静岡県袋井市にある秋葉総本殿「可睡斎」。春は牡丹や百合、秋は紅葉など四季折々の景観が楽しめ「花の寺」とも呼ばれる可睡斎ですが、1月〜3月末までひなまつりを開催しています。32段にものぼる大迫力のひな人形や、この時期限定の「特別ひな御膳」の魅力をお伝えします。
秋葉総本殿 可睡斎(かすいさい)
可睡斎は応永8年(1401年)如仲天誾(じょちゅうてんぎん)禅師が山号を「萬松山(ばんしょうざん)」、寺号を「東陽軒」として開山した曹洞宗屈指の名刹です。
明治6年、秋葉総本殿三尺坊大権現様の御真躰が御遷座され「秋葉総本殿」となりました。
秋葉三尺坊大権現は天狗の姿をした火防(ひぶせ)の仏様であり、秋葉総本殿は火防霊場として全国津々浦々から尊崇されています。
可睡斎の由来は居眠り和尚
右側:教育している仙麟等膳和尚様と竹千代 左側:居眠りする仙麟等膳和尚様と家康公
東陽軒だった寺号ですが、なぜ可睡斎という名前になったのでしょうか?
地元民には「お可睡」の名で親しまれている可睡斎ですが、名前の由来は徳川家康公にゆかりがあります。
家康公は三河に生まれ、幼少期には静岡市の賤機山(しずはたやま)の麓にある臨済寺というお寺で今川家の人質となっていました。(当時の名前は竹千代)
東陽軒11代目の住職、仙麟等膳和尚様は小僧時代に、人質になっている竹千代の教育を何度か受け持っており、竹千代が臨済寺から逃げ出すのを手助けしたといわれています。
その後、徳川家康公は1570年に浜松城主となり、人質時代のご縁から仙麟等膳和尚様を城に招きました。
浜松城までの道のりは長く、長時間駕籠にゆられていた和尚様は謁見する際には疲れてしまい、なんと家康公との面談中に居眠りをしてしまいました。
「殿様の前で居眠りなど無礼である!」と怒る家臣たちに家康公が発した言葉があります。
「和尚、我を見ること愛児の如し。故に安心して睡る。我その親密の情を喜ぶ。和尚睡る可し 睡る可し(ねむるべし)」
これをきっかけに仙麟等膳和尚様は「可睡和尚」すなわち、殿様の前で寝ることの許された和尚と呼ばれるようになり、いつしかお寺の名前も「可睡」と呼ばれるようになったそうです。
可睡斎は和尚様の居眠りからついた名前なんですね。
可睡斎では全国でも珍しい「眠りのお守り」が販売されています。
なかなか寝付けない!眠りが浅い!という人におすすめです!
大迫力!32段約1200体の大ひな壇
登録有形文化財に指定された瑞龍閣の大広間に並ぶ32段、約1200体のひな人形。高さは約3.5メートル、幅約9メートルの大ひな壇は国内最大級です。
可睡斎のひなまつりは県内外からも観光客が訪れ、多い年には6万人もの来訪があります。
今年で10年目になる可睡斎のひなまつりですが、毎年僧侶の方たちが2週間ほどかけ、市観光協会のボランティアの方々とともに作り上げているそうです。
足場を作り、緋毛氈(赤い布)をひき、最上段の屛風を飾ります。その後、一体一体丁寧にひな人形やお飾りを並べていきます。
途中で御祈祷が入り、何度も中断するため、完成まで2週間ほどかかるそうです。
大ひな壇には、僧侶の方たち手作りの法多山の厄除け団子のお飾りもあります。
厄除開運で知られる法多山の厄除け団子は、東海地区では有名で知っている人はクスっと笑ってしまうかもしれません。
大ひな壇以外にも、館内には所狭しとひな人形が並べられ、モダンなデザインや、珍しいひな人形など一つとして同じものはありません。
なかには感染症の早期終息を祈念してアマビエ雛も飾られています。
飾られているひな人形は、どれも素敵なすまし顔。ぜひ、ゆっくり館内をまわってみてください。
いにしえのひなまつり~源氏物語とひな遊び~
可睡斎のひなまつりには、毎年テーマがあり2024年は「いにしえのひなまつり」。
館内には十二単を着た源氏の姫君という、珍しいひな人形が飾られています。
今年は京都みやこめっせの貝桶・貝合わせ展も開催されています。その他にも、京風こまづくり体験や貝合わせ絵付け体験なども催しています。
各種体験、イベントは開催日時が指定されているため、公式ホームページをご確認ください。
可睡斎ひなまつりの始まりとは
なぜ可睡斎では、ひなまつりが開催されるようになったのでしょうか。
ひなまつりは、桃の花や雛あられなどをお供えし、女の子のすこやかな成長を願うものです。
元々、紙や藁で作った人形(ひとかた)に、自分の病気や災いをうつし、海や川に流すお払いの行事があり、現代のひなまつりに変化していったといわれています。
そのため、女の子が元気に育つとひな人形は役目を終えます。
可睡斎では人形供養をおこなっており、役目を終えたひな人形を納める人も多く、その中には綺麗なひな人形もたくさんあり「このままお焚き上げしてしまうのはもったいない」という思いからひなまつりが始まりました。
髪が乱れていたらブラシで整え、一つ一つ丁寧に手入れをし、供養したひな人形に新たな命を吹き込みます。
月末と3月3日には僧侶の方全員が集まって、お経を読みながら館内を回り、人形供養をしています。
ひな人形の供養は14時からはじまり、拝観の時間とかぶれば一緒にご焼香できるので、ぜひ時間を合わせて拝観してみてください。
可睡斎手作り!僧侶仕様のひな人形
供養したひな人形の髪を丁寧にとり、僧侶仕様になった可睡斎オリジナル雛が飾られています。
可睡斎職員の方が法衣を手縫いで作り、飾付の小物は僧侶の方たちが創意工夫して作ったそうです。
御祈祷している様子をひな人形で表現しており、ここでしか見られない御祈祷ひな人形をぜひご覧ください!
日本を代表する可睡斎典座(料理長)が作る「特別ひな御膳」
可睡斎では精進料理界の重鎮である、小金山泰玄和尚の作る精進料理が食べられ、ひなまつりの時期限定で「特別ひな御膳」が登場しています。※要予約
ひなまつりということでちらし寿司になっていました!箸袋の裏には五観の偈(ごかんのげ)が書かれています。
五観の偈は、禅宗において食事の前に唱えられる食事訓ですので、みなさんもいただく前に唱えてみましょう。
役目を終えた人形に新たな命を吹き込む可睡斎ひなまつり
可睡斎のひなまつりでは、人形供養で納められたひな人形が新たな命を吹き込まれ、みなさんをお待ちしています。
32段の大ひな壇は写真に収めたくても収まりきらないほど、迫力満点です!
大ひな壇以外にも、展示や体験イベントが催されているので、ぜひ足を運んでみてください。
可睡斎
〒437-0061 静岡県袋井市久能2915-1 電話番号 0538-42-2121(代)
■東海道本線ご利用の場合
袋井駅下車。北口①番のりばから遠州森町行きまたは気多行きに乗車し「可睡斎入口」下車(バスで12分)
バスの時刻表は秋葉バスサービスのホームページ「http://www.akihabus.co.jp/」をご覧ください
■新幹線ご利用の場合
掛川駅又は浜松駅にて下車、東海道本線に乗り換えて袋井駅下車。(掛川駅よりタクシー20分)(浜松駅よりタクシー40分)
■高速道路ご利用の場合
「東名高速道路 袋井IC」より車で5分(道路案内図あり) 「新東名高速道路 森掛川IC」より車で15分※富士山静岡空港より車で40分