横浜に、かつて電車が走っていた場所を“歩ける”散策路があることをご存じでしょうか。
東白楽駅から横浜駅までの3駅分にまたがる「東横フラワー緑道」は、鉄道の記憶と都市の風景が静かに溶け合う、ちょっと不思議な1.4kmです。

東横フラワー緑道の歴史
東急東横線の横浜駅~反町(たんまち)駅~東白楽(ひがしはくらく)駅間は、もともと地上に線路がありましたが、横浜高速鉄道「みなとみらい線」の開通に伴い、現在は地下化されています。
地下化の際、地上の名残を新たな公共空間として再生しようとして誕生したのが、この緑道です。
東横フラワー緑道が誕生する背景には、東急東横線そのものの長い歴史があります。
東横線は1926年、①丸子多摩川〜神奈川間が開業し、1928年には②神奈川〜高島町、1932年には③高島町〜桜木町まで延伸され、渋谷と横浜を結ぶ主要路線として整備されてきました 。
①丸子多摩川〜神奈川
→ 現在の多摩川駅周辺〜反町駅周辺
②神奈川〜高島町
→ 現在の反町駅周辺〜横浜駅周辺(まさに東横フラワー緑道の区間)
③高島町〜桜木町
→現在のみなとみらい地区周辺
その後、みなとみらい線と東急東横線との相互直通運転が始まると、横浜駅で地上の既存線と地下のみなとみらい線を接続する必要があり、結果として東白楽〜横浜間を地下化する大規模工事が実施されました。
地上に残された線路跡をどのように活用するかが横浜市で検討され、地域の回遊性を高める公共空間として現在の東横フラワー緑道へと生まれ変わっていきました。
出典:東急東横線の跡地利用 横浜市、東横線の歴史|東急線ヒストリー|東急・東急電鉄公式サイト
東横フラワー緑道の魅力は?
そんな歴史の面影を残す東横フラワー緑道の魅力はどこにあるのでしょうか。
1.線路跡ならではの“まっすぐ歩ける気持ちよさ”
もともと線路だったため急なカーブがなく、都市部では珍しく“ただ真っ直ぐ歩く”感覚を味わえます。
特に、東白楽から横浜方面は少しずつ下っていて見通しが良く、自然と歩くリズムが整い、歩くことそのものを楽しめる道になっています。

2.季節の花と植栽が彩る
緑道の名前に「フラワー」とつくだけあり、沿道には花壇や季節の草花が多く植えられています。ベンチも整備され、地域住民の憩いの場としても活躍。
私が歩いた日も、通勤・通学の人、犬の散歩、買い物帰りの人、子ども連れの家族など、生活のために歩く人の姿が多く見られました。自転車の走行は見かけなかったので、ゆっくり散策したい人にはとても歩きやすい環境です。


3.シンボル「高島山トンネル」
東横フラワー緑道を語るうえで欠かせないのが「高島山トンネル」です。
遺構として残すだけではなく、使い続けることを目的に整備が進められました。

トンネルの長さは約170m。2〜3分あれば十分に歩いて通過できますが、住宅街に突如現れる歩行者用のトンネルとしては、比較的距離が長いように感じます。
無機質で外界から遮断されたような雰囲気があり、どこか異世界に迷い込んだような感覚になります。
その一方で、地域の人たちが日常の足として当たり前のように使っている、その“生活感”とのギャップがまた、不思議な魅力を生み出していました。

トンネル、というと怖いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、照明は十分で、夜間の通行禁止(6時~21時半のみ通行可)、且つ通報用の非常電話と監視カメラが一定の距離に設置されていて、防犯対策はしっかり施されていました。
4.地域の人たちに支えられた手作り感
歩いてみて気づいたのが、ところどころに市民の手が加わった花壇があった点。
ただ通るだけの動線ではなく、地域の人たちの暮らしのリズムや気配を感じられる点も、この道のほっとする魅力だと思います。


おわりに──過去と未来が重なる歩行体験
東横フラワー緑道は派手さこそありませんが、鉄道の歴史と都市の暮らしが同じ場所に積み重なっている稀有な歩行空間です。
横浜駅の近くで少し時間が空いたとき、ふらりと歩きたくなる。
そんな静かで心地よい散策路が、東横フラワー緑道だと思います。




