横浜市中区本牧に古くからある「三溪園」。
園内には国の重要文化財に指定される古建築が、自然と調和するよう巧みに配置されています。
三溪園は、都会的側面の多い横浜市内で、日本ならではの歴史的建築や四季折々の自然をゆっくりと堪能できる観光スポットです。
今回は、夏に期間限定で開催される「観蓮会」を通して、横浜三溪園の魅力をお伝えします。
三溪園とは
三溪園は、実業家・原三溪によって創られた横浜市本牧にある日本庭園です。
1906年(明治39年)5月1日に「美しいものはみんなで一緒に楽しむもの」という原三溪の思いを受けて、一般公開されました。
約17.5ヘクタールもの広い園内には京都や鎌倉などから移築された17棟の歴史的建造物が配置され、季節の移り変わりで表情を変える庭園とともに日本の歴史や風情を楽しめます。
日本の歴史的建築と自然との調和が高く評価され、2007年(平成19年)には国の名勝、園内の古建築10棟が重要文化財・3棟が横浜市指定有形文化財に指定されました。
観蓮会とは
観蓮会(かんれんかい)は、蓮の開花時期に合わせて開催される三溪園の期間限定の催しです。
2024年は7月20日(土)から8月12日(月)の金・土・日・祝日の12日間にわたり開催されました。
「蓮を見て、触れて、楽しむ」をコンセプトに、蓮の観賞だけでなく、蓮に触れて楽しむ体験コーナーや観蓮会限定の朝食メニューを堪能できます。
観蓮会では、蓮の開花見頃に合わせて通常の開園時間より2時間早い7時から入園できるため、蓮を眺めながら神聖な朝時間を過ごせる特別な機会です。
蓮の見頃について
蓮の年間を通した開花時期は7月中旬から8月中旬頃で、蓮の開花後の見頃は開花してから2日目がもっとも色鮮やかで美しいとされています。
また、蓮が開花し始めるのは明け方で、朝の7時から9時頃がちょうど見頃です。
三溪園の方にお話を伺ったところ、蓮は9時以降次第につぼみになって閉じるか・散ってしまいますが、開花して3日目以降の花は日中も開いたままの状態のため、早朝以外の昼間でも蓮を楽しめるそうです。
開花して4日目以降の蓮は、花の下の方から徐々に白くなり散っていきます。
私が三溪園に伺った際は3日目から4日目の蓮が多い印象でしたが、花弁がピンクから白へのグラデーションになっており、とてもきれいでした。
体験型イベント|蓮の葉シャワー
蓮の葉シャワーは、蓮の葉脈を伝って水が吹き出る仕組みで、観蓮会期間中の朝7時から8時半までは実際に間近で蓮の葉シャワーを見学できます。
蓮の葉の中央部分には蓮が呼吸するための弁があって、そこからミストが出るそうです。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、まるで自然のミストシャワーです。
蓮の葉シャワー以外にも三溪園のボランティアさんサポートのもと、蓮の葉を使ったお面づくりや蓮の糸取り体験などのコーナーもあり、小さなお子さんも一緒に観蓮会を楽しまれていました。
観蓮会限定の朝食メニュー
観蓮会では、毎年朝の開園時間に合わせて3種類の朝食メニューを提供しています。
- 三溪園茶寮「朝がゆ」1,500円(100食限定)
- 雁ヶ音茶屋「中華がゆ」1,200円
- 待春軒「夏の朝ごはん」1,600円(50食限定)
三溪園の職員さんからの「売り切れてしまう可能性が高いので、蓮を観る前に朝食を食べに行った方がいいですよ」との勧めで、7時の開園早々、蓮池を横目に三溪園茶寮へ向かいました。
三溪園茶寮に到着したのは7時10分頃でしたが、8割方の座席が埋まっており朝食目的に来園される方が多いというのは本当のようです。
また、夏場ということもあり、注文の際に温かいお粥か・冷たいお粥かを選べるのが嬉しいですね。
せっかくなので外の景色が見える場所を選びました。
外気温は30度でしたが、外の座席でも日陰で風が通るのであまり暑さを感じませんでした。
注文後に番号札を受け取って、10分程度で朝がゆの定食がテーブルに到着。
見た目はボリュームたっぷりですが、どれも味付けが濃すぎず薄すぎずさっぱりしているので、いつの間にかぺろり。
三溪園の大池や新緑を眺めながら食べる朝がゆは、1日の始まりを清々しい気持ちにさせてくれますね。
ちなみに、三溪園の職員さんのひそかなおすすめは、待春軒の夏の朝ごはんについている「梅ゼリー」だそうです。
三溪園で採れた梅を使用し、梅の味が濃厚なのにさっぱり食べられて夏の朝にぴったりだとか。
待春軒は、蓮池や大池から少し奥まった場所にある隠れ家的なお食事処です。
来年の観蓮会は、ぜひ待春軒の朝ごはんを食べてみたいですね。
蓮を守るイベント|ザリガニ釣り
観蓮会が終わった後、2024年8月17日(土)、18日(日)に三溪園の蓮池でザリガニ釣りのイベントが開催されました。
実はこのイベント、ザリガニから蓮を守るために開催されたものです。
三溪園の職員さんによると、ザリガニが蓮の葉や茎を食べてしまい、蓮の生育に影響を及ぼしてしまうそうです。
三溪園では他にも、サギがザリガニを見つけて食べてくれるように蓮池の水位を下げるなど対策しているそうですが、外来種で繁殖力の高いザリガニを減らすのは中々難しいとのこと。
来園者にザリガニ釣りを楽しんでもらうのと合わせて、蓮池の生育環境を守るため、この体験イベントが開催されたのです。
毎年三溪園できれいな蓮を観られる裏側に、日頃から庭園を守る職員さんやボランティアさんの隠れた苦労や創意工夫が感じられますね。
2024年9月開催予定のイベント|観月会
観月会は、中秋の名月が美しい秋の夜に音楽とお月見を楽しむイベントです。
2024年は3年ぶりの開催となり、9月14日から18日までの期間限定で、21時まで演奏会やライトアップされた古建築、庭園の散策を楽しめます。
期間中は日替わりで、三溪園の代表的な建築物である臨春閣を舞台に、雅楽・筝曲・サックスとピアノ・薩摩琵琶・篠笛の演奏会が開かれます。
秋の幻想的な庭園で、少し日常を離れて日本の風情を味わってみるのもいいですね。
三溪園で、古建築と四季折々の自然を感じて
三溪園の魅力は、やはり古建築と四季折々の自然との美しい調和です。
今回紹介した夏の蓮だけでなく、年間を通して梅・桜・藤・菖蒲・紅葉など多くの花々や自然を園内で楽しめます。
また、横浜市街地から程近い立地でありながら、自然豊かな環境のなか、ゆったりとした時間を堪能できます。
三溪園の職員さんによれば、「夏は横浜市街地と比べて、体感温度が5度ほど違います」とのこと。
確かに木陰や食事処の外の席でも、風が気持ちよく横浜市街地と比べて暑さを感じにくかったように思います。
まだ残暑の厳しい季節、コンクリートや高層ビルの並ぶ都会の喧騒から離れて、緑あふれる三溪園でゆっくりと涼を感じてみてはいかがでしょうか。
三溪園(さんけいえん)
住所:〒231-0824 神奈川県横浜市中区本牧三之谷58-1
電話:045-621-0635
公式HP:https://www.sankeien.or.jp
入園料:大人 900円 / 小中学生 200円
横浜市内在住の65歳以上 700円(公的証明書の提示が必要)
開園時間:9:00~17:00(最終入園 16:30)
※観蓮会開催日は7:00開園 ※観月会開催日は21:00閉園(最終入園 20:30)
駐車場:あり(台数に限りあり、駐車料金別途)
アクセス:JR根岸線根岸駅から市営バスで10分「本牧」下車、徒歩10分
横浜市東口から市営バスで40分「三溪園入口」下車、徒歩5分