鹿児島県には、4の国立公園、2の国定公園、10の県立自然公園という計16の自然公園がある。
そもそも自然公園とは、県内外の方々が美しい景色の中で自然を楽しむことができる場所のことであり、日本や鹿児島県を代表する風景地だ。
各自然公園の区分は以下の通り。
国立公園
・霧島錦江湾国立公園
・雲仙天草国立公園
・屋久島国立公園
・奄美群島国立公園
国定公園
・日南海岸国定公園
・甑島国定公園
県立自然公園
・吹上浜金峰山県立自然公園
・阿久根県立自然公園
・坊野間県立自然公園
・藺牟田池県立自然公園
・川内川流域県立自然公園
・高隈山県立自然公園
・大隅南部県立自然公園
・トカラ列島県立自然公園
・薩南海岸県立自然公園
・みしま県立自然公園
日本で初めて国立公園に指定された霧島錦江湾、世界自然遺産の屋久島、生物多様性が高く評価された奄美群島など、南北600kmにも及ぶ広大な県土を有する鹿児島のさまざまな自然公園。
そのなかでも今回は、令和3年に指定された薩南海岸県立自然公園を紹介したい。
天下の絶景として伊能忠敬が賞賛した風景
薩南海岸県立自然公園は枕崎市、指宿市、南九州市の3つの市町村にまたがる。枕崎市の赤崩鼻から南九州市頴娃町郡に至る海岸、標高466mの大野岳で構成される地域だ。この地域ではどこからでも開聞岳を眺望できる。
特に、地域に含まれる番所鼻自然公園は、日本地図作成のために立ち寄った伊能忠敬が「天下の絶景なり」と賞賛した景勝地として有名だ。この地には昭和31年に建立された、当時の首相・鳩山一郎の書による「伊能忠敬先生絶賛の地」という文字が刻まれている。
番所鼻自然公園の見どころ
竜の落とし子〜吉鐘〜
目の前に広がる東シナ海には「竜の落とし子(タツノオトシゴ)」が生息し、昇竜をイメージさせるその姿から「幸運の守り神」とされている。またタツノオトシゴはメスから授かった卵をオスのおなかの袋で大切に育て出産する珍しい生態だ。その特異な生態であることや夫婦仲が良いことから古くから縁起の良い動物として言い伝えられてきた。
公園内にある幸せの鐘「吉鐘」はこの地を訪れる人々の幸福を願い建てられた。願い事の内容に合わせて鳴らす回数を選ぶ。
1回:幸運、2回:健康、3回:夫婦円満・縁結び、4回:子宝、5回:安産
海の池
この美しい景観は数十万年前に起きた阿多カルデラの火山活動によって形成されたものといわれている。海岸は火砕流堆積物と浸食作用によって自然に形成された環状岩礁や波食棚といった変わった地形だ。この地形は県内でも珍しく、「海の池」と呼ばれている。
砂浜や加工干潟はウミガメの産卵地や希少生物の生息地であり、海の池には「竜宮城への入り口」があったという伝説が残っている。干潮時には歩いてぐるっと周回できる「海の上の散歩道」になるのだ。
カップルベンチ
「カップルベンチ」という名称であるのは、太陽の光を浴びるとベンチの屋根の影が綺麗なハート形になるからだ。また、このベンチが左右から中心にかけて傾斜になっているのでベンチに腰掛けると自然と寄り添う仕掛けになっている。
貝殻絵馬
ヒオウギ貝に願い事を書いて掛ける場所がある。特に縁結びを祈願するのに効果的だそうだ。
海岸を歩きながら自然を探勝できる遊歩道
番所鼻から釜蓋神社にかけての海岸はシーホーウォークと呼ばれる遊歩道になっている。ここを歩きながら開聞岳や東シナ海を見渡すことができる。
また、海岸の風衝地に生育する自然林のマサキ・トベラ群集、潮害や風害から農地や集落を守る役割のあるクロマツ群落やタブノキ・ヤブニッケイなどの二次林が見られる。
360度のパノラマ景観が広がる大野岳
108歳を祝う茶寿にちなんで名付けられた108段の「茶寿階段」。この階段を登ると、標高466mの頂上に展望所がある。ここからは西に薩摩半島南部の海岸、南に開聞岳、東に池田湖といった雄大な景色を360度パノラマで眺望することができる。
薩南海岸を周遊して満喫
鹿児島県本土の南端に位置する薩南海岸県立自然公園はいかがだっただろうか。この自然公園の周辺には大自然が生んだバラエティに富んだ景勝地、温泉、食文化などがたくさんある。
日頃の運動不足や溜まった疲れ、ストレスの解消などのために、心と体が喜ぶ周遊を満喫してみては。
周遊の参考にぜひご活用を。