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人  |    2025.07.09

「遊び」で育む心と体の土台。作業療法士yoshieさんが「遊BODY」に込めた、子育て世代への温かいエール|長野県松本市

作業療法士として医療現場で長年ご活躍されてきたyoshieさん。現在、地域のお母さんとお子さんの心と体の土台を育むため、多岐にわたる活動を展開されています。今回は、活動を始められたきっかけから、心と体を育むことを目的とした具体的な活動内容、そして地域に温かい居場所を創りたいというyoshieさんの熱い想いを深掘りしていきます。


プロフィール

yoshie

長野県安曇野市在住、1児の母。作業療法士として25年以上の経験を活かし、親子の心と体の土台を育むふれあい遊び教室「遊BODY」を主宰。また、アロマハンドセラピストとして高齢者施設等でのボランティア活動に携わる。趣味は登山や自然との触れ合い、物づくり。


作業療法士としての原点から、地域に根差した現在の活動へ

――現在の主な活動内容について教えていただけますか。活動の幅が広いですが、具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

yoshieさん:私は作業療法士の経験から、「その人らしく生きるために心と体の根っこを育むこと」を大切にしながら、いろいろな活動をしています。具体的には、アロマハンドトリートメント、親子のふれあい遊びや運動遊びなどを中心に活動しています。

中でも親子のふれあい遊び教室「遊BODY」は、子どもの主体性を大切に、親子のスキンシップや様々な感覚を刺激する遊びを大切にしています。お家だと「ダメ!」と言われてしまうような新聞やティッシュを使った遊びも、ここでは思いっきりできるんです。今は、月1回ずつ、生後6か月から1歳2か月頃の親子と、1歳3か月から3歳頃の親子の2クラスを対象に活動しています。

作業療法士としては、その人らしく生きるためにその方の困りごとに一緒に寄り添いながらお手伝いをしたり、良い面を伸ばしたりしながら、「この方にはどんな作業が必要か」などを考えてサポートしています。病気があってもなくても、その人らしく暮らすために何ができるのか、この考え方が今の私の活動の軸になっています。

――「その人らしく生きる」という想いが、地域での活動へと繋がっていったのですね。活動を始められたきっかけについても伺っていいでしょうか?特に、アロマを取り入れた「香りの会」は、病院での経験がきっかけになったと伺いました。

yoshieさん: そうですね。活動自体は「遊BODY」が2024年5月から、「香りの会」は2023年からと、それぞれ比較的新しいんです。でも、アロマに関心を持ったのは10年くらい前になります。他県の方なのですが、緩和ケアの病棟の看護師さんでアロマを取り入れている方に出会ったのがきっかけです。リハビリは体を動かすことも大切ですが、それだけでなく「他に何かできないだろうか」と模索していた時期だったので、その時に「体に触れながらお話を聞くことも大切だ」と感じたんです。それで「私も資格を取り、体に触れながらお話を聞くことで癒したい」と思いアロマの資格を取りました。病院では使用しませんでしたが、今の活動に繋がっています。

最初の2、3年は一人で活動しており、なかなか思うように活動できませんでした。でも私の「アロマの師匠」でもある作業療法士の方が「皆が取った資格を活かす場を作ろう」と、香りの会を立ち上げてくださり、地域の方やデイサービスなどでの活動を始めたのが最初です。今も施設には継続して関わらせてもらい、様々な方と一緒に活動をしています。

――なるほど、一人で抱え込まずに、仲間と共に活動を広げていったんですね。親子の遊び場として「遊BODY」を始められたきっかけはどんなことだったんですか?

写真提供:yoshieさん

yoshieさん: 多くの方との関わりや、自分の経験から「健康であること」って当たり前なのですが、とても大切なことだなと。元気なお年寄りを見ると「元気な先輩たちはどんなことをしてきたんだろう?」と考えることもあって。それから、小さい頃から心と体を育てること、シンプルですがたくさん動いて遊んで楽しい経験を重ねることが、長い人生を健やかに生きていく上で大切なんじゃないかと思うようになりました。大人も子どもも遊びは栄養なんじゃないかって。心と体はつながっていますからね。

口の健康、体を動かすこと、ベビーマッサージ……心と体をしなやかにするようなことって土台になるなと感じた経験が背景にあります。だからといって「絶対にやらなきゃ!」と無理に思ってほしくなくて。

お家でも気楽にできることをお伝えすることで、お母さんたちが苦しくならずに済むような場を提供したいと思っています。

―― yoshieさんの活動の根底には、医療現場での経験と、子育て中のお母さんたちへの温かい眼差しがあるんですね。活動の中で、特に心に残っているエピソードがあれば教えていただけますか?

yoshieさん: そうですね。「香りの会」でアロマをさせていただいたり、「遊BODY」で子どもたちと触れ合ったりしていると「癒しに行っているはずが癒される」ということが本当に多いんです。人と関わるのが実は得意じゃないのかなって思っていた時期もあったんですけど、こうして活動を通して、やっぱり人が好きなんだなって再発見させてもらっています。

地域に「安全基地」を。活動の背景と乗り越えてきた壁

――親子の居場所づくりがなぜ必要だと感じられたのか、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

yoshieさん: はい。一番は自分の経験ですね。コロナ禍を経験し、人と関われない、すぐに相談できない環境から、とにかく不安で一人で抱え込んでしまい大変でした。そして同じ頃、ネットに溢れる多くの情報に不安になってしまっているお母さんたちに出会いました。この体験から、自分も含めお母さんたちが楽になれる場所があったらいいなと感じたんです。顔と顔を合わせて色々な経験を聞いたり、子どもたちと遊びながら、お母さんたちもすっきりできたらなと。

そこに少し私の知識や経験がお役に立てれば嬉しいです。ママの不安に寄り添いながら、一緒にできることを探すなど、少しでもほっとしてもらえるようにお手伝いできたらなと思っています。

――なるほど、yoshieさんの活動は、まさに地域のお母さんたちの「安全基地」になっているんですね。活動を進める中で、困難に感じたことはありますか?特に「人に知ってもらうこと」や「場所の確保」が壁だったと伺いましたが、具体的にどのような工夫をされて、それらを乗り越えてこられたのでしょうか?

yoshieさん: そうですね、やはり一番は「人に知ってもらうこと」と「場所がないこと」でした。特に子どもたちが思いっきり遊べる場所の確保は大変で。畳や絨毯があって子どもがごろごろできる場所、普段は公民館のような場所を借りることが多いのですが、外でも思いっきり遊ばせたいという気持ちもあって。理想は、古民家の縁側にお母さんたちが座って、庭で子どもたちが遊べるような場所ですね。

「遊BODY」の活動も「香りの会」同様、人とのつながりが本当に大きいです。「遊BODY」は保育士さんと2人で一緒に活動しているので、その中で情報が集まって、開催に至っています。

「縁側のような場所」を目指して。未来へのメッセージ

――仲間とのつながりが、活動を続ける上で大きな力になっているのですね。それでは最後に、今後の目標や、活動を通して実現したい未来について教えてください。

yoshieさん: はい。これはずっと昔からの夢なんですが「赤ちゃんからお年寄りまで縁側で集まれる場所」があればいいな、と。地域で困っている人がいたら、子どもも大人も、できる人が自然と手を差し伸べるような。切れ間なくずっと誰かが見てくれる、そんな場所が理想です。フィンランドには「ネウボラ」という、まさに子育て家庭を切れ目なくサポートする体制があるそうで、そういうイメージに近いですね。

「ここにいたら、この人がいるよ」「誰かがいるよ」って、いつでも誰かがいるような安心感がある場所。そういった場所があれば、みんなにとって温かい場所になると思うんです。これは、普段はあまり外に出さない思いなのですが、もし賛同してくれる人がいたら、ぜひ一緒にそういう場所を作れたら嬉しいですね。

――素敵なビジョンですね。きっと共感する方も多いと思います。それでは、子育て中の親御さんや地域の方々へ、yoshieさんからのメッセージをお願いします。

yoshieさん: お母さんたちには、本当に「一人で抱え込まずに」と言いたいです。お母さんが元気でいることって大事ですが、無理に笑顔でいたり、元気でいたりするのはちょっと違うと思っています。ほっとしたり、息抜きできるような、「お母さんが元気でいなきゃだよ」という言葉が苦しくなってしまうような時に、肩の力を抜ける場所として私の活動を使ってもらえたら嬉しいです。

心地よくて、親子で楽しくて、温かく、ほんわかするような、そんな場所。気楽に来てほしいです。素朴で温かい居場所として、皆さんの生活の中に溶け込んでいけたら嬉しいですね。人との関わりを大切に、これからも活動を続けていきたいと思っています。


おわりに

今回のインタビューでは、yoshieさんが作業療法士として真摯に仕事に向き合う中で、ご自身が大切にしたい「軸」を見つけ、その想いを地域での活動へと地続きで発展させてきた姿がとても印象的でした。

仲間や地域の方々との繋がりを大切にしながら、新しい道を切り拓いていくyoshieさん。「無理をしないで」「一人で抱え込まないで」という温かいメッセージからは、yoshieさんの深い優しさや人柄がひしひしと伝わってきます。

このMediallの記事が、子育て中のママやパパにとって、安心して子育てができる場所を見つけるきっかけとなり、地域の温かい繋がりがさらに広がることを心から願っています。

yoshieさんの活動はこちらから

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この記事を書いた人

水田やきいも

【ライター】長野県在住、自然が大好きな2児の母です。体験したことを分かりやすい文章で伝えることを得意としています。「読んだら行ってみたくなる」そんな発信をしていきます。好きな食べ物は餅と餃子。

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