2025年3月某日。
関東では春の気配がやわらかく漂いはじめたころ、まだまだ冬の名残が色濃く残る新潟の地に足を運びました。

実は、今回初めて新潟県に足を踏み入れた筆者。
そんな私を温かく迎えてくださったのは、新潟大学の地域活動プログラム「ダブルホーム」の広報部(以下、新大DH広報部)の皆さんです。

ダブルホームとは、正解のない地域課題に対して学生・教員・職員がチーム一丸になって取り組む、新潟大学独自のプログラムのことです。
新潟大学が17年に渡って取り組んでおり、近年は400名近い学生が18の地域に分かれて活動しています。
「ダブルホーム」については【後編】で詳しく紹介します!
今回は18の活動地域の中から、新大DH広報部の皆さんの活動地域である「栃尾」と「阿賀町」を訪問。
2日間に渡って、それぞれの町を徹底的に取材してきました。
取材先の選定から当日のアテンドまで、新大DH広報部の皆さんに協力いただき実施できた取材です。
自然、グルメ、歴史、人の温かさ……さまざまな魅力に溢れる「栃尾」と「阿賀町」の姿をたっぷり紹介します。
【1日目】栃尾

1日目は、長岡市の栃尾地域を訪れました。
栃尾は新潟県のほぼ中央に位置するエリアです。
日本二百名山にも数えられる越後の名峰守門岳がある自然溢れる町で、多くの登山愛好家から愛されています。また、豊かな清流に育まれて発展してきた水の町としても知られています(参照元:栃尾観光協会公式サイト)
栃尾の魅力を新大DH広報部の長澤さんと、新大DHの活動でいつもお世話になっているという栃尾観光協会事務局次長(2025年3月時点)の島和久さん(以下、栃尾観光協会の島さん)に紹介いただきました。
あぶらげ(油揚げ)

栃尾に来たからには、これを食べなければ始まらないということで、栃尾名物の「あぶらげ」をいただきました。
栃尾では「油揚げ」から”あ”を1文字抜いた「あぶらげ」という名称で親しまれています。
栃尾にはあぶらげのお店が15店舗存在しますが、今回は「佐野豆腐店」と「星長豆腐店」の2店舗に伺いました。
佐野豆腐店

佐野豆腐店はメディアにも多く取り上げられている人気店で、店内には有名人のサインが多く飾られています。
また、お店は一部ガラス張りになっており、外からあぶらげを揚げている様子を見られます。

午前中に訪れると揚げたてのあぶらげをいただけると聞いていたので、取材当日も午前中に訪問しました。
ふわふわに揚がったあぶらげを食べやすいサイズにカットしてもらい、醤油をかけていただきます!

大きく膨らんだ様子からは想像できないほど“軽い”食感でした。
佐野豆腐店のあぶらげは、最初に140度の油で15分ほど揚げて、その後に180度の油でもう一度揚げています。
外側がパリッと、中身がふわっとした食感を作り出す秘訣は“二度揚げ”にあるのだとか。
星長豆腐店

次に訪れたのが星長豆腐店です。
目の前の駐車場は一台空いたら、すぐにもう一台入ってしまうほどの人気店で、その多くが地元ナンバーの車。
観光客だけでなく地元の方からも愛されている豆腐店だと伺えます。
店内はあぶらげだけでなくプリンや味噌も販売しており、ラインナップを見ているだけで心が躍ります。

星長豆腐店では、ねぎあり・なしの2種類をいただきました。
こちらにも醤油をかけていただきます。

最初に伺った佐野豆腐店さんのあぶらげに比べて厚みがあり、中身がぎっしり詰まった“重め”なあぶらげ。
あぶらげは単品で食べても美味しいですが、味噌汁に入れるのはもちろん、煮付けにしたり、納豆をかけたりするのもおすすめです。
どこのあぶらげ店に入るか悩んでしまう方のために、栃尾観光協会公式サイトではあぶらげ店マップが公開されています。

あぶらげ店マップを元に各店舗まわって食べ比べしてみるのも楽しそうですね。
常安寺

次に訪れたのは常安寺です。
栃尾は戦国時代を代表する武将の一人「上杉謙信公」が旗揚げをした地としても知られています。

常安寺は天文16年(1547年)に創建された古刹です。
本堂は昭和54年に再建されており、中には「謙信公筆五言対句」や「上杉謙信並二臣像」などの文化財が保存されています。
上杉謙信公は14〜19歳まで栃尾で過ごしたと言われているため「この道を上杉謙信公も歩いたのだろうか……」と思いを馳せながら町を歩くのも楽しいです。
秋葉公園

常安寺の奥にある長い階段を上ると見えてくるのが秋葉公園です。
秋葉公園内にある秋葉神社は、上杉謙信公が“上杉”の名をもらう前に過ごしたとされている場所です。また、秋葉公園内では年に一度、秋葉の火祭りが開催されています。

秋葉の火祭りとは、火災を防ぐ、火伏せ(ひぶせ)の神「秋葉三尺坊大権現」のお祭りです。
遺徳をたたえ、秋葉三尺坊大権現の命日である7月24日に開催されます。
秋葉神社奥の院

同公園内には弘化3年(1846年)に落慶した秋葉神社奥の院があります。
秋葉神社奥の院は、石川雲蝶と小林源太郎によって8年をかけて彫り上げられており、この彫刻を見に訪れる観光客も多いのだとか。
謙信公銅像

秋葉公園内で一際目立っているのが謙信公銅像です。
銅像の大きさ、険しい顔で鎮座している様子……その存在感に思わず圧倒されてしまいます。

銅像の表面に書かれている「謙信公」という文字。
この文字は新潟県出身の元内閣総理大臣、田中角栄氏によって書かれています。
現地に訪れた際は、その筆跡にも是非注目してみてください。
長岡市栃尾美術館

秋葉公園を出て少し歩いた先にあるのが長岡市栃尾美術館です。
旧栃尾市制40周年を記念して建てられた美術館で、こちらにも上杉謙信公の像があります。
また、美術館の奥には上杉謙信公のお墓「謙信廟」も建てられています。
高台に建てられた長岡市栃尾美術館は、実は栃尾で有数の絶景スポットでもあります。

晴れている日を狙えば、ここからの景色は圧巻!
山や川、雁木造りのお家まで、栃尾の全てを見渡せます。
松生輪業

次のスポットに向かって歩いている道中、松生輪業の松生さんに声をかけていただきました。
新大DH広報部の長澤さんと親しいようで、仲良くお話する姿が印象的でした。
松生輪業は名前の通り、バイクや自転車を扱うお店です。
冬には店の前にメンテナンス待ちの除雪機が10台以上連なるのだとか……!
まさに栃尾の人の生活を支える産業の一つと言えるでしょう。
道の駅R290とちお

10分ほど車を走らせて向かった先は、道の駅R290とちおです。
お土産や食事を楽しめる道の駅で、地元の人からも観光客からも親しまれています。

栃尾銘菓の一つ「丸鯛」は、中にあんこが入ったお菓子です。
祝い事の引き出物として栃尾で長年愛され続けています。

かつて繊維産業が盛んだった栃尾では、クズ繭の糸や機織りの残糸を利用した「てまり作り」が盛んに行われており、現在も伝統と技が受け継がれています。
栃尾てまりの中には七種類の縁起の良い木の実が入っており、揺らしてみるとカラカラと心地よい音を奏でてくれます。

一見、温かいラーメンに見えますが、実は氷が入っている「冷やしラーメン」も栃尾名物の一つです。冷やし中華のようなイメージをしていましたが、今まで味わったことがない不思議なラーメンでした。子供が食べられるように冷たくしたことから、冷やしラーメンが生まれたのだとか(諸説あり)。
また、施設外には栃尾のマンホールもあります。
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「あぶらげんしん」が描かれたマンホールカードも配布されているので、道の駅R290とちおに足を運んだ際は是非ゲットしてみてください。
イタリア食堂amico

ランチに伺ったのは、栃尾で人気のイタリア食堂amicoです。
ランチの時間帯は駐車場が満車で、地元の人から愛されている人気店であることが伺えます。

ピザもパスタも種類が多くて迷いましたが、新大DH広報部の皆さんがおすすめメニューを教えてくださいました。
【ピザ】極上ビスマルク、プロシュート、ゴルゴンゾーラ・ミエーレ、蒲原牛のPIZZA
【パスタ】蒲原牛ミートソース、スモークサーモン・いくらの親子クリーム
おすすめを元に、いくつか注文してみました。



パスタの麺もピザの生地もモチモチ!
人気店であることが頷けるクオリティの高さで、一瞬で完食してしまいました。
「とちおフォンデュ」のような栃尾ならではのメニューの取り扱いがあるのは、観光客にとっては嬉しいポイントです。
雁木通り

最後に訪れたのは雁木通りです。
豪雪の地である栃尾では、雁木造りのお家が多く残っており、雁木の総延長はおよそ4.3kmと言われています。

豪雪地帯の栃尾では、2階の高さまで雪が積もるのだとか。
雪に覆われた時の明かり取りのために、上部はガラス造りになっています。
雪国を生き抜いてきた栃尾の方達の知恵が感じられる通りでした。
【2日目】阿賀町

2日目は、東蒲原郡阿賀町を訪れました。
阿賀町は新潟県北部、下越地方の東蒲原郡にある町です。
2005年に津川町・鹿瀬町・三川村・上川村の4町村が新設合併して発足した町で、町名の由来は地域を流れる阿賀野川から名付けられています(参照元:Wikipedia)
阿賀町の魅力は、新大DH広報部の籾山さん、番場さんに紹介いただきました。
阿賀町役場

阿賀町に関する詳しい歴史・情報について、阿賀町役場まちづくり観光課の加藤和重さん、波田野和明さんにお話を伺いました。
つがわ狐の嫁入り行列

阿賀町と言えば「つがわ狐の嫁入り行列」。
そう表現しても過言ではないほど、阿賀町内・外から注目を集める有名な行事です。
阿賀町の有名な山「麒麟山」は、夜になると狐火が灯るという噂があり、その様子を見た人々に「山にあかりが灯るのは、狐が嫁入りをしているからだ」と言い伝えられたことから、つがわ狐の嫁入り行列が始まりました。

つがわ狐の嫁入り行列は平成2年から開催しており、2025年度で33回目の開催になります。
毎年、昼のイベント・夜の行列を合わせて3万人ほどの観客が集まるのだとか!
参加人数に限りはあるものの、応募すれば誰でも参加可能です(先着順)。
狐に扮したメイクと衣装で参列できるので、非日常感が味わえます。


行列の先頭を歩く「狐のお嫁」役は毎年オーディションで決めており、全国から応募が集まるのだとか。

狐のお嫁役は当日に決まるようですが「白無垢を着た狐の姿で歩いてみたい!」と思った方は、一度応募してみてはいかがでしょうか。
阿賀町の観光

山、田んぼ、川……とにかく見渡す限り「自然」で溢れている阿賀町。
もちろん、町を歩いているだけで自然に触れることができますが、阿賀町のハーバルパークは多種多様なお花を楽しめる阿賀町の人気スポットの一つです。
季節によって見られるお花が異なるため、各季節ごとに訪れるのも楽しそうですね。

また、阿賀町は川が多いのも特徴です。
阿賀野にある大きな川「阿賀町川」では、毎年9月頭にレガッタ大会が行われていたり、サップ体験会が催されたりなど、川のアクティビティを楽しめます。

阿賀町の名物

また、自然の多い阿賀町では山菜が名物の一つに挙げられます。
阿賀町内には10ヘクタールほどのわらび園があり、春のシーズンになると多くの方が山菜取りに訪れます。

雪の多い阿賀町は、わらびがゆっくり成熟するのに絶好の環境なのだとか。
採れたての山菜は絶品ですよ。
狐の嫁入り屋敷

次に訪れたのは狐の嫁入り屋敷です。
こちらの施設では、つがわ狐の嫁入り行列の映像体験や、狐面の絵づけなどの体験ができます。
今回の訪問では、狐面の絵づけを体験しました。



施設にはお土産も多く並んでいます。
1番人気のお土産は何かスタッフの方に尋ねてみたところ、こちらの置物だとおっしゃっていました。

新婚の友人へのお土産に喜ばれそうですね。
その他にも狐のお面や、狐のイラストが描かれたお菓子など、多種多様な品揃えでした。
また、施設内にはつがわ狐の嫁入り行列の写真も多く展示されています。

見ているだけで、つがわ狐の嫁入り行列の世界観に没入できます。
つがわ狐の嫁入り行列の映像体験と併せて見た後は、きっと誰もが「いつか実際の行事に参加してみたい……」という気持ちが高まるはず。
施設外には「狐の嫁入り」という石像も飾られており、まさに狐づくし!

この石像は佐藤賢太郎さんによって作られた作品です。
なんと佐藤賢太郎さんは、阿賀町出身の芸術家なのだとか。
丸いフォルムの狐たちがなんとも愛くるしいですね。
裏五頭山荘

最後に訪れたのは、阿賀町中ノ沢集落にある裏五頭山荘です。
こちらの施設は、食事処が隣接した宿泊施設ですが、今回はランチ利用で足を運びました。
川床のお部屋での食事と伺っていたので訪れる前から期待値が高かったのですが、席について窓からの景色を眺めてみたところ、期待を超える絶景が広がっていました。

当日はあいにくの天気だったため写真写りが悪いのですが、目の前に川が流れており青龍の音色がなんとも心地よいです。
こんな絶景の中で食べる料理は最高なんだろうな……と胸を躍らせていたところ、頼んでいたコースが届きました。

川魚の天ぷらやお刺身、山菜を使った料理が揃っているおまかせコースです。
店主さんのご厚意で出してくださったメニューもありますが、とにかくボリュームたっぷりで、どれから手をつけるか迷ってしまうほど。
阿賀町の自然の恵みを、こんなに贅沢な料理で楽しめるのは嬉しいですね。
他にもおすすめのメニューをいくつか注文しました。

塩の加減がちょうどよく、フワフワとした身で絶品でした。
夏の時期の裏五頭山荘では釣り堀を楽しめて、釣り上げたお魚は実際にその場でいただくことも可能です。

阿賀町の名物だと聞いていた山菜を天ぷらとしていただきました。
山菜は独特の苦味やクセがあるものだと思っていましたが、こちらでいただいた山菜は優しい風味でとても美味しかったです。

土日限定で注文できる釜焼きピザも絶品!
トマトベースの薄生地ピザで、チーズがたっぷり乗っていてとても美味しかったです。
「阿賀町グルメを楽しみたい方は、裏五頭山荘に足を運べば間違いない」と言えるほど、全種類の名物を堪能できるお店でした。
絶品料理を沢山食べられるので、お腹を空かせて行くのをおすすめします。
おわりに

栃尾と阿賀町で巡った数々の場所、出会った人々、そしてその土地ならではの空気感……。
2日間の取材を通して感じた魅力のすべてを本記事に収めきれないことが悔やまれるほど、心に残る時間となりました。
何度でも足を運びたくなる、そんな想いを抱かせてくれる町。
今回の訪問が「特別な旅」になったのは、温かく迎えてくださった新大DH広報部の皆さん、そして栃尾と阿賀町の関係者の皆さまのおかげです。
改めてありがとうございました。
後編では、新潟大学ダブルホームについて詳しくご紹介します。
ぜひ、そちらも併せてご覧ください。