
東京都八王子市。豊かな自然に抱かれたこの地に、静かに佇む皇室ゆかりの場所があります。
「武蔵御陵(むさしのごりょう)」—それは、昭和天皇が眠る御陵(みささぎ)であり、日本の現代を見つめている荘厳な場所です。
「御陵」として八王子市民には馴染み深い場所ですが、全国的にはあまり知られていないかもしれません。
そこで、昭和天皇の御陵を含む武蔵陵墓地をご紹介いたします。
武蔵御陵ってどこにあるの?

武蔵御陵は、JR中央線・京王線「高尾駅」北口から徒歩約20分の所にあります。そこは、都心から電車でわずか1時間ほどの緑豊かな場所です。
高尾駅から甲州街道を八王子方面に進むと、「武蔵陵墓地参道」の石碑が目にとまります。そこを左に曲がってください。道なりに進めば、やがて総門が見えてきます。
日常の音が遠ざかり、空気が澄んでいくのを感じるでしょう。
武蔵御陵?武蔵野陵?多摩陵?

いろいろな呼び名がありますが、武蔵陵墓地には以下の4陵があります。
- 大正天皇 多摩陵(たまのみささぎ)
- 貞明皇后 多摩東陵(たまのひがしのみささぎ)
- 昭和天皇 武蔵野陵(むさしののみささぎ)
- 香淳皇后 武蔵野東陵(むさしののひがしのみささぎ)
1926年大正天皇が崩御され、「多摩陵」と命名されました。
そして1989年昭和天皇が崩御され、埋葬されるときに「武蔵野陵」と命名、後に墓地の名称が「武蔵陵墓地」と改称されました。現在は通称として、「武蔵御陵」とか「多摩御陵」とも呼ばれています。
「陵」は、天皇や皇族のお墓という意味です。なので「1陵」「2陵」と数えます。
多摩陵と多摩東陵

総門を入った瞬間、空気が変わります。
北山杉が植えられた参道を歩くと、耳に届くのは、自分が踏みしめる玉砂利の音のみ。
周囲の喧騒とは切り離された別世界を歩いているようです。
表参道を560mほど進むと、やがて目の前に多摩陵が現れます。
ここは大正天皇が眠る場所。
余計な装飾のないその姿は、圧倒的な荘厳さを湛え、訪れる人の心に語りかけてくるようです。
多摩陵の東側には、貞明皇后が眠る「多摩東陵」が寄り添うように位置しています。
木々に包み込まれるようなその空間は、厳粛で静寂そのものです。
武蔵野陵と武蔵野東陵

多摩東陵から西参道を通り、新参道を進むと昭和天皇の武蔵野陵に突き当たります。
御陵の前に立つと、「畏れ多い」という言葉を体感するような感覚を味わいます。
全てを包み込むように佇んでいるのですが、気圧(けお)され、鳥居の下まで足を運ぶことすらできないのです。力を入れて立っていないと後ずさりしてしまいそうです。
何かを問われているような、見透かされているような…人それぞれに感じるものは違うのでしょう。
ぜひ、鳥居の前に立ってその感覚を味わってみてください。
あえて多摩陵よりも階段を低く設計されたといいますが、威厳があって何か人知を超えるパワーを感じるようです。
武蔵野陵の東側には香淳皇后の武蔵野東陵が隣接しています。
こちらも緑が全体を覆い、香淳皇后のお好きだった植物が植えられているとのことです。
御陵印


御陵内の多摩陵墓監区事務所で御陵印がもらえます。
- 多摩陵印:大正天皇多摩陵貞明皇后多摩東陵
- 武蔵野陵印:昭和天皇武蔵野陵香淳皇后武蔵野東陵
事務所内で申し出て、自分で押印する形式です。必ず御陵印帳をご用意ください。
まとめ―八王子に息づく「荘厳と静寂」を感じる場所
武蔵御陵は、自然と畏敬の念が調和している神聖な場所です。
そこには普段感じることのない「荘厳と静寂」が息づいています。
皇室を静かに感じる場所として、また、畏れ多い何かを感じることができる場所として、ぜひお出かけください。
アクセス
基本情報
- 所在地:東京都八王子市長房町1833
- 交通機関等:JR中央線・京王線「高尾駅」北口下車 北東へ1.5km
- 駐車場:あり(無料)
- 参拝時間:午前9時から午後4時まで(参入は午後3時半まで)
※年間を通して参拝できますが、行事等のため参拝を休止することがあります。