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人  |    2025.07.23

会社員から農業女子へ転身!川口市「ISHII FARM」で都市農業の未来へ挑む

都心からほど近い埼玉県川口市にある、江戸時代から続く農家「ISHII FARM」で農業に励む石井美咲さん。都市部の農家として多くの課題に直面しながらも、新たな農業の形を模索する石井さんにお話を伺いました。

ー農業を始める前は何をしていましたか?

大学を卒業後、6年間会社員として働いていましたが、社内ハラスメントがきっかけで退職することになりました。その後、いずれまた会社勤めするだろうと思っていましたが、辛い記憶が消えず「会社に行く」という行動に踏み切れずにいました。心身ともに疲れ果てて、しばらく実家で静養していました。

江戸時代から続くISHII FARMを受け継ぐ美咲さん

ー農業を始めたきっかけは?

自宅でできるWeb系の仕事などを探し始めたころ、ちょうど実家の農業がシーズンを迎えました。せっかく家にいるからと手伝った農作業が想像以上に楽しくて、そこから「農業もアリかもしれない!」と思い始めました。

以前、弟と「将来的に広大な農地を管理しきれないだろうから、レンタル畑のような形で貸し出しできたらいいね」と話していたことを思い出し、まずは農業を知るために自分がやってみようと決心しました。

ー自宅農家では何を作ってるのですか?

江戸時代から続く川口市の特産品「浜防風(ハマボウフウ)」を中心に、年間を通していろいろな野菜を育てて出荷しています。

「浜防風(ハマボウフウ)」は、全国シェア9割を誇る川口の伝統野菜で、生で食べたり天ぷらにしたりします。茎に切り口を入れて水に挿しておくと茎がクルッと丸まって見た目も綺麗なので、料亭でお料理の添え物に使われています。

ハマボウフウ
川口市の特産品「浜防風(ハマボウフウ)」

その他にも、生食用の柔らかい「金時生姜(きんときしょうが)」、里芋の一種である「八つ頭(やつがしら)」、ジャガイモ、ネギなどを育てています。私が手伝うようになってからは、茎ブロッコリーやケール、万願寺とうがらしなど、いろいろな野菜作りに挑戦していますね。自分が食べたい野菜や興味のある品種を育てて、栽培・販売ともに「コレならできる!」というものを残していこうと考えています。品種が増えたことで父は大変そうですが、私は楽しんでいます。

収穫したばかりのジャガイモ

ー美咲さんはどのような業務をしているのですか?

現在は父を中心に、母、私、そして94歳になる祖母の4人で農業を営んでいます。栽培に関しては父がメインで行い、私は農作業の傍らで販路の開拓やSNSでの情報発信、売れ筋の品種選定などを担当しています。

出荷は主にJA直売所や、地域の飲食店へ直接販売しています。私が就農してから、個人宅配を行っている小売店と契約して新しい販売ルートも開拓しているんですよ。

昨年は収穫体験イベントも実施しました。消費者の方々に農業を知ってもらえるような施策もどんどん考えたいですね。

野菜
収穫した野菜はパッケージングして出荷します

ーやりがいを感じる部分は何ですか?

農業は自分で考えて何かを作り上げていく点で、会社員とは全く異なります。以前は起きた問題に対処することがメインでしたが、今は自分で考え、実現していくプロセスがとても楽しいですね。土や種の選定、栽培については経験豊富な父がいるので、私は新規販路やこれからの農業のあり方を考えて実現したいと思っています。

ーやりがいを感じると同時に農業の課題も見えてきたそうですね?

収益性が大きな課題だと感じています。多くの農家さんは補助金があってようやく生活が成り立つような状況で、私たちも例外ではありません。

単純に作って売るだけでは、どれだけ働いても売上が伸びないのが現状です。会社員時代の収入や定休と比べるとギャップが大きく、驚きました。また、人件費や機械代、資材費なども高騰しているのに、野菜の価格を上げると今度はなかなか買ってもらえなくなり、労働に見合った対価が得られていないと感じています。

たまねぎ
収穫したら選定して綺麗にして出荷します

特に消費者の中には安い規格外野菜を求める人もいますが、それは必ずしも農家にとって嬉しいことばかりではありません。例えば我が家は、廃棄するほど大量の野菜が出るわけではありませんし、規格外野菜を販売するにも手間暇をかけています。そうした背景を知らずに「規格外で良いから安く売ってほしい」と言われると、複雑な気持ちになります。安いものを求めるより先に、正規の価格で正規の野菜を買ってほしいというのが正直な気持ちです。

ー今後どのようなチャレンジをしていきたいですか?

一番の目標は、農業も会社員と同じように安定した給料と休みが得られる仕組みを作りたいですね。農地の規模や人員には限りがあるため、単に生産量を増やして売上を上げることではなく、効率的で持続可能な経営を目指していきたいと考えています。今考えているのは、イベントやレンタル畑の運営などで効率よく収益を確保する方法です。

ニンジン
自宅前のニンジン畑

実は今妊娠中なので、出産後は子育てしながら限られたリソースの中で何ができるかを考えています。子どもたちが自分で育てた野菜を通じて土の感触や収穫の喜び、野菜ができる過程を知る食育の場を作りたいなと…そんなイメージしている時間も楽しいです!

それらを通して、将来的には農業のイメージを変えたいという思いがあります。興味の入口として、ブランドとコラボしておしゃれな作業着のプロデュースもしてみたいです。多くの人が「農業やってみたい!」と思えるような情報を発信して、魅力を知ってもらいたいですね。

都心部の農業が発展していくために、できること・やってみたいこと一つひとつに挑戦しながら持続可能な農業のスタイルを模索していきます。

ハマボウフウ
丁寧に栽培した浜防風は生でも美味しく食べられます

農業女子の未来への取り組みに注目!

石井美咲さんは、会社員から転身し、妊娠・出産という新たなライフステージを迎えながら、現代の農業が直面する大きな課題に積極的に挑んでいます。

彼女の挑戦は、農業の未来だけでなく多様な働き方や豊かな生活のヒントにもなりそうです。ISHII FARMの取り組みに、今後も注目したいですね。

ISHII FARM

Instagram:https://www.instagram.com/eichan_oyasai/
公式サイト:https://eichanoyasai.base.shop/

★ISHII FARMの野菜は、川口市安行の「安行農産物直売所」などで購入できます。
住所:埼玉県川口市安行領家1108-1
MAP:


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この記事を書いた人

まな

関東在住。フリーランスでWebマーケティングサポート全般を行っています。20年以上におよぶ会社員生活で得た、さまざまな地域や人との出会いが人生の財産になっています。Mediallでは、地元や旅行先などで出会う「オンリーワン・ナンバーワン」をお伝えしていきます。

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