Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地方創生メディア

スポット  |    2024.08.10

全国でも珍しい120年以上続く私設図書館はこのまちのシンボル|江北図書館(こほくとしょかん)

桜が満開の江北図書館

滋賀県長浜市木之本町にある江北図書館(こほくとしょかん)は明治40(1907)年に財団法人江北図書館として開館しました。現存する私設図書館は珍しく、さらに地域で守り続けている私設図書館は他に類を見ません。

今回は、約120年間もの長きにわたり地域の人々が守り続けてきた江北図書館の魅力を、江北図書館11代目理事長・岩根卓弘さんのお話とともに詳しく紹介します。

江北図書館はさまざまな出会いが見つかるところ

江北図書館がどのようなところかは、下記のYouTube動画を見ていただくとよく理解できます。

江北図書館の魅力は、大きく分けると下記の5つです。

  • 本と出会える
  • 過去と出会い直せる
  • レトロな空間を楽しめる
  • 人とひとが交われる
  • 情報が集まる

もう少し具体的に紹介します。

本と出会えば新たな気付きも得られる

読書会の様子(画像出典:Facebook)

江北図書館は地域の図書館としての役割を担うだけでなく、読書会やお話会、古本市も開催され、イベントの際には多くの人で賑わっています。

読書会は読み聞かせをしたり、同じ本を読んだ人が集まって感想や意見を共有し合ったりする場です。他の人の感想を聞くことで新たな気付きも得られます。

ひとはこ古本市『いろはににほん箱』(画像出典:Facebook)

ひとはこ古本市『いろはにほん箱』は、江北図書館の駐車場を活用して不定期に開催されています。約30店舗の出店者がずらりと並び、ミニコンサートなども開催。本との出会いだけでなく、人や音楽との新たな出会いにも期待できます。

ひとはこ古本市でのミニコンサート風景(画像出典:Facebook)

2023年4月9日(日)に開催された『いろはににほん箱』では、200名近くの来場者がありました。参加者は心地よい音楽に耳を傾け、楽しいひとときを過ごしたとのこと。

過去と出会い直せば地元が好きになる

江北図書館内には貴重な蔵書がたくさん保存されている

江北図書館には、約11,600点もの『貴重資料』と呼ばれる歴史資料や図書資料があります。その約8割が江戸時代から昭和初期に出版された『図書資料』、残りの2割が地域の歴史について記載された『歴史資料』とのこと。

「他の図書館には決して置いていないような貴重な資料ばかりです。とくに滋賀県湖北地方の歴史については、どこよりも詳しく学べます。地域のことを知ると、今よりももっと地元が好きになるのではないでしょうか」

岩根さんが説明してくれました。実際に古い本棚を眺めたところ、現長浜市だけでなく、隣の米原市の資料も多くありました。

レトロな空間を楽しむ

1階には貴重な『すりガラス』が施されたサッシ

江北図書館として利用している建物は、昭和12年に郡農会の庁舎として建設されたものです。旧郡農会は特徴のある洋風建築であり、町の大切なシンボル的存在です。建物自体の価値が認められ、2024年3月には登録有形文化財として登録されました。

動画内でも紹介されていましたが、今ではほとんど見られなくなったすりガラスも当時のままで使用されています。

廊下や階段もレトロな空間を演出し、昭和初期にタイムスリップしたかのような気分を味わえるでしょう。

昭和初期から使用されている机や看板、本棚は見るだけでもワクワクする

その他にも、昔の雑誌や懐かしい広告などを見ることができます。これらはすべて、地域の人たちが守ってきたものばかり。図書館ではなく、博物館なのではないかと勘違いしてしまうかもしれません。

江北図書館には、ここでしか体感できないワクワクが盛りだくさんです。

Lib+の建設で人とひとが交わる場所へ

2024年3月にオープンした『Lib+』の外観

江北図書館ではクラウドファンディングを利用し、新たに『Lib+』を建設。2024年3月31日にオープンしました。

『Lib+』は滋賀県のソウルフードとして有名な『サラダパン』を製造販売する『つるや』がカフェ(つるやCafe)を経営し、カフェ以外の場所はオープンスペースになっています。フリーWi-Fiも完備され、読書や仕事などで利用できます。

『Lib+』に集まる人々の中から新たな出会いが生まれ、さらに新たな創造が生まれます。

カフェでの出会い

Lib+の中にある『つるやCafe』のスタッフ藤田さん(左)と福田さん(右)

『つるやCafe』ではパンだけでなく、コーヒーやシフォンケーキ、革や麻などを使用した小物製品などを販売しています。販売スタッフの手作り商品もあり、生産者と直接の対話も可能です。

江北図書館では、その他にも地域の歴史に詳しい人やとにかく本が好きな人など、興味深い人たちが集まってきます。新しい出会いが期待できる場所です。

山田美津子原画展を開催

絵本作家の山田美津子さんと『パンやのポポさん』

『Lib+』では、長浜市在住の絵本作家である山田美津子さんの原画展が開催されていました。山田美津子さんはつるやのパンを題材にした絵本『パン屋のポポさん』を執筆した、江北図書館ともゆかりのある作家です。

『Lib+』の入口前では、『パン屋のポポさん』のキャラクターと一緒に写真撮影もできます。

スペース内に展示されていた『パンやのポポさん』の原画

『パン屋のポポさん』の物語の中に出てくるパンは『おうちパン』として商品化され、『つるやCafe』で限定販売されています。ほかの店舗では購入できないため、江北図書館まで足を運んでみてはいかがでしょうか。

「じつは『おうちパン』のモデルになっているのは、江北図書館の丸い窓です。よく見るとパンのように見えてきませんか?」

『おうちパン』のモデルになった江北図書館のレトロな窓

岩根さんに指摘され江北図書館の外から窓を見てみると、4つの窓が焼きたてパンに見えてきます。

絵本作家の山田美津子さんは江北図書館のイベントに顔を出すことも多く、アンテナを張って情報を得ていれば、直接会うチャンスがあるかもしれません。幸運にも筆者は『Lib+』で開催されたサイン会に参加できました。

江北図書館にはたくさんの情報があつまる

音楽の本棚ではプロの音楽家も参加(画像出典:Facebook)

江北図書館には理事会のほかに「大好きな江北図書館を存続させたい」というメンバーによって生まれた『江北図書館ファンクラブ fun』もあります。

「『音楽の本棚』や『いろはににほん箱』、セレモニーの際にはプロの音楽家を招いてライブを行ってもらいましたが、私はそういうジャンルに疎くて。毎回『こんな素敵な人がいるよ』と、ファンクラブの会員さんが見つけてきてくれます」

岩根さん自身が理事長に就任してから、今までは知り得なかった多くの情報を得て世界が広がったと言います。

本好きやレトロな空間好きにおすすめの江北図書館

江北図書館の窓から見える桜(画像出典:Facebook)

江北図書館は下記のような方にはおすすめの場所です。

  • とにかく本が好き
  • レトロな空間に癒されたい

『Lib+』を含む館内にはフリーWi-Fiが完備されているため、どこでもインターネットに接続できます。カフェや図書館内もコワーキングスペースとして利用可能。しかも、フリースペースの利用は無料です。

江北図書館の創設者である杉野文彌氏は、122年前に苦学の末に弁護士になりました。当時は書籍がかなり貴重なもので、簡単に購入できなかったそうです。そのときに図書館の便利さを知り、地元の子どもたちのために私財を投資して建設したのが江北図書館でした。

物が豊かになった現代では、そのありがたさを理解するのは困難なことでしょう。しかし、その時代がなければ、現在の生活はあり得ません。我々にできることは、レトロな建物の中で古い書物を見て、当時のことに想いを馳せることくらいです。

120年以上もの長きにわたり、地域の人々が守り続けてきたことに深く感謝します。

江北図書館へのアクセス

江北図書館へのアクセスは、下記のとおりです。

  • 公共交通機関:JR北陸線木ノ本駅下車 東口徒歩1分
  • 自家用車:北陸自動車道 木之本IC降車すぐ 国道8号線を東へ2分

詳細情報

江北図書館の基本情報は下記のとおりです。

  • 開館時間:10:00~16:00
  • 休館日:毎週火曜日、水曜日 年末・年始(12月29日~1月4日)
  • 駐車場:15台(無料)

詳細やイベント情報は、下記の公式サイトまたはSNSをご確認ください。

記事をシェアする

この記事を書いた人

のがわ

滋賀県担当のアラフィフライター「のがわ」です。地元の滋賀県や隣県の福井県に関する情報をお届けします。趣味の剣道は練士七段ですが、試合は中学生にも負けるレベルです。色々な地域に出稽古に行き、出会った方々の物語や観光情報などを記事にします。

関連記事