地方創生メディア  Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地方創生メディア

もの・こと  |    2025.07.03

自然に触れるきっかけにしてもらいたい|滋賀県長浜市『苔のムスムス』

「たとえば外に出かけたときに『あ、これ苔ちゃうん?』って気づいてくれるきっかけになれば……と。そこから何かに発展するのを期待しているわけではありません。ただ単に植物や自然に触れるきっかけの一つになれば面白いと思っています」

そう語るのは、苔テラリウム作家の山田さん。お子さん向けのワークショップを開催することが多い山田さんは、参加したお子さんの保護者から「ここのワークショップは価値があるわ」と言われたこともあるとか。

滋賀県長浜市在住の山田さんは、老人介護施設の調理師として勤務する傍ら、休日に『苔のムスムス』として苔テラリウムのワークショップを開催したりマルシェに出店したりしています。

苔テラリウムの素晴らしさについて語る山田さん

苔の素晴らしさを伝えたいという思いだけでなく、自然に興味を持ち感謝できるような人を少しでも増やしたいそうです。今回はそんな山田さんに、苔テラリウムを始めたきっかけや苔テラリウムの魅力について伺いました。

小さな自然を見ているだけで、疲れた心も癒されます。誰でも簡単に始められる苔テラリウム。あなたも始めてみませんか?

その辺の草が一番スキ

山田さんが制作した苔テラリウム

『苔のムスムス』のインスタグラムの一文が目に留まりました。

「滋賀県長浜市で苔テラリウムを作っています。苔玉、苔盆栽、寄せ植えなど。でも、その辺の草が一番スキ」

この一文からもわかるように、山田さんは苔だけでなく植物全般に興味を持っているようです。

「年齢的なこともあるのかもしれませんが、たとえばオオイヌノフグリとかカラスノエンドウとか、雑草といわれるものも可愛いと思えてきました。足元を見るようになり、『あ、苔もある』と思ったのが苔に興味を持ったきっかけです」

まだ苔テラリウムの存在を知らない頃、ビロードの短い密になっている苔を見つけると、カエルのフィギュアを置いて写真撮影を楽しんだとのこと。苔に興味を持ってからは、苔にもさまざまな種類があることを知ります。

苔の勉強のため隔週で東京へ

数種類の苔を使用した苔テラリウム

現在、日本で代表的な苔のクリエイターは4人いらっしゃるとのこと。山田さんは、そのなかの一人に指導を受けようと考え、思い切ってクリエイターコースに申し込んだと言います。

「オンライン講座もあったのですが、画面越しだとイメージできないこともありますよね。自分一人で取り組んでいても、良いのか悪いのか判断もできませんし。ほかの人の作品も見たかったのもあったので、2ヶ月間ですが隔週で東京へ通いました」

その後、大阪のクリエイターさんのお世話になり、大阪で開催されるワークショップに参加したり、阪急百貨店のイベントで一緒に作品を販売したりしているとのこと。

「自然を小さなところに閉じ込めることには葛藤もありましたが、緑を身近に感じる一つの手段だと思っています。苔テラリウムは仰々しくなく、きれいな状態で食卓やオフィスに置いておけるのでおすすめです」

現在は地元で会社員をしながら、地域のイベントやワークショップで苔テラリウムの魅力を伝える活動をされています。

子ども向けに始めたワークショップが今では……

小学生の参加者は大人の思いつかないようなアイデアを形にする

近年、休日にはさまざまなところでイベントやマルシェが開催されるようになりました。一方で、女性が楽しめるイベントが多いのに対し、子供や男性が楽しめるイベントが少ないと感じていたと言います。

「出店している作家さんも女性の方が多くて、わざわざ休日に参加したのにすぐに退屈してしまっているお子さんを見て、何かできないかと思ってワークショップをはじめました」

山田さんが開催する苔テラリウムのワークショップは料金も1,000円からとなっており、親子で気軽に参加できるのが特徴です。

自然に触れ合うきっかけや自然の良さを知ってもらうきっかけにしてほしいと山田さんは語ってくれました。そんな子ども向けに始めたワークショップですが、最近は大人の参加者も増えています。

ありそうでなかった「大人が集中する時間」

そこには所狭しと小さな自然がありました

近年は誰もがスマホを持つ時代となり、集中できる時間が短くなってきているといわれています。また、加齢により集中力がなくなってきたと感じている方も多いのではないでしょうか。そのようななか、苔テラリウムのワークショップでは多くの人が1~2時間もの集中力を発揮します。

「たった1時間や2時間ですが、何かに集中するというのはなかなかありません。制作に取り掛かりはじめると、皆さんすごく集中されます。その時間は何にも代えがたい時間です。これもまた苔テラリウムの魅力ではないでしょうか」

ワークショップの参加者は、苔テラリウムを作ることに夢中になります。なぜなら、余計なことを考える余裕がなくなるからです。限られた時間で小さなところに石やフィギュア、苔の最善のレイアウトを考え、何度も何度もやり直すことになります。

何かに夢中になることで気分転換にもなり、日ごろは体験できない貴重な時間を過ごせることは間違いありません。

リアルな田舎の風景を表現したい

ときには苔以外の植物も使用して田舎の風景を表現

「私はものづくりに対して、『なるべく自然の情景をここに』と考えています。田舎育ちなので、田舎の景色をそのまま表現するのが得意……と言いたいところですが、一時は悩んだこともありました」

山田さんはどのようなことに悩んでいたのでしょうか。

実際に苔テラリウムを作るようになってから、苔や自然により興味を持ち始めたという山田さん。山に入って苔を見たときの感動は、制作しているときよりも大きいと言います。

「この苔が自生しているところに初めて出合えた」
「この子とこの子一緒にいる、仲良しなんや……」

そのようなことを考えたとき、小さな容器にわざわざ入れなくてもいいと思えてきたそうです。心の葛藤は続きましたが、山田さんは自然に触れるきっかけ作りとして最適だと気づきました。なぜなら、苔はほかの植物よりも手入れが簡単だからです。

苔の手入れは思ったよりも簡単

イメージどおりの苔テラリウムを作るのは難しいかもしれませんが、納得のできた作品の状態を長く維持するのも難しそうです。そこで、山田さんに苔の手入れ方法について伺いました。

苔は放置しておけば少しずつ増え、種類によっては上に伸びるものもあります。気がつけばジャングルのような状態になってしまうかもしれません。

「もし、モサモサの状態が気に入らないのなら、抜くか切るかすればいいだけです。ですので、苔の手入れは難しくありませんよ。生長も遅いですし、観葉植物のようにシーズンごとに鉢を植え替えたり、こまめに水やりをしたりという必要もないので、本当に簡単です」

水やりについては、週に1回程度の霧吹きで問題ないとのこと。ただし、注意しなければならないのは、水やりのしすぎです。また、苔は寒さには強いのですが暑さには弱いため、夏期の直射日光は避けた方がよいとのこと。

『苔のムスムス』詳細情報

ワークショップ料金
  • 小サイズ:1,000円~
  • 大サイズ:2,000円~
  • フィギュア各種:300円~
出店情報

ワークショップやマルシェの出店情報などはインスタグラムをご覧ください。

記事をシェアする

この記事を書いた人

のがわ

滋賀県担当のアラフィフライター「のがわ」です。地元の滋賀県や隣県の福井県に関する情報をお届けします。趣味の剣道は練士七段ですが、試合は中学生にも負けるレベルです。色々な地域に出稽古に行き、出会った方々の物語や観光情報などを記事にします。

関連記事