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スポット  |    2025.01.05

御所宝湯がつなぐ次の100年。奈良県御所市にある唯一の銭湯は癒しの場

御所宝湯ロビーと男湯女湯の入り口

「銭湯の魅力、再発見してみませんか?」

日本の銭湯文化は時として忘れられがちですが、御所宝湯はその魅力を再確認させてくれます。奈良県御所市にあるこの銭湯は、地域の歴史と人々の想いが詰まった温かい場所です。

人口減少や経営者の高齢化に伴い、一度は途絶えた銭湯の灯は、地域の想いと銭湯を愛する人たちによって令和の時代へ受け継がれました。

この記事では、御所宝湯の魅力についてご紹介します。

御所宝湯のこだわりとサウナ

まちづくりプロジェクトにより銭湯を復活させる上で、内装や設備、レイアウトや動線にまでこだわった銭湯は、タイルや天井など創業当時のレトロな風合いは残しつつ、1つだった浴槽を2つに分けて熱湯(43℃)とぬる湯(41℃)へと改装した。

御所宝湯女湯のあつ湯とぬる湯
壁には銭湯ペンキ絵師の田中みずき氏によって、御所に馴染みのある金剛山と葛城山の山並みが描かれている

浴場には、小さな子どもと一緒に入る親子連れのことを考え、カランの種類を男女湯で変えたり、案内表示を分かりやすく掲示したり、風呂桶や椅子に至っては、設置する位置まで何度も試行錯誤したという徹底ぶり。

御所宝湯フィンランド式サウナとセルフロウリュ
こだわりのフィンランド式サウナには、銭湯には珍しくセルフロウリュも楽しめる

なかでも、サウナの設置にはこだわったそうで、本格的なフィンランド式サウナが楽しめるスペースを増築した。ドライサウナのように高温低湿とは違い、温度が低めで湿度が高いフィンランド式サウナを取り入れ、サウナ好きにはたまらないセルフロウリュも体験できる。

御所宝湯男湯の水風呂と、ととのいスペース
外気浴ができる「ととのいスペース」には、サウナ上がりにすぐ飛び込める水風呂も完備

またサウナ後には、すぐ飛び込める水風呂が備え付けられており、外気浴も楽しめる「ととのいスペース」は、男湯からは星空が、女湯ではすだれ越しに玉砂利を敷き詰めた庭を見ることができる。

御所宝湯の魅力と若き番頭の想い

「こんばんは、急に寒くなりましたね。今日はお風呂の温度を0.3℃上げてるんですよ」

「地元で作ってる良いシャンプーが入ってます。使って下さいね」

御所宝湯ロビーと番頭の太田さん

実は先日、初めて御所宝湯を訪れた際、満面の笑みで話しかけてきた番頭の太田さんに、私は良い意味で期待を裏切られた。

スーパー銭湯にはよく行くが、銭湯との違いがよく分かっていなかった私は、銭湯の在り方に触れたからだ。そして子どもの頃、母方の祖父に連れられて行った銭湯を思い出した。

風呂は熱くてそんなに好きではなかったが、風呂上りに飲めるコーヒー牛乳が目当てだった。

番頭台に座る店主らしき人にお金を渡し、よく分からない会話や笑い声がロビーや脱衣場に響いていた。湯船には腕を組んで無言で浸かる人がいたり、演歌を口ずさむおじさんの姿ぐらいしか思い出にはないが、それが銭湯だった。

風呂上がりのコーヒー牛乳

温泉は特別な機会に限定されがちで、スーパー銭湯は日常的な利用は可能だが、どこか他人行儀で水くさい印象を拭えない。

しかし、銭湯は違う。

そこには旅情を感じさせる一方、自分の家のお風呂のような心地よさが漂っている。まるで、毎日が小さな旅のような非日常的な感覚にさせてくれるのも、銭湯の魅力の1つかもしれない。

もう1つのお風呂

そんな思い出話を口にすると、太田さんはニヤッと笑って話し始めた。

何気ない会話やあいさつの中に、相手を思いやる気持ちや人がとても好きで「この銭湯にくる人全てを幸せにしたい」という想いを、真っ直ぐに語る楽しそうな太田さんを見て、私はその意味を少し理解することができた。

太田さんたち従業員のみなさんが、温かいお湯になって一人ひとりに声かけしているロビーは、風呂上がりのお客さまをほっこりと温かい気持ちにさせる、もう1つのお風呂になっている。

『懐の深さ』に込められた意味

オープンから3年目を迎えた御所宝湯には、日々、たくさんの人が訪れ一日の疲れを癒す。

お風呂に入るのは勿論、サウナが目的の人もいる。入り方も違えば銭湯を利用する理由も様々だ。風呂上がりの一杯のビールを楽しみに、銭湯を利用する人がいるのも、また御所宝湯なのである。

御所宝湯脱衣場 創業当時のタイルや天井は大正ロマンを感じさせてくれる
脱衣場のタイルや天井は、大正5年創業当時の面影を今に残す

最後に、太田さんに御所宝湯の魅力を聞くと、迷いなく答えてくれた。

「懐の深さ」

「来てくれるすべてのお客さまを幸せにしたい」と力強く語るその言葉には、分け隔てなく、来るものを拒まない、寛大で大らかな「懐の深さ」が、にじみ出ていた。

御所宝湯と次の100年

近年、日本の銭湯軒数は年々減少し、その速度を速めている。

そんな中、次の100年に向けた御所宝湯とまちづくりプロジェクトは始まったばかりである。

あなたも、銭湯という非日常の世界に癒されてみてはいかがでしょうか?

今宵も、番頭の太田さんは御所宝湯のお湯を沸かし続けている。

御所宝湯

住所 〒639-2216 奈良県御所市御国通り二丁目361−5
電話 0745-49-0854
営業時間 平⽇ 14:00〜22:00 ⼟⽇祝 11:00〜22:00(定休日:第2・第4水曜日)

料金
⼤⼈(12歳以上) 480円
中⼈(6歳以上12歳未満) 200円
⼩⼈(6歳未満) 100円
サウナ料⾦ 370円 ※貸しタオル有料

関連リンク

GOSE SENTO HOTEL公式HP
御所宝湯instagram

アクセス

電車でお越しの方

  • JR和歌⼭線「御所駅」より徒歩約5分
  • 近鉄御所線「近鉄御所駅」より徒歩約5分

お⾞でお越しの⽅

  • 京奈和⾃動⾞道「御所IC」より⻄へ約5分
  • 専⽤駐⾞場あり(数に限りがあります)

画像提供 株式会社御所まちづくり/御所宝湯

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この記事を書いた人

Noriみて!

奈良県在住のフリーランスライター。 ドキュメンタリーと歴史と野球とお笑い好き。 創造性あふれる自称個性派。 独自の視点と感性で、「見て、食べて、体験した」地元ならではの魅力を発見し、『オンリーワン・ナンバーワン』の記事をお届けします!

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