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スポット  |    2024.08.17

「熱意」を切手にして「志」という未来への手紙を届けるカフェ「みらいきって」社長 高桑宣子さん|大阪府茨木市

大阪府茨木市のほぼ中心地にある「茨木神社」から、京阪神に住む人たちの足となっている阪急電鉄の「茨木市駅」西口の間に、地元民に愛されている「阪急本通商店街」があります。商店街の西側、神社寄りにある「みらいきって」は、子どもを連れた親子が多く訪れるカフェです。

2022年10月にオープンした「みらいきって」は、「家族もキャリアも諦めない」を掲げた託児付きコワーキングカフェ。子どもが楽しそうに遊ぶ声や、その中でパソコンを広げて仕事をしている人もいる、まるで大家族になったような気分を感じるこの店は、どんな経緯で作られたのでしょうか。社長の高桑宣子さんに話を伺いました。

自身の体験をきっかけに描いた未来図

筆者が高桑さんに出会ったのは2021年ごろで、きっかけは茨木商工会議所が主催していた「オンライン交流会」です。当時、交流会の司会をしていた筆者は、参加者のひとりだった高桑さんの態度に目を止めました。ビジネスの交流会でありながら、自分のPRはあまりせず、おとなしい印象を抱くほどでした。

当時の話を聞くと高桑さんは「交流会に参加したことがあまりなく、もし嫌な感じの会だったら、電波が悪くなったことにして、退出しようと思っていました(笑)」と振り返ります。

人見知りで大人しそうに見える高桑さんには、内に秘めた熱い想いがありました。

「私自身がフリーランスとして働き始めた時、子どもは1歳、3歳、5歳でした。なんとか働く時間を捻出しようと思い、子どもを一時預かりに預けにいくと、その往復だけで1時間かかったりします。となると、働く時間はそれだけ減ってしまうんです(高桑さん)」

高桑さんは、小さな子どもを抱えながら働くことの難しさを、実体験を通じて痛感されていたのです。

「だから、ママがキャリアを諦めずに子育てをしながら働ける場所があればいいなと、思い描いていたんです(高桑さん)」

そんな思いを形にしようと、高桑さんは「みらいきって」のオープンに向けて動き出します。

オープンできたのは「熱意」があったから

いざカフェをオープンしようと思っても、現実はそんなに甘くありません。資金も必要ですし、好立地の物件も探さなければなりません。子育て・仕事をしながら、店のオープンに向けて動くのは、相当大変だったんじゃないでしょうか。

「何かを達成するには、脇目もふらず一心不乱にならないといけない時期があると思うんです。オープン前は、まさにそんな状態でした(高桑さん)」

融資を得る方法を知らなくて、会う人会う人、誰にでも聞いていたそうです。時にはビジネスをしたことがない主婦にまで聞くほど。物件も何件も見て回り、何度も内覧を経て、今の物件に辿りついたそうです。

「諦めずに熱意を込めて人に会っていると、良縁に巡り合えることがあるんだなと感じました(高桑さん)」

融資は、高桑さんの想いに賛同する財務コンサルタントと出会い、彼の助けもあって無事に金融機関から下りることになりました。資金と物件に目途がつき、いよいよ「みらいきって」はオープンします。

オープン当初は火の車

なんとかお店はオープンしたものの、最初の数か月は赤字続きだったそうです。

「あとから必要なものに気づいて購入したり、計画に人件費を想定していなかったり、当初、想定していなかった出費がかさんで、大赤字続きでした(笑)。今だから笑えるんですけどね(高桑さん)」

カフェの赤字で、みるみる減る資金。その赤字を埋めるため、本業の広報の仕事を増やし、早朝・深夜と働き詰め。そんな日々を、高桑さんは毎日歯を食いしばって、なんとか乗り切ろうとします。

「店を開いたことで、周りからは『成功者』のように言われましたが、内情は大変でした。そのギャップも、当時のストレスのひとつでしたね(高桑さん)」

ついには突発性難聴にまでなってしまい、いつ店を閉めようか、いつまでこの大変さが続くのかと、気持ちの滅入る日々を過ごしていた高桑さん。大けがをすれば、強制的に仕事を辞められるとまで考えるに至ります。

どん底で感じた本当のスタート

「このどん底の状態から立て直すことができたら、そのストーリーを語ることで、今後、食べていけるんじゃないかって火が付いたんです(高桑さん)」

開き直った高桑さんは、それまで減るばかりで目を背けていた会社の財務と向き合うようになります。融資を手伝ってくれたコンサルを顧問に招き入れ、積極的にアドバイスを乞うようにしたのです。結果、冷静に物事を見れるようになり、少しずつ業績も上向いていったそうです。

「財務も人に見せるようになり、恥ずかしいと思う事は何もないって思うようになりました。そんな話を以前から親交のあった経営者に話したら、仕事の紹介までしてもらえたんです(高桑さん)」

そこからは仕事も増え、今では雇用するスタッフも増えています。社会保険労務士の支援も受けながら、経営者として日々、深い学びを得ているとのことです。

「みらいきって」の未来

元々「家族もキャリアも諦めない」を掲げ、「子どもと一緒に働こう」をコンセプトにした「みらいきって」は今後どうなっていくのでしょうか。

「『みらいきって』には『ママコワーク』という仕組みがあります。これは、企業などから頂いた仕事を、私たちがチームで請け負い、責任を持って業務を行うというサービスです。『みらいきって』にはスキルの高い人たちがいるので、お客様からとてもよろこばれています(高桑さん)」

高桑さんが考えていた「子どもと一緒に働こう」というコンセプトは、既に実現しているように思えるのですが、彼女はさらに先の未来を見ています。

「次はスクール事業を考えています。『みらいきって』が提供する質の高い内容で、しっかりと学んでいただいた人たちに、今度は『ママコワーク』で働いてもらう。もしフリーランスで働くことになっても、それを応援できる、そんな環境を作っていこうと考えています(高桑さん)」

子育てを理由に、キャリアが断絶してしまう女性も少なくないでしょう。もし、子育てをしながらキャリアを継続できたら、そんな環境があったら…高桑さんの「志」は、とどまることを知りません。

「私がモデルケースを作ることができたら、真似する人もでてくると思うんです。そうなれば、多くのママが子育てをしながら働ける環境が増えると思っています(高桑さん)」

これからも、高桑さんは「志」が書かれた未来へのはがきに「熱量」という切手を貼って、多くの人に届けていくことでしょう。

みらいきって情報

店名:みらいきって
住所:大阪府茨木市元町6-2
営業時間:8:30~18:00(カフェ)、5:00~22:00(コワーキング)
定休日:土日祝(カフェ)、なし(コワーキング)
HP:https://ibaraki.mirai-kitte.co.jp/

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この記事を書いた人

にのまえはじめ

大阪府茨木市在住の複業ライター。システムエンジニア/プログラマー、速読教室の運営、パーソナルトレーナー、IT企業の経営などを並行しながら、ライターとしても活動。得意ジャンルはマンガ・アニメ・ゲームなどのサブカルチャー(80年代中心)、IT関連のSEO記事、インタビュー記事。趣味はプロレス観戦。

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