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フード  |    2024.08.27

実家感とこだわりがすごい。岡山の古民家夜カフェ「夜のひと息」

古民家の明かりを見つめている男性


「自分の時間を持ちやすい“夜”に、ほっとできる場所を作りたくて」

やわらかな明かりが灯る古民家を見つめながら静かに言葉を紡いだのは、オーナーの片山昌樹(かたやまあつき)さん。片山さんは、カフェ経営、動画クリエイター、マーケター、SNS運用など幅広く活躍するパワフルな人だ。

発想力に長けた彼の夜カフェ「夜のひと息」には、他では味わえない個性的な世界観がある。正直にいって、岡山に来てここをスルーするのはもったいない。

多くの魅力にあふれる夜カフェ「夜のひと息」。一体どんなカフェなのか、片山さんに直接お話をうかがってきた。

「夜のひと息」…名前の由来は?

お店のメニュー表

「夜のひと息」という店名の由来を教えていただけますか?

はい。僕自身が忙しくて、やりたいことをやったりゆっくりしたりできる時間が夜しかなかったんです。だから、そういった時間にほっとできるような場所を作りたいという想いで「夜のひと息」にしました。

めちゃくちゃ刺さる名前でした。
客層はどうですか?カフェというからには、やっぱり女性が多いですか?

そうですね、8~9割は女性かカップルだと思います。たまに男性のみのお客さんもいますけど、基本的に女性が多いですね。
ただ、最近は家族連れのお客さんもいますよ。

夏休みに入ったからでしょうかね?うちも毎日うるさくて…。

え、お子さんがおられるんですか?

そうなんですよ、3人います。

え!?見えないですね。

見えないでしょう?ずっと25歳のつもりでいるので。

あはは。

なんですか?

こだわりを教えてください

橋がかかった中庭風の空間

お店のこだわりについて詳しく教えてください。

まず、カフェをやる前に市場調査をしたんですよ。200人近くにアンケートを取った結果、多くの人が夜カフェに「おいしい料理」より「ゆっくりおしゃべりができる場所」を求めていることが分かりました。なので、お客さんが友達や恋人とゆっくりおしゃべりができるように、落ち着ける空間づくりにこだわりました。

確かに…私も夜カフェに行くとしたらゆっくりおしゃべりができる場所がいいかも。個室かどうかは絶対にチェックしちゃいます。

そう、だから「夜のひと息」は完全個室のカフェにしたんです。多分、岡山で完全個室の古民家夜カフェはここだけだと思います。

夜のひと息で人気の個室


「夜のひと息」は、客席がすべて完全個室。8部屋ほどあり、おばあちゃんの家のような座敷席もあれば、応接室のようなソファー席もある。仕切りではなくしっかりと一部屋ずつ区切られているので、安心して内緒話を楽しめそうだ。

「料理より空間」といいましたが、決して料理を疎かにしているわけではないんですよ。例えば、夏メニューのかき氷には自家製シロップを使っていたり、夏でも食べやすいように茶そばを出したりといった工夫もしています。

茶そばとおにぎりのセット


茶そばはつるつるっと食べやすく、食欲が減退する夏にうってつけだ。ねぎ、ごま、大根おろしといった薬味も充実していたので、味変も楽しめる。

さらに、おにぎりと漬物もついてきた。しっかりとお腹を満たしてくれるので、夕食にも飲み会後の小腹を満たすにも最高だ。

昔バーで働いていた経験もあるので、アルコールにもこだわりました。例えば、ビールは岡山の地ビール「独歩」を置いています。

大人が楽しむのにぴったりな夜カフェですね。

0時まで営業しているので、2軒目で来てくれる人も多いですよ。

他にはない面白い演出があるそうですね?

スポットライトに照らされたマンゴーかき氷

インスタで拝見したんですけど、「夜のひと息」には、かき氷にスポットライトを当てる演出があるそうですね?

そう!小さなスポットライトを月に見立ててかき氷を照らす演出です。夜らしさを出したくて。

店名にぴったりですね!

あと、撮影を楽しんでもらいたい気持ちもあったんですよ。写真って、人によって撮り方が全然違うじゃないですか。引きがいい人もいれば寄りがいい人もいて、人によって被写体の見え方や色が違ってくると思うんです。だから、僕がスポットライトで演出をして、お客さんが自分好みに撮影して各々の色を楽しんでもらえたらいいなって。

写真映えを意識しているあたりがSNS社会ならではって感じですね。

僕はカフェに付加価値を与えたかったんです。お店の看板メニューがお茶漬けなんですけど、こちらは七輪でおにぎりを焼いてから食べるスタイルにしています。体験型にすることで、「食べる」以上の楽しさを味わってもらえたらいいなと。

確かに、体験が加わることで普通に食べるよりも満足度が上がりそう!他では味わえない個性ですね。

そもそもこのお店自体、付加価値が高いと思うんですよ。レトロなお店はたくさんありますけど、ここってレトロ“すぎる”じゃないですか。

昭和感あふれる扇風機と急な階段


バリアフリーの「バ」の字も見えない急な階段、青い羽根の扇風機、年季の入った古書の数々…「夜のひと息」には、雑貨、家具、内装のあらゆる場所に“レトロ”が散りばめられている。

このレトログッズたちはどこから調達しているんですか?

実はここ、昼間は別のオーナーが経営しているんですよ。その人がいろいろと集めてくれて…もちろん、僕も小さいものは集めているんですけど、ほとんどがお昼のオーナーさんですね。

「斉藤」と彫られた木のテーブル

取材中、ふとテーブルの端に彫られた「斉藤」の文字が目に入った。

とある斉藤くんに恋心を抱く乙女が掘ったのか、「私のテーブルだぞ」と斉藤さんが所有欲を見せた結果なのか…たった2文字からあらゆるストーリーを想像して楽しめるところも、使用感があるレトロ雑貨の魅力だろう。

とにかく「斉藤」が気になりすぎて、片山さんが席を離れたタイミングで「斉藤」だけを10枚くらい撮影していたのは内緒だ。

どうして古民家を選んだんですか?

やわらかい明かりが灯る古民家

カフェと一口にいっても、新しくて綺麗なカフェもあるじゃないですか。なぜ古民家にしたんですか?

理由は2つですね。
まず、僕の母方が兵庫の田舎に住んでいて、超がつく古民家なんですよ。だからこの懐かしい雰囲気がよくて古民家を選びました。
2つ目は、市場調査の結果ですね。徹底して市場調査をして、空間や費用感などのニーズを集約したら古民家となりました。

なんとなく、ではなくちゃんと理由があったんですね。

カフェ経営って、2パターンあると思うんです。1つは自分の理想を形にするタイプ。もう1つは経営目的でやるタイプ。前者は、お店のデザインやメニューを自分好みに作り上げることに注力するんです。

「自分の城」ですもんね。

そう。だから経営者兼店長となって毎日のようにお店に立っているんです。
でも僕は後者の経営目的なので、マーケティングをして利益を出すことにフォーカスしています。市場調査で求められているカフェ像を明確にして形にしたら、人を雇って任せちゃうスタイルですね。だから、僕が「夜のひと息」に出勤するのは月2回くらいです。

じゃあ、片山さんに会えるのはめちゃくちゃレアですね。

そうですね。なんなら、夜カフェをやっているのに僕自身は1回しか夜カフェに行ったことがないです(笑)

え?

周りの人にも同じリアクションをされます(笑)

オープンはスムーズに?

行き止まりの廊下

「夜のひと息」をオープンさせるまでにつまづいたことはありますか?

めちゃくちゃありましたよ。

やっぱり建物が古いから?

というより、子どもができてバタバタしちゃったんですよ。
奥さんが妊娠したことをきっかけに、僕は「子どもが生まれたら事業ができなくなるかも…生まれる前に何かやらなきゃ!」と思ってカフェ経営を決意しました。時期でいえば、決意して動き始めたのが去年の5月…子どもが生まれる2ヶ月前でしたね。

2ヶ月前!?

そうです。急いで市場調査をして、約45日でオープンさせました。

めちゃくちゃ早くないですか!?

あり得ないくらい早いと思いますよ。調べていないから分かりませんけど、飲食経験なしで岡山最速…いや、もしかしたら日本最速かもしれません。
去年の7月14日にオープンして、その3日後に息子が生まれました。

それはバッタバタにもなりますよね。

先にお昼のオーナーさんが経営をしていたので、いってしまえば間借りなんですよ。だからできたんだと思います。
それでもメニューは自分たちで考えないといけなかったので、妊婦の奥さんと元パティシエの実母に協力してもらいました。メニュー表ができたのなんて、オープンの2分前ですよ(笑)

よく間に合いましたね。

僕は本業もあるので、ここで寝泊まりをして出勤していましたね。オープン1週間前は本当に寝られないくらい忙しくて…かなりしんどかったです。

それはキツイですね…オープンを聞きつけて長蛇の列を作るお店ってたくさんあると思うんですけど、「夜のひと息」も初日はすごかったですか?

オープンしたての頃は知人がメインで、初めましての人はほとんどいなかったです。しかもオープンしてすぐに子どもが生まれたので、僕は3ヶ月の育休をとって、あとのことは店長に任せっきり。事業拡大がついていけず大赤字でした。
だから、本格的に始動したのは開店3ヶ月後くらいです。

今ではお客さんの賑やかな声が響く人気店ですね。

本当にありがたいです。

夜に求めるものがここにある

かき氷の旗がなびく古民家


「夜のひと息」は、ただの古民家カフェではない。市場調査をしたうえで、人々が求めるものを取り入れたこだわりのカフェだ。

レトロな空間と体験型の料理は、子どもから大人まで楽しめること間違いなし。世代を超えて夜のひと時を満喫できるだろう。

ちなみに、駐車場は店舗から歩いて1分ほどの場所にある。近くには路面電車も走っていて、市電西大寺町駅からは歩いて5分ほど。車組にも歩き組にも嬉しい好アクセスだ。

「夜のひと息」に行ったら、ぜひあなたが「エモい」と感じるものを探してみてほしい。筆者もまた、「斉藤」に会いに行こうと思う。

店舗情報

所在地〒703-8298
岡山県岡山市中区西中島町5−9
営業時間19:30~24:00
電話番号090‐5536‐1092
Instagramhttps://www.instagram.com/yoruno.hitoiki_cafe/

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この記事を書いた人

夏目ミノリ

自然に囲まれて暮らすWebライター兼カメラマンです。 元結婚式場パティシエ(調理師免許、製菓衛生師保有)。 斧を使って薪割りをすることから、SNSでは「薪割りWebライター」と呼ばれています。 田舎暮らしの日常、グルメ、観光スポットなどの執筆が中心。 愛のある文章であらゆる情報を発信します。

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