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スポット  |    2023.11.13

兵庫県赤穂市で再現された幻の雲火焼、桃井ミュージアムの魅力|雲火焼展示館 桃井ミュージアム

兵庫県赤穂市は兵庫県と岡山県の県境に位置し、「忠臣蔵」や塩田が有名ですが、最近は『きらきら坂』がSNSで大注目されています。

そんな赤穂市に、幻と呼ばれた陶器があるのをご存じでしょうか。

清少納言も好んだ夕焼け色を写しこんだような陶器

桃井ミュージアムHPより
桃井ミュージアムHPより 雲火焼の祖 大嶋 黄谷の作品

「枕草子」で「秋は夕暮れ」と述べた清少納言も見ていたであろう夕日の色をした焼き物は、雲火焼(うんかやき)といい、赤穂市で作られています。

江戸時代後期から明治時代初期にかけて作られていましたが、陶法を伝える人もなく、文献も無く「幻の雲火焼」と称され珍重されてきました(雲火焼展示館 桃井ミュージアムより引用)。

しかし、雲火焼に魅了された人々の手で復元に取り組み、地道に試行錯誤を重ねられ40年ほど前に再現されました!
その雲火焼のミュージアムをご紹介します。

雲火焼の魅力:一点一点異なる美しさ

桃井ミュージアム インスタグラムより 香炉

お話を聞かせてくれたのは、雲火焼の作家兼支配人である長棟 光亮さん。

「雲火焼は釉薬無しで、窯の煙と炎で模様が作られるんです。普通の灰色の粘土で作るんですが、どれ1つとして同じものが無いのが面白いです。模様のおおよその調整はできますが、ちょっと違えばひびが入ったり、焼いた反応が良い場所と悪い場所があったりで、焼き上がりが楽しみです」と、雲火焼について話してくれました。

「今は2~3ヶ月に1回焼いています、窯元は兵庫県でここにしかない」そうです。

幻の雲火焼の復元に魅了された桃井 香子氏と長棟 州彦氏

桃井ミュージアムHPより 丸皿

「こちらのミュージアムは、雲火焼作家でオーナーの桃井 香子さんが2011年にオープンしました。
私共は元々は造園業を営んでまして、父の長棟 州彦氏が造園の資材を置く為に山を拓くと、ぬばっとした粘土っぽい土が出てきたんです。
知人から江戸時代にあった雲火焼の土では?と教えられ、それまで知らなかった雲火焼を調べると赤穂にしかない珍しい焼き物で、技術が途絶え今は幻とされていると分かりました。
それなら一生かけて復元できたら楽しいのではと、ドラム缶の窯を改造しながら実験してましたね。

この建物は桃井製網株式会社の保養所だったんです。
父と桃井さんの出会いは、桃井さんが主宰していた桃井製鋼の陶芸クラブの発表会に見学に行った時でした。
父が自分が粘土を掘った事やドラム缶窯で雲火焼の復元に挑戦している事などを話すと、桃井さんは社交辞令で『良かったらまた見せてくださいね』と言い、父は思いついたら即行動の人なんで翌朝には自分が復元した焼き物を見せに行ったそうです。
桃井さんはびっくりしつつも復元途中の雲火焼を見て、『また良かったら陶芸クラブに遊びに来て』と言ったそうで、父も陶芸クラブに参加するようになりました。
父は陶芸クラブの人達に、せっかく赤穂の土があるのだから雲火焼を復元しようと提言していたら、メンバーは1人辞め、2人辞め…最終的に残ったのは2人だけだったそうです。

父は発明をするのが好きで賞を取った事もありますが、その時々で熱中するアイデアが変わる人でもあって。でも雲火焼はずっと続いていますね」と懐かしそうな少し苦笑いのような口調で復元へのきっかけを教えてくれました。

トゥクトゥクで観光:赤穂市の新たな魅力が若者とカップルに人気

桃井ミュージアムインスタグラムより 2台並んだトゥクトゥクが可愛い

「コロナ禍前は年配の方が中心で、年配のご夫婦やカップルが陶芸体験に来られる事が多かったのですが、最近は『きらきら坂』がSNSで物凄く反響があったり、縁結びで若い人が来られるようになりました。カップルにも来やすい施設作りを考えています」

そこで長棟さんのアイデア、トゥクトゥクの登場です!
「赤穂御崎をトゥクトゥクで回ってます。EVのミニトゥクトゥクは貸出もできますよ。見た目が可愛いと人気です」と嬉しそうに話してくれました。

年配の方から若いカップル、親子連れも楽しめるようにと、ミュージアム内のテラスにあるクジラのモニュメントなどは、ほぼ全て手作りだそうです。
「どの年代が来ても楽しめます!わんちゃんも抱っこできる大きさならOKですし、大きなわんちゃんはテラスなら一緒に過ごせます。わんちゃんへの焼き芋の無料サービスも行っていますよ」

「恋人の聖地」が繋いだ縁結びの松で様々な縁が深まるように

桃井ミュージアム インスタグラムより

テラスには、ハートの形をした植樹桝に植えられた「縁結びの松」があります。
幹が輪っかになっている珍しい松は、長棟さんが岡山県瀬戸内市牛窓町にある神社前の雑木林で見つけ、持ち主に何度も頼み込み譲られたもの。
ミュージアムのある赤穂御崎と牛窓町は共に「恋人の聖地」という共通点もありました。 

「コロナ禍の時期だったのもあって、人と人との縁が深まるようにと願って移植させてもらいました。

海が見える所で、輪がフレームになるように人物が入って撮るのがオススメです。
スマホスタンドも置いてますし、海が入って綺麗に撮れますよ。
カップル・夫婦・犬と飼い主…様々な縁が深まるように。縁で繋がってる世界ですからね」と感慨深げに話してくれました。

もう1つの伝統的工芸品、赤穂緞通

桃井ミュージアム インスタグラムより

赤穂市には雲火焼だけでなく、赤穂緞通(だんつう)が「兵庫県伝統的工芸品」に指定されています。
緞通とは敷物の一種で、その中でも手織りのものを指します。 

「緞通も江戸時代後期のものです。技術者は少なくなりましたが、講習会を経て工房を開く人が現れるなど緞通作家が少しずつ増えてきたのを受けて、2017~2018年頃にミュージアム内に緞通のアンテナショップを開設し、今年になって雲火焼の窯元と緞通工房マップを作ろうという要望を市にも提出しました。

緞通は半年から1年かけて作ります。細かい作業が続くので、好きでないと無理でしょうね。
その分、出来上がったものは素晴らしいです。雲火焼と共に緞通も時代が変わっても伝えたい」と長棟さん。

最後に

桃井ミュージアム インスタグラムより 抹茶のセット
桃井ミュージアム インスタグラムより 館内のカフェでは雲火焼の器でソフトクリームが食べられます
桃井ミュージアム インスタグラムより 可愛いきのこ型のポットは中にクラムチャウダーが入っています

ミュージアムでは雲火焼と赤穂緞通を実際に目にすることはもちろん、陶芸体験やお茶席体験(不定期開催)ができたり、カフェで喫茶や軽食がとれたり、テラスには足湯やハンモック、ブランコがあります。

長棟さんは「カフェでは雲火焼の器でドリンクが飲めますし、特にお抹茶は京都美好園の『慈光』というお抹茶を使っていて、雲火焼の茶碗で点てるとクリーミーで口当たりがまろやかになります。
釉薬をかけた焼き物とは泡立ちが違うように思いますので、ぜひ体験してください。

海沿いに桜が植えてあり、桜が満開になる時季は後ろが海なので絶景で別世界にいるように感じます。
見所・景色の良い所が多いので、日常から離れてのんびりしてほしいです。そして、天気が良ければトゥクトゥクに乗ってもらえれば」と締めてくれました。

『雲火焼ミュージアム 桃井ミュージアム』は芸術の秋だけでなく、年間を通じてどんな年代でもグループでも楽しめる施設でした。

雲火焼展示館 桃井ミュージアムのインスタグラムは【こちら

雲火焼展示館 桃井ミュージアムのHPは【こちら

雲火焼展示館 桃井ミュージアム

〒678-0215 兵庫県赤穂市御崎634
TEL:0791-56-9933
開館時間:9:00~最終入館16:00
休館日:火曜日(祝祭日の場合は翌日)
入館料:500円(館内での飲食や物品購入に使用できる金券の購入となる)

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この記事を書いた人

犬山 涼

名前:犬山 涼 (犬が書いてます) 四国のへそ在住ライター。探究心のままに幅広いジャンルで執筆、四国の「知る人ぞ知る」ならお任せあれ! まだまだ知られていない「人・事・物」をお届けします。 珈琲豆の自家焙煎・販売も行っています。ご購入は各種SNSまで。     ↓「記事一覧」を押していただくと、各種SNSのリンクあります♪ ↓

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