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フード  |    2025.03.09

昭和初期の面影を残した喫茶「キアズマ珈琲」で味わう珠玉の一杯|豊島区雑司が谷

都心に隣接するにもかかわらず、落ち着いた雰囲気を持つ街、雑司が谷。そんな雑司が谷の名所である「鬼子母神堂」の表参道にたたずむのが「キアズマ珈琲」です。

昭和初期に建てられた古民家をリノベーションした、レトロな雰囲気が漂う店内で、極上のコーヒーを提供する店主の高安宏昌さんに話を伺いました。

築80年の建物をリノベーションした、趣のある空間

キアズマ珈琲が居を構える「並木ハウス別館」
キアズマ珈琲が居を構える「並木ハウス別館」

都電荒川線の鬼子母神前停留場から鬼子母神堂に続く、天然記念物のケヤキ並木。このケヤキ並木が彩る石畳の道に、「キアズマ珈琲」があります。

キアズマ珈琲が居を構える「並木ハウス別館」の裏手には、漫画家の手塚治虫さんが住んでいた「並木ハウス」が。どちらの建物も、有形文化財として登録されているそうです。

歴史あるインテリアが彩る、レトロモダンな店内

懐かしさを感じるガラスの引き戸を開けて店内へ。モダンジャズが流れる空間に一歩足を踏み入れると、ノスタルジーあふれる和モダンな世界が広がります。

1階にはテーブル席が2つと、教会で使われていたチャーチチェアが並ぶカウンター席が。目を引くバックヤードのイラストは店員さんが描いたもので、遊び心が感じられます。

奥のテーブル席の椅子は、喫茶店をやっていたお祖父様がお店で使っていたものを譲り受けたものだとか。歴史が詰まっているからこその温かみを感じます。

少し急な階段を上って、柔らかな日差しが差し込む2階へ。元は浴室だった奥のスペースは、壁の赤とソファーの緑が織りなすコントラストが美しく、レトロモダンな雰囲気をいっそう際立たせています。

1階奥や踊り場には、高安さんが愛するSF小説が1000冊ほど所狭しと並びます。ゆったりとコーヒーを飲みながら読書に浸れるのも、キアズマ珈琲の魅力です。

丁寧にハンドドリップで淹れた、自家焙煎のコーヒー

ホンジュラス サンタロサ デ コパン(税込650円)

キアズマ珈琲で提供されるコーヒーは、アイスコーヒーとカフェインレスを含む8種類。オーダーを受けてから、一杯一杯ハンドドリップで丁寧に淹れています。コーヒーのほか、4種類の紅茶やジュースもあり、さまざまな好みに寄り添うラインアップが取りそろえられています。

取材日のおすすめコーヒーは、朝に煎りあがったばかりの「ホンジュラス サンタロサ デ コパン」でした。このコーヒーは透明感とフルーティーな甘みがあり、甘みと酸味のバランスがよいのが特徴です。

高安さんは毎朝自家焙煎を行う

高安さんはコーヒーのおいしさを最大限に引き出すために、手間を惜しみません。

コーヒー豆は産地や品種によって個性が異なります。高安さんは毎朝の焙煎で、豆にあわせて温度や時間、熟成期間をこまめに調整し、特徴を生かしているそうです。

念入りなハンドピッキングもおいしさの秘訣です。ハンドピッキングとは、コーヒーの味を損なう原因となる豆を、手作業で取りのぞくこと。焙煎前・後と2回のピッキングを行い、雑味の原因となる豆を丁寧に取りのぞきます。入念なピッキングの結果、時として1キロの豆が3割も減ってしまうこともあったのだとか。

デザートもすべて自家製で、素材へのこだわりが光ります。2種類のチーズをぜいたくに使用したチーズケーキや、カカオマス100%のガトーショコラは、優しい味わいでコーヒーのおともに最適です。

季節限定メニューも見逃せません。8月には自家製ジンジャーエール、冬には焼きリンゴが登場します。「新しょうがやりんごがおいしい時期にだけやっています」と高安さんが語る季節を感じるメニューは、まさに旬の味わいを楽しめる特別な一品です。

ベイクドチーズケーキのブレンドコーヒーセット(税込950円)

この日いただいたのは、一番人気の「キアズマブレンド」と「ベイクドチーズケーキ」のセット。コロンビアをベースに3種類の豆をブレンドした香り高い深煎りコーヒーは、酸味と苦味のバランスがよく、みずみずしくクリアなのどごしでした。

柔らかなチーズケーキはしっとりとしていて、濃厚なチーズの風味が口の中に広がります。コーヒーとの相性も抜群で、至福のひとときを味わえました。

ドリンクと軽食はテイクアウトも可能です。

本人公認!?店名の由来は大好きなジャズの名曲

コーヒーをいただきながら「キアズマ珈琲」と名づけた理由を高安さんに尋ねると、大好きなジャズバンド・山下洋輔トリオの曲名が由来だと教えてくれました。

もともとジャズが好きで、学生時代は500枚ほどレコードを収集していた高安さん。お店をオープンする前、店名を考えていた高安さんの目にとまったのが、「キアズマ」というモダンジャズのアルバムでした。

「キアズマは生物学用語で『染色体が交差する場所』という意味があるんです。さまざな人の人生が交差する場所になってほしい、という願いを込めて名づけました」

高安さんの表情が特に柔らかくなったのは、ある思い出を語る時でした。

「開店10年目に、突然山下さんご本人がいらっしゃったんです。生物学用語とはいえ、ずっと山下さんの曲名を勝手に使っている気分だった私の第一声は、『すみません! 』でした(笑)。でもご本人から快く認めていただき、今ではためらいなく店名の由来として説明できるようになりました」

訪れる人が思い思いに過ごせる空間を作りたい

2009年の開店以降、昭和の面影が残る古民家でこだわりのコーヒーを淹れ続けてきた高安さん。

今後キアズマ珈琲をどのような場所にしていきたいか尋ねると、「お客様がそれぞれ自分のペースで過ごせる場所になれたら嬉しいですね」と教えてくれました。

「友人と語りあう、読書に没頭する、ただコーヒーを味わう……そんな具合に、お客様の好きなことを、好きなように楽しんでいただきたいと思っています」

都会の騒がしさから一歩離れた雑司が谷にたたずむキアズマ珈琲。どこか懐かしさを感じるこの場所で、芳醇なコーヒーをいただく時間は、疲れた心を潤してくれるでしょう。

キアズマ珈琲

【基本情報】
店名:キアズマ珈琲
住所:東京都豊島区雑司が谷3-19-5
電話番号:03-3984-2045
営業時間:10:30~19:00
定休日:水曜
Instagram:https://www.instagram.com/kiazumacoffee/

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この記事を書いた人

田村 美穂

東京都在住の取材ライターです。東京近郊の人・物・コトの取材記事を通して、地元の魅力をお届けしていきます。趣味は読書・サッカー観戦・ゲーム。

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