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人  |    2024.12.28

美しさと心地よさが出会う家づくり|建築家・逸見匠平

建築家 逸見匠平さんインタビュー

昭和元年から山梨の地で住まいづくりを担ってきた逸見建設(へんみけんせつ)。

建築設計を手がけながら大工としての腕も持つ当主、逸見匠平(へんみしょうへい)さんは、受け継がれてきた伝統の技を大切にしながら、リノベーションや注文住宅で独自の空間づくりを展開しています。

無垢材をはじめとする自然素材を活かした伝統工法と、地域の気候に適した高断熱設計で、夏は涼しく冬は暖かい住まいを実現。

建築から家具まで手がける幅広い技術と、地域に根差した確かな仕事には定評があります。

デザインから建築への道

(画像提供:逸見建設株式会社)

「もともと服のデザインに魅かれていたんです」と逸見さん。

デザインの世界に憧れながらも、何かを表現していきたい、自分には何ができるだろうと模索していた青年時代。

そんな時、友人の誘いで始めた屋根工事のアルバイトが、建築の世界への入り口となりました。

3年ほど屋根職人として経験を積んだ後、建築の世界の奥深さに魅了され、実家の会社で働くことを決意。

父から設計を、二人の伯父から大工の技を学びながら、建築士としての道を歩み始めました。

デザインへの探究心と職人としての技が、自然と重なり合っていきました。

やわらかな空間を育む

(画像提供:逸見建設株式会社)

白壁に連なるアーチ型の開口部が、まるでリズムを刻むように柔らかな表情を見せる空間。それが、逸見さんの設計する家の特徴です。

「建築って硬いイメージじゃないですか。もっとリラックスした空間を作りたいんです」

壁や入り口に丸みを持たせる独自のデザインは、住む人の心までもやわらかく包み込みます。

扉への考え方にも、逸見さんの建築哲学は表れています。

「プライバシーの確保、室温の管理、そして防音効果以外に、扉は本当に必要だと思いますか?」

この問いかけから生まれる設計は、必要な場所にのみ扉を配置した開放的な空間を生み出しています。

日々の暮らしの中で、扉を開け閉めする動作は意外なストレスになりがちです。両手に洗濯物を抱えていたり、子どもが走り回っていたり。そんな時、扉のない空間は思いのほか快適に感じられます。

「家族の気配も自然と感じられて、空間の使い方も自由になります。また、無駄な扉をなくすことで、その分の予算を本当に大切なものに回せます」と逸見さん。

自然素材が紡ぐ住まいの優しさ

(画像提供:逸見建設株式会社)

「その土地で育った木を使うのが一番いい」

逸見さんが、山梨の家に山梨の木を選ぶ理由はシンプルです。この土地の気候の中で、何十年もかけて育った木材は、この地の湿度や寒暖の変化をよく知っています。

「ロシアのような寒冷地で育った木材は、日本の湿度の高い環境では強度が落ちたり歪みが出たりするんです。木にとって、想定外の環境で余生を過ごすようなものですから」

床は無垢材を中心に選びます。

「夏の暑い日、裸足で歩くと木が足を包み込んでくれるような感覚があるんです」と逸見さん。

合板やフローリングでは決して味わえない、足裏から伝わる木のぬくもり。

「無垢材の床は、まるで木がそっと馴染んでくれるような温かみがあります」

(画像提供:逸見建設株式会社)

壁材も自然素材にこだわります。

「漆喰の壁は呼吸をしているんです」

室内の湿度を調整し、空気を清浄に保つ効果は、現代の化学建材では真似のできない自然の恵み。

「タコ焼きを作ったときも、翌日には匂い残りがないんですよ」

自然素材は、時を経るごとに味わいを増していきます。本物の漆喰は、昔から変わらない効果を持ち続けながら、年月とともに住まいの表情を豊かにしていきます。

予算に合わせて漆喰に似た性質を持つ自然塗料を選ぶこともできます。場所に応じて使い分けながら、心地よい空間づくりを実現しているのです。

暮らしを彩る家具たち

(画像提供:逸見建設株式会社)

建築設計の傍ら、テーブルや収納など、暮らしに寄り添う家具づくりにも取り組む逸見さん。

「新築のお客様には家具を1点プレゼントしています」と話します。家族が集まるダイニングテーブルを選ばれる方が多いそうです。

家具づくりは、建築の現場から生まれた発想でした。

「新築やリノベーションでは、たくさんの木材を使います。その過程で出る端材を処分するのはもったいない。環境のことも考え、どうにか活かせないかと模索しました」

様々な家具を手がけるうちに、その面白さにどんどん引き込まれていったといいます。木の質感を大切にした作品は、オンライン販売でも人気を集めました。

逸見さんの家具には、建築と同じように、使う人と共に育っていく温かさがあります。

「使っている方から『年々味が出てきました』という言葉をいただくのが、何より嬉しいですね」

一つ一つの家具に込められた想いは、空間全体のデザインにも確かに息づいています。

光と緑が彩る暮らし

(画像提供:逸見建設株式会社)

大きな窓が切り取る風景は、季節とともに表情を変えます。紅葉が色づき、遠くには山々が連なる眺めは、まるで一枚の絵のよう。この窓辺に設けられた造作デスクは、日々の暮らしの中で特別な場所になっています。

「窓は、その場所の役割によって選び分けています」と逸見さん。

南面の大きな窓は、冬の日差しを存分に取り入れられるガラスを採用。一方、他の窓は断熱性の高いものを使い分けることで、一年を通して快適な室温を保っているといいます。

カーテンやブラインドのない開放的な空間づくりにも、緻密な計算があります。

「庭の植栽が目隠しの役割を果たしてくれます。道路からの視線を自然に遮りながら、季節の移ろいも楽しめる。そんな二つの効果を植栽で実現しているんです」

家族の物語を包む空間に

(画像提供:逸見建設株式会社)

「価値観の合うお客様と出会って、一緒に家を作っていけたら最高です」と逸見さんは語ります。

自然素材の温もりや、丸みを帯びた空間の柔らかさ。そんな住まいの魅力を共に探求できる施主との出会いを大切にしています。

「家は単なる物ではありません。家族の思い出が育まれる場所であり、人生の大切な舞台になるんです」

より自分らしい家づくりを求める人々と、こだわりの工務店をつなぐ取り組みにも力を注いでいます。

逸見さんが目指すのは、美しさと心地よさが出会う住まいづくり。

無垢材や漆喰といった自然素材の風合い、季節の光を取り込む大きな窓、家族の気配が感じられる開放的な間取り。それらが重なり合って、住む人の暮らしに寄り添う空間が生まれていきます。そこには、受け継がれてきた技とデザインへの探究心が溶け合う、逸見さんならではの世界が広がっています。

「家づくりは、住む方と一緒に楽しみたい」

そう語る逸見さんの言葉には、建築家としての確かな美意識と、暮らしを大切に想う優しさが感じられました。

逸見建設株式会社 

https://henmi-k.jp

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この記事を書いた人

金子 よし子

山梨県出身、山梨県在住のwebライター。 山梨県の魅力をたくさん発信していきたいと思います!

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