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スポット  |    2025.01.08

時の流れに身を任せてつかんだ幸せ。日本版リペアカフェ「いちじく」の人間再生力

皆さんは「リペアカフェ」という言葉を聞いたことがありますか?壊れたものをすぐに捨てるのではなく、直して使う、リペアするというカフェです。

今回ご紹介するのは埼玉県比企郡川島町にある「リペアカフェいちじく」です。

オーナーの大島有美子さん(2024年現在57歳)は30代後半の時、自宅リフォームをきっかけに、建具職人の見習いになりました。

「小さい時から、つくる(作る、創る、造る)ことが何より好きでした」と語る大島さんが建具職人という、根気と集中力、手先の器用さが必要とされる仕事に惹かれたのは必然だったのでしょう。

ママはある日、職人になった!

40代前半は、来る日も来る日も現場や工場で仕事していたそうです。当時、小学生だったお子様たちは「ママが職人になった!と驚いてました」と大島さんは昔を懐かしむように言いました。

そして親方の工房で働きながら、いつしか大島さんは自分の工房を持ちたいと思うようになりました。

いよいよ独立、念願の工房を手に入れた

そして「自分の仕事も取れるようになってきたのを機に」埼玉県ときがわ町に念願の工房を持ちました。

今もその工房はあるのですが、この時、後に「いちじく」となる土地とはすでに出会っていたのです。

そこは神社の隣にある調整区域の土地。当初は更地で魅力を感じなかったものの、後に運命的なものを感じ、購入を決意します。

職人腕の見せ所、ハーフビルドに挑戦

この土地を購入した大島さんは、図面を書く段階から知人の設計士と話し合い、半分は自分で建築することにチャレンジします。

その時すでに、天井を高くし、ワンルームとして使えるように構想したそうです。ここはリペアしたもの、その他のショールームにするつもりだったからだそうです。

それが今、家具などのリペアだけでなく、ワークショップやストレッチ教室などとして、幅広く使われていくことにつながりました。

そうです。「いちじく」はリペアもしますが、人の心の再生、つまり「やってみたかったけど出来なかったこと」を持った人が集まる場所になっていったのです。

訪れる人々は、大島さんとの会話を通して悩みを打ち明けたり、アドバイスをもらったりするうちに、「いちじく」は人の心も癒すようになり、拠り所としての役割も果たすようになっていきました。

「私なりにアドバイスなんて、そんなおこがましいことではないんですけど、これってこうじゃない?ああじゃない?って私が言うと、涙を流す方もいらっしゃるんですね。あの時、本当に有美子さんにこう言われて、今、こういう風になって本当によかった。後からそう言ってくださったり」

ストレッチ教室のほかにも様々なワークショップを開催し「いちじく」ならやってみたいことが叶う、そんな場所へと変化していきました。

そして予約制のランチがとても魅力的です↑丁寧に作られ、美しい小鉢に乗せられた御膳。

そしてこの炊き立てご飯はぜひ動画でご覧ください。

また、薪ストーブの魅力に惹かれ、埼玉県の代理店として販売業もおこなっています。「いちじく」が、このストーブのショールームです。当初の人生設計とは変わったものとなりましたが、大島さんはとても満足しています。

「私は一度も営業ってものをしたことがないんです。ストーブも偶然、問い合わせたら販売店になりませんか?と。お客様もほとんどが口コミで皆さんがリピーターになってくださり、ランチの後は2~3時間おしゃべり、なんてこともあるんですよ」

誰にも教えたくない「心のオアシス」

常連のお客様から、よくこう言われるようです。「ここは心のオアシス」と。そのため、一人でやってくる方も多いそうです。

モノよりも人の心を再生することがメインとなってきた「オアシス」としての「いちじく」。

職人として家具などをリペアしていこうと大志を抱いた40代を越え、時の流れに身を任せ、周囲との偶然に導かれ、今はさまざまな人があつまるコミュニティとしての側面も持つようになりました。

「いちじく」に集まった人々の化学反応が、ますます大島さんを輝かせていくでしょう。

※お料理の提供は不定期のため、ご予約をお願い致します。

〒350-0133 埼玉県比企郡川島町表55-1 TEL:090-1818-1641


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この記事を書いた人

栗秋 美穂

はじめまして「多様な学びと生き方」をさまざまな視点から伝えるライタ―栗秋美穂です。 東京在住ですが、いろんな場所の記事を書きます。 映画記事も書いてます。 得意分野はイベントレポ、人物インタビュー、エッセイ。 2024年は毎日農業記録賞を始め、3つのエッセイで賞を頂きました。 趣味は草木染。小5男児の母です。

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