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フード  |    2024.04.27

沖縄の北谷町で「NEW街のホットステーション」見つけましたーROTTONー

北谷町は沖縄でも人気の高いリゾート地で、美しいビーチとアメリカンカルチャーが色濃く、とても魅力的なエリアです。そんな賑やかな場所から程よい位置に、独創的な雰囲気で惹きつけられる店『ROTTON』があります。

なんとも素敵なオーナー夫妻。旦那さまのナックさんは、大阪出身の現役バンドマン。自転車で日本一周したのち沖縄へ移住しました。奥様のユミさんは、独身時代にタイで働いていた経歴を持つ、沖縄出身のウチナンチュ。このご夫婦が営むお店は、再び訪れたくなる気持ちにさせてくれます。そんなROTTON誕生までのストーリーをご紹介します。

寝袋一丁、日本一周自転車の旅へ

関西出身のナックさんが、沖縄へ移住するきっかけとなった日本一周自転車の旅。

2012年、寝袋1つを持って野宿に挑戦します。全国各地でパンクスのライブを楽しんだり、自転車で山道をこぎながら泣いたり、歌ったりするなど、さまざまな経験と多くの人々との出会いがありました。

当時は震災直後で、東北では馴染みのない方言だと不安にさせてしまうと思い、標準語で丁寧語を徹底したそうです。その経験から現在でも幅広いお客さまに配慮して標準語を意識しているナックさん。幼少の頃は、本人曰くダークな環境で育ったとのこと。そのすべての積み重ねがパンクでロックな温かい人柄を生み出したように感じます。

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」の店長

2013年に沖縄へ移住。ナックさんの人柄の良さで、同じアパートに住む方からめったにないほどの可愛がりを受けます。その方が、ナックさんと話が合うはずだと世界を旅するユミさんを紹介したことで、ワールドワイドなカップルが誕生しました。

沖縄に根付き、お二人の子どもが産まれたころ、ナックさんは勤め先の公民館で子育て世代や、学校に行けない子たちと関わりを持ちます。わが子も待機児童であったため、「誰かの居場所を」「どんな方でも楽しめる場所を」という想いからお店を出そうと決心しました。

さっそく住んでいた八重瀬町で店舗を探しますが、高額な浄化槽の設置が必要だったり、本土出身であるがゆえに警戒されたようで苦戦します。そんな中でも素敵なご縁があり、八重瀬のPR事業であるキッチンカーの応募を勧められて見事選ばれました。ROTTONの歴史の幕開け、キッチンカーの誕生です。

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のキッチンカー時代

「宗教とか人種とか、分け隔てなく食卓をともに」みなを笑顔にしたい

八重瀬町のPR事業であるキッチンカーは、「カラベジプロジェクト」といい、町で生産された彩り豊かな「カラフルベジタブル」を広める活動の一環でした。ナックさんご夫婦はカラベジの枠の中で何ができるか真剣に向き合います。

そんなとき、ヨーロッパの友人から「宗教とか人種とか分け隔てなく、食卓をともにできる」と、本来のヴィーガンの文化について聞いたとき、ハッとさせられます。「誰かの居場所を作りたい」という願いからさらに、「みなを笑顔にしたい」「世界の方々とつながりたい」へと広がっていきました。

《泣く子もだまるこのウマさ》をテーマにしたヴィーガン専門店の確立です。こうしてカラベジヴィーガン料理のキッチンカーは走り出します。ある日、お客さまの中によく大量の野菜をくれる方がいて、なぜいつもこんなに野菜をくれるのかと聞いてみたところ、地元の農家さんでした。そして、「無農薬」と「有機栽培での農薬」について学ばせていただいたそうです。

「だって、当事者に聞くのが一番早いでしょ?」

この出会いを通じて、身体もよろこぶおいしい野菜について、深く理解することができました。ぜひお客様にも食べてもらいたい。ROTTONで提供される野菜や食材には、そんな想いがこめられています。

進化を続けるROTTONとうとう店舗オープンへ

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」の外観

キッチンカーで活動してきたROTTONが2周年を迎えて、とうとう店舗をオープンすることになりました。ナックさん夫婦の熱い想いはとどまることを知らず、まだまだ走り続けています。

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」の店内

店舗オープンから2年後、ハラール対応のお客さまからお弁当とオードブルの相談を受けたそうです。ナックさんは、「うちの店に来ていただいたからには、生半可なことはできない。やるからには、徹底してやりたい。今の自分たちができる最大限のことを追求していこう」と決意しました。

オーナー夫婦だけでなく、スタッフ全員が一丸となり、アイデアを出し合い試行錯誤を重ねました。その努力の成果がこちらです。

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のハラール対応オードブル

まず見てほしいのが、カラフルな色合いと品数の多さ。そして、ランチとオードブルのメニューが1つもかぶらないよう工夫を凝らしました。通常営業もこなしながら、この細かな心遣いがお客さまを感動させます。

「本当に喜んでもらえて、JICAを通じて今後もやり取りしようと言ってくれたんですよ」とナックさんは語ります。

手持ちのアイテムが少ない中、スタッフ全員で知恵を絞り、真剣に取り組んだこの試みは「3色のペンでどこまでカラフルな絵が描けるか」という挑戦でした。ROTTONのお客さまに対する熱い想いがここに込められています。

一般のヴィーガン専門店とはひと味違う、決められた枠を内側から押し広げていくように、挑戦と成長を続ける店ROTTON。「うちは本当にはぐれメタルみたいな感じ。みにくいアヒルの子の1人だけ黒いとか、そんな存在なんです。笑」とナックさんは話します。敷居をできるだけ低くし、みんなを幸せにしたいという思いで、お客さまと向き合います。

沖縄の次世代ソウルフード「うちかビスケット」ROTTONの新たな挑戦

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のうちかビスケット

時を同じくして、「地域を盛り上げたい」と沖縄特有の伝統文化に着目し、世に広めて継承するべく新たな挑戦を始めました。珍しいスイーツ、その名も『うちかビスケット』です。

沖縄にはお盆やお彼岸のとき、ご先祖様がお金に困らないようあの世の通貨である「打ち紙(うちかび)」と呼ばれる紙を燃やして、あの世にお金を送り届けるという風習があります。なんとあの世では、打ち紙1枚で50万円の価値があるらしく、豪快に束ごと燃やして送り届けます。

そんな沖縄の風習に触れながら、ヴィーガン対応の「うちかビスケット」を味わってくださいね。人気がありすぎて、1年中焼き続けても売り切れたり、お待たせしている人も…。店頭でぜひ探してみてください。

「最近、また生地を変えました。少し割れやすくなったけど、味はさらにおいしくなってます」とユミさん。常に進化を続ける姿勢に感服します。「沖縄に来たら、ブルーシール!A&W!うちかビスケット!!」と語るオーナー夫婦でした。

パンチのあるアパレル販売も。即完売続き!出会えたらラッキーです

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」の店長夫婦

イベント出店に向けて、大人気のうちかビスケットTシャツが販売されていました。毎回違うデザインに出会えるのでワクワクしますよ。そんなオリジナルTシャツを初めて販売したのはコロナ禍。世の中が不安で暗く沈んでいた時期でした。心に灯す希望の光、国境を超える愛を込めた言葉として、「最高」Tシャツを送り出します。

さらに幻の『チョンペ』も発売します。これは「チョンダラー(沖縄エイサーでの道化役)」と「モンペ」が融合した作品で、手縫いのために数が限られています。なんと縫子さんは偶然出会った75歳のおばあちゃんであることがわかりました。

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のTシャツ

いかす『チョンペ』です。残念ながら縫子さんがご高齢であるため、現在は販売を一時休止しており、幻の『チョンペ』となっています。ほかにもデザインやアイテムが異なる雑貨が不定期で販売されていて、どれも魅力的なデザインばかりです。店頭や、インスタをぜひ確認してみてくださいね。

オーナーの想いを食べて体感。やさしくて熱いバーガーあります

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のハンバーガー

ROTTONの愛を最も体感できるのが、やはりお食事です。オーナー夫婦とスタッフが一丸となった努力の結晶であり、それぞれのメニューには根強いファンがいて、実際に訪れると選びきれずに悩みます。

そこで渾身の一撃として、ギャップに驚かされる『ヴィーガン仕立てのボリューム満点なチーズバーガー』を注文しました。

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のハンバーガー

完全に牛肉と擬態しているパティは、豆腐と豆を黄金比で混ぜ合わせて、しっとりふわふわに仕上がっています。自慢のオリジナルソースが、チーズと合わさりジューシーさを際立たせます。ヴィーガンなのにチーズ?と思いきや、チーズも手作りでした。

「パンは信頼できるお店にお任せしてるんだけど、それ以外のパティやソースは何度も試行錯誤して仕上げています」一口食べると思わず喉が唸る1品。特にオリジナルレッチリソースのハンバーガーは、病みつきになる辛さが絶妙ですね。

ホット一息、こころもお腹もみたして愛のパワーチャージを

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のレコードプレイヤー

現役であり生涯バンドマンであるナックさん。自慢のレコードで、心地よいBGMを流してくれます。アットホームな空間だから、初めて来た方でものんびり過ごせます。日頃がんばっている身体を労い、リラックスしたら、ROTTONのパワーをおすそわけしてもらいましょう。

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」の店長が集めたレコード

「一番うれしいことは、お店を通してたくさんの出会いがあること。出会った方たちの、応援してます!って言葉がどんなに嬉しいか。心が折れて、もうお店を閉めよう…と思ったときも応援してくれる人がいたから、明日への活力につながりました。勤め人のままなら、こんな出会いはなかったですよね。本当にありがたいなって」

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」に飾られた自転車の車輪

パンクで物腰のやわらかいナックさんと、パワフル女将ユミさんのいる沖縄、北谷町にある「NEW街のホットステーション」。早朝6時から営業しており、観光客にも嬉しい自慢のモーニングも味わえます。さらにご夫婦の素敵な出会いの1つである「陶芸家今村能章さん」の器で提供されるこだわりのコーヒーをいただくと、贅沢なひとときに感じるから不思議です。ぜひ、ほっと一息していってください。

取材・文/矢吹かおり
撮影・編集/みやねえ(OKINAWA GRIT)

沖縄・北谷町のヴィガンカフェ「ROTTON」のコーヒーを注いだ陶芸家・今村能章のコーヒーカップ

ROTTON(六屯)

沖縄県北谷町浜川183-1
080ー4692ー8989
6:00~15:00(14:30L.O)/水・木定休
駐車場:5台
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この記事を書いた人

OKINAWAGRIT

小回りが効くプロ集団、沖縄の編集プロダクション OKINAWA GRIT(略して、オキグリ)です。「熱量高く、妥協せずに。そして、仕事を楽しむ」をモットーに、外部のクリエイターと協働しながら活動中。オリジナルの企画力を強みにコンテンツマーケティングを手掛け、地方企業の広報支援+SNS運用のほか、#ライター交流会 in 沖縄の開催、ライター育成講座の企画・運営を行っています。

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