
2025年9月14日、千葉県印西市にある多々羅田公園で、今年で42回目となる「印西ニュータウン秋祭り」が開催されました。1984年から続くこのお祭りは、毎年大勢の人々が訪れています。お祭りと聞くと、昨今はイベント会社が委託を受けたり、行政や企業が主催したりという形が多いでしょう。しかし、この「印西ニュータウン秋祭り」は自治会・町内会など地域の人々の手で作られている、まさに昔からある“日本のお祭り”スタイルです。
このようなお祭りの開催は、決して簡単ではありません。そこには、主催者の強い思いや地域住民の協力があります。そこで今回、実行委員長の星野将輝さんにお話を伺いました。お祭りの歴史や課題、そして継続に向ける思いなどを、実際の様子と共にご紹介します。
地元で自然発生した“手作り”のお祭り

――「印西ニュータウン秋祭り」は、どのように始まったのでしょうか?
1984年、内野地区の町開きのタイミングで始まりました。まさに地元で自然発生したお祭りです。夏休み最後の思い出にと、8月末に土日2日間の夏祭りとして開催していました。最初は内野地区だけで始まり、やがて原山、高花に参加地域が広がっていきました。現在も7つの自治会・町内会・管理組合で構成された実行委員会によって運営しています。コロナ渦による2度の中止を経て開催した2022年からは、猛暑対策もあって秋の開催に変更しました。秋になって今年で4回目ですね。
――お祭りの特徴というと、どのような点が挙げられますか?
“すべてが手作り”という点でしょうか。専門の業者が入らず、企画から設営、運営まで自分たちの手で行っています。実行委員会のメンバーには建築や照明のプロもいますので、そうした方々の力によって開催できているんです。
他の地区では、業者によるイベント型のお祭りも開催されています。しかし、印西ニュータウン秋祭りは地元の方々のパフォーマンスもあり、演出の場として貴重な機会になっています。
今年の模擬店は実行委員会に所属する7団体のほか、近隣で活動するサークルが6件、さらに新たな取り組みとしてキッチンカー2台に来ていただきました。これまでは(原則として)プロの出店はなかったのですが、飲食物の販売を望む声が多かったので実験的に取り入れてみました。
――お祭りのスケジュールや来場者数などを教えてください
開催時間は13:00~19:30です。過去に2日間開催していた頃は、1日目が15:00~21:00、2日目が15:00~19:00でした。最後は打ち上げ花火でフィナーレでしたが、周辺の開発によって上げる場所がなくなってしまい、現在は行っていません。
来場者は、延べ5,000人程度ですね。(コロナ明けとなった)2022年開催の際は、規模を縮小して開催したのですが、過去にない来場数になりました。正直な話、コロナで2年開催できなかったため、「3年ぶりじゃあ来場者がゼロなのでは…」と危惧したくらいでした。いい意味で裏切られましたね。ただ、不測の事態が出ないよう運営側はハラハラでしたが…。 多くの方にご来場いただけた光景を見たとき、このお祭りのニーズをあらためて感じられ、関係者一同が「やっぱりやってよかった」と思ったところです。
子どもたちの笑顔のために続けていきたい

――お祭りの継続は大変だと思います。現在、どんな課題を抱えていますか?
とにかく核となる実行委員会のメンバーが毎年同じなんです。だからこそ安定した開催ができている面はありますが、新しい人が入ってこないことは大きな課題ですね。以前は実行委員会のメンバーだった戸神台地区や急速に開発が進む中央南エリアなどは来てくれる子どもたちが多いですが、運営側の大人が入っていません。我々の巻き込み方に問題があるのか、それとも場所なのか…原因はいろいろあると思います。参加するとなったら時間や労力はかかり大変ですが、自分たちの模擬店にも集中できるようしっかりサポートするので、是非とも参加してほしいと思っています。
資金面では、2023年の40回記念大会からクラウドファンディングを実施しています。しかし、最初は良かったものの、3年目の今年は寄付額が減っています。クラウドファンディングのやり方が分からないという声もあったので、今年からは寄付金箱を置いてみました。
運営費用についても、更なる検討が必要ですね。
――星野さんは、どのような思いでお祭りの運営に携わられているのでしょうか?
私は幼い頃から印西に住んでいます。2歳のとき、親世代が地域の子どもたちのために企画してくれて、このお祭りが始まりました。当時はまだ原っぱばかりで、周辺に娯楽がなかった頃のことです。
お祭りのように、人の集まれる場所が毎年あるのは地域にとって非常に良いことだと思っています。たとえ名前を知らなくても、顔を合わせたことのある人がお祭りを通じて増えてくれたら、それだけでも地域力は大きく向上します。
42年の間には、何度も「やめようか」という話がありました。当時の子どもも大人になり、親世代は高齢化しています。参加団体は、最盛期の17団体から半分以下になりました。
しかし、そのたびにやり方を工夫し、存続させることを選んできました。団体数が減ろうともゼロじゃない。今の子どもたちのためにも、お祭りを残すことが、子を持つ立場になった私たちのやるべきことではないかと思ったんです。
やめてしまうのは簡単ですが、一度消した火はもう戻せません。お祭り当日にたくさんの子どもたちの笑顔を見ていると、やめる選択肢なんてないですよ。 皆さんのご協力あっての開催ですが、これからも末永く継続できるように努力していきます。
昼から夜まで賑わう印西ニュータウン秋祭り

それでは、実際のお祭りの様子をご紹介しましょう。実は私自身、毎年こちらのお祭りには家族を連れて訪れています。賑やかなステージパフォーマンスに、行列のできる数々の出店。子どもはもちろん、大人だって気分が盛り上がります。
ちょうど会場に到着すると、藤代健吾市長がステージで話していました。すでにステージパフォーマンスが始まっている中だったこともあり、周囲を大勢の人々が囲んでいます。市長の「楽しみましょう!」の声掛けで、会場の熱量がさらに高まったようです。

ステージでは以下のように多様な催し物があり、開催中ずっと会場を盛り上げてくれます。その音は会場中に届き、近くにいなくてもバックミュージックとなって人々を楽しませてくれているようです。
▼催し物
- 千葉ニュータウン太極拳同好会
- 原山中学校吹奏楽部
- おやじバンド「ふるさとバンド」
- 子ども御輿パレード
- 印西ゆめ太鼓(和太鼓パフォーマンス)
- RED-HOT(HIP-HOPダンス)

広々とした公園の真ん中には櫓(やぐら)が設置され、その周辺にはテーブルが。そして、公園の端を囲うようにして多くの出店が並びます。立ったままだと食べ物を落としたり人にぶつかったりすることがあるので、落ち着いて飲食できるのは嬉しい配慮です。



飲食はお好み焼き、たこ焼き、焼き鳥、焼きそば、ポップコーン、ケバブなど。さらに、子どもが大好きな射的やくじ引きなどのゲームもありました。ものすごい行列ができているお店もあり、お祭りはまさに大盛況です。

やがて日が沈むと、櫓の提灯に明かりが点って違った雰囲気に。個人的には、こちらの方が「お祭りだ!」という感じなのですが、いかがでしょうか。日中も多くの来客がありましたが、時間が経つにつれて増えてきたようです。


やがて太鼓の音と共に、盆踊りが始まりました。年配者の方々が間に入って踊っており、それを見ながら一緒に踊る子どもたちの姿が微笑ましく感じます。「印西音頭」という地元の踊り…私も実はこのお祭りで初めて知りました。

広い公園を埋め尽くすほど多くの方々が集まった、「印西ニュータウン秋祭り」。美味しい食べ物に楽しいゲームやイベント、そして賑やかなステージパフォーマンスなど。1日中、会場はたくさんの笑顔で溢れていました。これこそ、星野さんたちがお祭りを続ける原動力なのでしょう。ぜひこれからも、地元に愛される文化行事として継続して欲しいと願うばかりです。
【公式X】印西ニュータウン秋祭り実行委員会



