指して、健康を増進させ、脚力をつけ、前向きな気持ちで一日を進んでいく…。そのために、朝の千波湖はうってつけの舞台なのです。
どうでしょう。皆様も、朝の爽やかな空気の中、千波湖を訪れてみませんか?
…ただ、梅まつりの時期には周辺の駐車場が「有料」に変わってしまいます。しかも、料金がけっこう高い。少し離れた場所の駐車場は無料のようですので、そこに車を停めて、健康のために歩いてきてもいいかもしれませんね。

なお、湖畔には「デゴイチ」と呼ばれるSL、蒸気機関車の原寸大模型もあります。特に鉄道ファンの皆様ならば、テンションが上がること間違いなしです!


◆水戸市の「千波湖」のホームページはこちらから↓
https://www.city.mito.lg.jp/site/senbako
「歴史と地理」を存分に体感することができる、千の波の湖。ぜひ、どうぞ!
アクセス:
◆公共交通:JR常磐線「偕楽園駅」(臨時駅)で下車、徒歩すぐ。またはJR常磐線「水戸駅」で下車、徒歩10分程度。偕楽園行きのバスも水戸駅から乗ることができます。
◆自動車:近隣に駐車場がありますが、梅まつり期間中は有料になります。また、時間やイベント開催時期によっては、千波湖・偕楽園近くの駐車場は満車で停められない可能性がありますのでご注意ください。カーナビの設定は「千波湖」または「千波公園」でお願いします。