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もの・こと  |    2024.08.31

遠州の作り手と出会える「かもえのあさいち」で食を選ぶ喜びを

出店者と直接話しながら商品を購入できる朝市。普段見かけたことがないような商品にも出合えると、近年注目を集めています。

今回、静岡県浜松市で2ヶ月に一度開催されている「かもえのあさいち」にお邪魔しました。生産量は少ないものの、静岡県西部の生産者たちがつくる自慢の商品が並びます。

生産者との温かな交流や、思いがけない逸品との出合いを求め、多くの人で賑わう「かもえのあさいち」の魅力に迫りました。

※浜松市鴨江アートセンター及び出店者の皆さまに許可をいただいたうえで取材・撮影をしています。

地域を食でつなぐ「かもえのあさいち」

「かもえのあさいち」は、奇数月の第3土曜日に浜松市鴨江アートセンターの1階ロビーで開かれている朝市です。開催ごとに出店者は異なりますが、いつでも共通するのは静岡県西部の生産者と、彼らがつくる自慢の商品たち。新しい味や発見、出会いを求めて、朝から多くの人で賑わいます。

会場は浜松市鴨江アートセンター

かもえのあさいちの会場は、浜松駅から徒歩15分の場所にある「浜松市鴨江アートセンター」。曲線のアーチが美しい入口に、クラシカルな雰囲気が漂います。

1928年に建設されてから空襲や大地震を乗り越え、警察署庁舎として使われてきました。2013年11月からは創造都市・浜松の発信拠点として活用されています。アーティストによるワークショップも開催し、アートを介して人々がつながる場所を目指して活動しています。

約100年の歴史と文化が息づく建物が会場の「かもえのあさいち」は、食文化の発信のためにスタートしました。入りづらいと感じている方や、初めての方におすすめのイベントです。

作り手と買い手をつなぐ交流の場

かもえあさいちの魅力は何といっても、作り手と顔を合わせて購入できることです。

買い手にとって作り手の顔が見えるのは、食の安心安全につながります。野菜のおいしい食べ方を教えてもらったり、商品のこだわりやお店を始めた想いを聞いたりと、会場内では店主の方々と会話や交流を楽しんでいる様子が多く見られました。

中には店舗を持たずに活動する出店者や、地域限定でしか購入できない品もあります。広く知られていないけれど、地元のステキな商品に出合える貴重な機会です。

さらに、出店者にとってもお客さまとの出会いや会話は楽しみのひとつ。直接商品のこだわりや使い方を伝えたり、希望やニーズを聞けたりできる場所だと話してくれました。

かもえのあさいちは商品の売り買いだけでなく、作り手と買い手双方が交流を楽しむ場なのです。

かもえのあさいちに出店する食のプロたちをご紹介

かもえのあさいちに集うのは、浜松市とその近郊で活躍する食のプロたちです。
2024年7月20日は10店舗が出店。そのうち9店舗が取材に応じてくださいました。

プロが作る野菜「おとなりさんち」

野菜作りのプロ40名が所属する「おとなりさんち」。浜松の舞阪港で廃棄されるわかめを活用するなど、地元の資源も活用した有機肥料にこだわって栽培しています。

並ぶのは、真面目に農業に取り組んでいるとわかる野菜たち。「野菜の期待値を上げる」をモットーに、必要なものを必要なところに届けられるよう奮闘しています。

人気の高さを物語るように、10時頃には多くの野菜が売り切れていました。開始直後の来場がおすすめです。

日本の伝統食を伝える「味噌工房キシタ」

味噌職人がいるお店「味噌工房キシタ」。かもえのあさいちでは、手作り味噌3種と、低温調理で麹の酵素を引き出したごぼう味噌を販売しています。

味噌のこだわりは麹の量。一般的なものの5倍の麹を使った豊かな風味は、一度食べると虜になる一品です。取材中も「以前買ったお味噌がおいしくて…」と訪れるリピーターが絶えませんでした。

「昔ながらの日本の伝統を伝えたい。絶やしたくない」と熱い想いを話してくださった店主の木下美樹子さん。お店では、日本伝統の発酵食を学べる味噌・ぬか漬け・梅干し教室も開催しています。

毎食でも飽きないインド家庭料理「ammikkal(アンミッカル)」

インドの食文化に魅せられ、店主・菅沼さんが立ち上げた「ammikkal」。かもえのあさいちでは、インドの知恵が詰まった冷凍カレーやスパイスオイル漬け、ハーブティを販売しています。

「インドの家庭料理は、食欲のない時期でも消化しやすいんです」と話してくださったスタッフさん。夏は40~50℃になる地域もあるインドでは、料理にも食欲不振や消化不良を防ぐ秘密があるのだそう。

インドでよく飲まれているハーブティを試飲すると、お茶の風味の中にスパイスのピリピリとした心地よい刺激があり、爽やかさが喉を通り抜けていきました。

日本では知られていない商品も多いため、スタッフの方と相談しながら試食できます。

甘味からお弁当まで「へっちゃらや」

隠れ家的な甘味処「へっちゃらや」。看板商品である甘さ控えめの変わり種蒸ようかんや、杏仁豆腐などの甘味のほか、お弁当やおにぎりも販売しています。

※写真のみ許可をいただきました。

完売するほど人気の天然酵母パン「小さな林檎のパン屋さん」

お店を持たず、イベントへの出店をメインに活動している「小さな林檎のパン屋さん」。お昼前にはパンが完売するほどの人気店です。

人気の秘密は、店主がそのおいしさに惚れたという林檎の天然酵母。100%国産小麦を使い、ずっしりもっちりとした食感のパンを販売しています。

「私がお酒好きなので、おつまみになるしょっぱい系のパンが多いんです」と話す店主さん。天然酵母は扱いやすさだけでなく、求める食感になるよう製法にもこだわって管理しているそう。お話の端々にパンへの愛情が感じられました。

筆者もパンをゲットできず…次回は早めに訪問します!

遠州の気候が生むオリーブオイル「遠州オリーブ」

静岡県磐田市と袋井市で約700本のオリーブをご夫婦で栽培、搾油まで行う「遠州オリーブ」。遠州産オリーブオイルや自家製植物石けんを販売しています。

オリーブオイルを試食すると、芳醇な香りに加えて普段使いのオリーブオイルと異なる、さらっとした軽い口当たりに驚きました。
品種の違いだけでなく収穫前の天候によっても味が変わるため、毎回試飲してからブレンドしているそう。

「うちのオリーブオイルは和食にもおすすめなんです」と店主さん。「大葉とミョウガを乗せた冷奴や、シラスに少し醤油を垂らしたごはんなどにも合いますよ」と食べ方も教えてくれました。
静岡県内でしか取引されていない貴重な一品です。

お茶とお菓子でホッとできる時間を「L’atelier du Thé KUKAI」

磐田市でお茶とお菓子のアトリエを主宰する「L’atelier du The KUKAI」。イギリスに留学経験のある店主・久保田さんが、現地のお茶文化に感銘を受け、日本茶でできないかとお店を始めました。スコーンやレモンケーキなどの自家製イギリス菓子と、日本茶や国産紅茶を販売しています。

気になったのが、お茶とイギリス菓子の店名がフランス語の理由。「留学中、イギリス料理もおいしいと思っていましたが、旅行で訪れたフランスで食べた料理がおいしすぎて、憧れでつけたんです」と話してくださいました。

こぼれ話を直接聞けるのも、かもえのあさいちの魅力ですね。

元パティシエが作る欧風料理「küche(キュッヒェ)」

元パティシエだった店主が作る欧風料理のお店「küche」。煮込みやパテなど、少し手間のかかる料理を真空パックにして販売しています。

おすすめをお聞きすると「全部です!」と店主さん。「家で食べたときに好みで調整できるように」と、どの料理も味は薄めに仕上げているそう。お酒に合うメニューが多く、湯せんすればすぐ食べられるのも魅力です。

「作って楽しいのは料理なんです。変化するのが楽しくて、続けられています」と笑顔で話してくださいました。

浜松の老舗ソース屋さん「鳥居食品」

鳥居食品」は、浜松で長年愛されてきた老舗ソース屋さん。浜松ではおなじみの存在ですが、かもえのあさいちでは普段スーパーでは見られない、ほぼ全てのラインナップが並びます。

筆者が驚いたのは、ソース以外の調味料も扱っていることです。

「みかんポン酢」は初めて見たと鳥居大資社長にお伝えすると「ソースに使うためにお酢も自分たちで作っているんです」と話してくださいました。
ソースにお酢を多く配合し酸味で味にメリハリを出すことで、とんかつのような脂っこい食べ物でもさっぱり食べられるよう工夫しているそう。

商品の裏側や誕生のストーリーを聞けるのは直接作り手と話せるかもえのあさいちならではです。

食を選ぶ楽しみを「かもえのあさいち」で

かもえのあさいちは、食材や食品を購入する以上の魅力にあふれていました。作り手との交流を通して、自分で食を選ぶ大切さと楽しみを教えてくれる場所です。

出店者から伝わってきたのは「地元の食材・食品を伝えたい、知ってほしい」という想い。お店や商品のひとつひとつに、作り手の情熱や苦労が詰まっています。

スーパーでの買い物だけでは知ることのできない、食べ物にまつわる興味深いストーリーに出会えるのもかもえのあさいちだからこそ。鳥居食品の社長が語った「新しいものに出合い、消費を楽しむ場所」という言葉が胸に響きました。

遠州の食のプロたちが集う「かもえのあさいち」で、食を選ぶ楽しさを感じながらお気に入りの一品を見つけてみませんか?

※取材にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!

かもえのあさいち

住所:静岡県浜松市中央区鴨江町1番地

開催:奇数月第3土曜日 9:00~13:00
    ※次回は9月21日の予定

   出店者が講師のワークショップも同時開催
    ※メール、電話、窓口での事前予約と、参加費500円が必要
     詳しくはホームページをチェック

アクセス:

【徒歩】浜松駅北口より鍛冶町通りを西へ、徒歩約15分

【バス】浜松駅北口バスターミナル3番乗り場から約10分
「鴨江アートセンター」バス停にて下車、徒歩すぐ

【車】東名高速道路「浜松IC」「浜松西IC」より約30分

駐車場:なし(許可車両のみ敷地内に駐車可能)
  ※近くに有料駐車場あり

HP:https://kamoeartcenter.org/

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この記事を書いた人

中村 ことは

パン職人ライター。趣味は旅行・神社仏閣巡り・着物。 歴史が感じられるものや場所、職人の技がきらりと光る工芸品も大好物です。 静岡県西部を中心に、私だからこそ紹介できる魅力を発信していきます。

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