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もの・こと  |    2024.09.11

岐阜県庁で開催!東アジア農業遺産学会で「次世代に繋ぐ伝統農業」日中韓交流会(前編)

2024年8月8日、岐阜県庁で「第8回東アジア農業遺産学会」が開催されました。

この学会は日中韓が有する世界農業遺産の技術交流を目的としており、日本での開催は3回目。

世界農業遺産(GIAHS: Globally Important Agricultural Heritage Systems)とは、国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する「社会や環境に適応しながら何世代にも渡り継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業とそれに密接に関わって育まれた文化」のこと。

世界で26カ国86地域が認定されており、日中韓ではその半分以上である44地域を有します。

世界農業遺産は伝統が受け継がれているだけでなく、地域の気候風土にあった持続可能な農業・漁業であり、特に発展途上国や小規模農業発展へのヒントが詰まっていると期待されています。

第8回の学会では「次世代に繋ぐ農業遺産」をテーマに農業遺産の保全やデジタル化、ブランド化を目指した各国の取り組みが発表され、参加者同士で活発な意見交換が行われました。

前編では第8回東アジア農業遺産学会を取材した内容を紹介します。

■日本の世界農業遺産

日本では2011年に初めて「新潟県・トキと共生する佐渡里山」と「石川県・能登の里山里海」の2地域が世界農業遺産に認定され、2023年11月時点で15地域が認定されています。

しかしながら、2024年1月に発生した能登半島地震で能登の里山里海を有する地域が甚大な被害を受けました。

今回の学会では能登の里山里海の取り組みを紹介し、規模は非常に小さいながら棚田が修復され、田植えが再開されているなどの復興状況について紹介されました。

能登の里山里海は日本の世界農業遺産の象徴でもあり、天災にあった際の復興モデルとして日本だけでなく韓国、中国からも注目されています。

■岐阜県の取り組み

岐阜県では2015年に「清流長良川の鮎」が世界農業遺産に登録されました。

長良川は流域に約86万人の住民が清流を保ちながらも生活を営んでおり、1300年以上の歴史を誇る鮎漁業が盛んです。

岐阜県では世界農業遺産に登録されてから、川を作る森林育成や生態系保全をはじめとした水環境・漁業資源が連関する里川システム「長良川システム」を立ち上げ、清流長良川や鮎資源の確保、清流保全に努めています。

「清流長良川の鮎」の漁法や長良川システムは、海に面していない地域での内水面漁業として注目されています。

また、世界のタンパク質供給へ貢献できると期待され、現在では200人以上の実習生を受け入れ、長良川の鮎資源を守る取り組みを発信しています。

■長良川の鵜飼見学

「清流長良川の鮎」を獲る伝統漁法として最も有名な鵜飼。長良川の鵜飼は1300年以上の歴史を誇り、皇室に保護されています。このため、長良川の鵜匠は「宮内庁式部職鵜匠」の肩書きを持っています。

鵜匠たちは5月11日から10月15日までの間、ほぼ毎日鵜飼による鮎漁にでており、観光客もその漁法を間近で見学することができます。

学会終了後、日中韓の参加者で鵜飼を見学。見学船で夕暮れに染まる長良川を眺めながら日没を待ちました。

日が落ちて花火が4回上がると鵜飼漁開始の合図。付近のホテルも明かりを落とし辺りは闇に包まれます。

船で目を凝らしていると、伝統装束に身を包んだ鵜飼が篝火を掲げながら鵜舟で近づき、巧みに鵜を操ります。鵜飼では、夜に川底で休んでいる鮎が松明の灯りに驚き浮き上がって来たところを鵜に捕まえられます。

篝火の灯りや熱さ、鵜を操る鵜匠の声、次々と鮎を捕まえる鵜。間近で見ると迫力があり、鵜に声をかける鵜匠の声も鮮明に聞こえます。

鵜飼によって獲られた鮎は鵜の嘴の跡がついており、これが「伝統漁法で獲られた証」としてブランド価値を高めるとのこと。

鮎は日中韓に加え台湾にしか生息しない淡水魚で、これらの地域では食用として親しまれています。

実際に鵜飼を間近で見た中国、韓国からの参加者はその迫力に見惚れ、長い歴史を持つ伝統漁法を自国で活用できないか船上で議論されていました。

■東アジアで農業遺産を盛り上げ、世界を牽引したい!

第8回東アジア農業遺産学会には300名余りの参加者が集い、それぞれの地域でデジタル化をはじめとする最新技術の導入やブランド化、それに関連する付加価値の向上などといった取り組みについて発表されました。

世界の⅓は十分な栄養が取れておらず、小規模でかつ地形と風土を有効利用できる農業遺産は多くのヒントがあると期待されています。

東アジア農業遺産学会の参加者は、日中韓で共通する「人間は自然の中で生かされている」という自然観を大切にし、世界農業遺産の過半数を有するアドバンテージを活かし気候風土の似ている互いの農地を視察しアイデアや技術を共有しながら、世界の農業を牽引していくことを目指しています。

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この記事を書いた人

伏見みう

元エンジニアで退職後は北欧デンマークにワーホリ滞在してました。 帰国後にイラストレーター、ライター、技術文章翻訳に携わっています。 北欧滞在&ヨーロッパ周遊の経験より、日本は地域の多様性や自然など地方ごとの魅力に改めて気づいたので、その魅力を発信したいです。 旅行、自然。アウトドア、スポーツが大好き。 静岡市在住でセルフリノベした古アパートで生活しています。

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