江戸時代の頃から港町として栄えた木更津。
江戸幕府から特権を与えられた木更津船という五大力船が江戸を往来していたそうです。
明治時代の鉄道やバスがなかった当時は、蒸気船が行き交い商業が発達しました。
昭和の初めには、大相撲が行われたり演芸が行われたりするなど「娯楽の殿堂」としてより一層賑わいを見せていた木更津。
その頃から市内外の人々を癒やしてきたのが、1932年に創業した銭湯「人参湯(にんじんゆ)」です。
1952年に宮大工によって建て替えられ、現在の姿となった「人参湯」。
長年愛されてきた老舗銭湯ですが、2011年に廃業。
銭湯としての役目を終えたものの、現在は当時の貴重な建物を生かしながら「木更津焼きそば」が営業しています。
昭和レトロな雰囲気が漂う銭湯跡地で、昔ながらの焼きそばをいただきました!
非日常感漂う昭和レトロな雰囲気
「焼きそば」と書かれたのれんをくぐると、木札が入った下駄箱が並んでいます。
銭湯だったときと同じように、こちらで靴からスリッパへ履き替えて中に入る仕組み。
「木更津焼きそば」の立て看板がある「男湯」が店舗です!
なんだかワクワクしてきますね♪
恐る恐る扉を開けると…そこにはレトロ感満載の別世界が広がっています。
古めかしさはありますが、高い天井と高窓から入る自然光で想像よりも明るい雰囲気!
脱衣所だった部分の一角に焼きそばのリアカーを彷彿させる鉄板が置かれていて、調理はすべてここで行われています。
もともとリアカー販売からスタートした「木更津焼きそば」。
木更津駅東口で店舗を持っていたこともありますが、2019年に木更津に被害をもたらした台風の影響で屋根が吹き飛んでしまったそう。
次の営業場所を探していたときに、人参湯の大家さんとのご縁があり、2020年からこの人参湯跡地での営業がスタートしました。
当時の様子をそのまま生かした店舗。
料金表や今はほとんど見られない番台もそのままです。
ちなみに「女湯」の脱衣所には昭和レトロなアイテムがずらりと展示されています。
アイロンやラジオ、カメラ…。
ジャンル問わずさまざまな物が置かれているのでじっくり見て回るのも楽しい!
骨董好きさんはたまらないのではないでしょうか?
音楽ライブスペースとして使われている大浴場
大浴場の扉を開けると銭湯の雰囲気を残しつつも、さまざまな楽器が置かれています。
声をかければ誰でも自由に演奏して良いとのこと。
実は時折音楽ライブも開催されているのだそう。
この日は近所のおじさんがオカリナを演奏していましたが、浴場に響く音色が素敵でした。
大浴場で音楽ライブ。
音楽好きな店主の小倉さんならではの斬新なアイデアです。
定番から変わり種まで!豊富な焼きそばメニュー
ついつい銭湯跡地巡りに夢中になってしまいますが、目的は焼きそばです。
注文しようとメニューを見ると、焼きそば(一部焼きうどん)だけなのにとっても豊富なラインナップ!
どれにしようかかなり迷ってしまいました。
幻のインディアンソース焼きそば
悩みに悩んでオーダーしたのは、小倉さんイチオシの「インディアンソース焼きそば」。
目玉焼きをトッピングしました♪
オーダーすると、小倉さんが慣れた手付きで調理してくれます。
ジュージューと焼ける音、香ばしいソースの香りが店内に広がります。
インディアンソースというのは、1746年創業のカギサ醤油秘伝のウスターソースのこと。
千葉県富津市にあったカギサ醤油は、かつてキッコーマンやヤマサ醤油と並ぶ国内を代表する醤油蔵元でした。
1923年に国内初の醤油蔵元が作るウスターソースとして誕生したインディアンソース。
宮内庁御用達のソースとして高い評価を得ていたインディアンソースは、ここ上総地区のソウルソースとして地元民に愛されてきました。
ところが、インディアンソースは2003年のカギサ醤油廃業とともに市場から姿を消してしまいます。
それから20年の時が過ぎようとしたとき、当時のカギサ醤油の土地建物と同時にレシピを譲り受けた会社によって復刻されました。
幻のウスターソースといわれるインディアンソースは、12種類のスパイスがブレンドされています。
さらっとした舌触りと酸味、そしてコクと甘みが複雑に混ざりあった、どこか懐かしい味。
茹でてから使用している乾麺のもちもち感とも相性抜群です。
その他のメニューも見逃せない!
他にも「オムそば」や、木更津名物アサリを使った塩焼きそば、珍しい「クリーム焼きそば」などバラエティ豊かなメニューも必見。
高校生が多い木更津東口での営業時代に人気だった「海老玉」などのおやつシリーズも食べられます。
個人的にはパリパリの春巻きの皮で包んだ「焼きそば棒」がおすすめです!
「木更津を元気にしたい」という想い
お祭りで食べていた屋台の焼きそばが原点だと語る小倉さん。
「広島風お好み焼き」や「富士宮やきそば」のような知名度はまだまだないけれど、いつか「木更津焼きそば」が全国に広がってほしいという野望を持っています。
シャッター街とも呼ばれている木更津駅西口周辺を「昔から愛され続けてきた焼きそばで元気にしたい」と小倉さん。
ご当地ソースと昔ながらの乾麺に、エビや海苔の風味が加わった「木更津やきそば」。
今でも地域のお祭りがあれば積極的に出店されていますが、この独特な雰囲気の中で味わう焼きそばは格別です。
ここでしか味わえない「木更津焼きそば」をぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。
お店の情報
木更津焼きそば
所在地:〒292-0067 千葉県木更津市中央3-4-39
営業時間:11:00〜14:00・16:00〜22:00
定休日:日曜日
駐車場:なし
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