国道沿いにあるので、通りかかると少し気になってしまう「九手(くて)神社」。
ひっそりと佇む、朱塗りの瑞垣に囲まれた本殿が美しく、四季折々の姿をみせます。
規模は大きくありませんが、見どころの多い「九手神社」の魅力をお伝えします。
九手神社の御由緒
九手神社の祭神は、大山咋命(おやまくいのみこと)。
この神様は、日吉神社や松尾大社の祭神であり、山の地主神で農耕や治水を司ります。
この辺りは、山も多く農家さんも多いので、大昔から見守ってくださっていたのでしょう。
九手神社の社殿ができたのは平安時代。地頭・藤原定氏が京都の松尾大社より勧請したのがはじまりと伝わっています。
そして、長元2年(1029年)9月21日に社殿が造営。造営の際に墨で栗材に書かれた棟札は現存しており、重要文化財に指定されています。
この社殿は明応7年(1498年)3月3日に再建されますが、さらに昭和9年に解体修理を行い、平安時代の姿に蘇りました。建築様式は三間社流造(さんけんしゃながれづくり)、屋根は檜皮葺(ひわだぶき)です。
平安時代の姿をとどめる社殿は、朱塗りの美しい瑞垣のなかにひっそりと佇んでいます。
そのほかに伝わる記録は、天正10年(1582年)8月17日に、松尾大社の神輿を受納したこと。
また、安政4年(1857年)に、御室御所(仁和寺)より「九手神社大明神」の鳥居額を受納し、菊御紋章付き釣提灯1対の寄付を受けたことがわかっています。
九手神社は、明治6年(1873年)に村社に列せられ、昭和25年に国の重要文化財に指定されました。
九手神社境内のみどころ
九手神社の境内には、美しい社殿のほかにもみどころがあります。
摂社
ご本殿の横に摂社が2社あります。何の神様が祀られているのかは書かれておらず不明でした。
江戸時代の手水舎
本殿へとのぼる階段の向かって右手には、石造りの手水舎があります。
消えかかっている文字をよく見ると、「正徳五年丑年 正月吉日」とあります。正徳5年(1715年)、江戸時代のものなのですね。
寄付者の名前が刻まれた玉垣
境内にある玉垣(石の柵)には、「金三十円 桧山 山下信太郎」というように、すべてに金額と地名、名前が刻まれています。
寄付額が大きいほど石の大きさが大きくなっているようです。
いつのものかは分かりませんが、昭和9年の解体修理の際のものではないかと勝手に推測しております。
アラカシの巨木
鳥居の横にあるアラカシの巨木は、平成16年に京都の自然200選に選ばれ、平成22年には京丹波町指定天然記念物に指定されました。
幹の周囲4.2m、木の高さ15m、樹齢500〜800年といわれる巨木です。
毎年10月は九手神社の例大祭
九手神社では毎年10月に例大祭が行われます。かつては17日でしたが、近年では前後の日曜日に行うとか。
本殿の扉がひらき、神饌が運ばれ、御神輿がおめみえし、年によっては獅子舞の奉納や神輿巡行があります。
かつては毎年7社の神輿が集合したと伝えられています。
鳥居野という地名
九手神社から国道を挟んだ地域を「鳥居野」といいます。
現在の国道沿いにみえる鳥居は、平成18年に建てられたものですが、以前は旧街道の山陰道から参道が続いており、神社の南約4町(約436m)の場所に、一の鳥居がありました。
そのため鳥居野というのですね。
ちなみに、鳥居野には「丹波ワイン」という有名なワイナリーがあり、ぶどう畑が広がっています。「鳥居野ワイン」という銘柄もありますよ。
九手神社・四季折々の魅力
平安時代後期、権中納言大江匡房がこの地を訪れた際に九手神社に参拝し、付近の風景を賞して「たころにそ色は見えけり朝日影 匂へる梅は 紅の里」と詠んだそう。
九手神社には四季折々の姿があり、どの季節もとても美しいのです。ちょっと想像してみてください。
春は、境内の横に大きな花が枝をしならせる牡丹桜が咲きます。ほかの桜よりも遅い時期に咲くため、花見の余韻を感じさせます。
夏。緑に覆われた境内は周囲に比べてとても涼しく、セミの大合唱に包まれます。そこかしこに見られるセミのぬけがらが、夏を感じさせ、子どもが夢中になって探す姿が風物詩です。
秋には紅葉。大きな紅葉にひかれ、車を停めて見に来る方もいるほど。紅葉が散ったあとも赤いじゅうたんが広がり、境内を彩ります。
冬の雪の日は、朱塗りの瑞垣が雪の白に映え、際立ちます。雪化粧した狛犬や鳥居も風情があり、いつもと違う雰囲気に思わず息をのんでしまいますよ。
まとめ|九手神社で自然に包まれる
田舎の国道沿いにひっそりと佇む九手神社ですが、平安時代の姿をとどめる社殿や、名前が刻まれた玉垣、巨大なアラカシなど見どころも多く、巨大な木々に包まれて気持ちも安らかになる場所です。
お近くに立ち寄った際には、ぜひお参りしてみてくださいね。
九手神社の情報
住所: 京都府船井郡京丹波町豊田九手125