こんにちは!福島県いわき市担当のライター、さわきゆりです。
福島県双葉郡浪江町には「大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)」という国指定の伝統的工芸品があります。
窯元が生み出すのは、独特の風合いを持つ、使う人の手にやさしい器たち。
大堀相馬焼はその使いやすさから、普段使いの食器として親しまれています。
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/走り駒-1-1024x680.jpg)
大堀相馬焼の特長のひとつが、お湯の熱が器に伝わりにくいこと。
沸かしたてのお茶でも、湯呑みを持って楽しむことができます。
さりげないポイントですが、実はここに、大堀相馬焼独特の技術が隠されているのです。
大堀相馬焼の特徴と魅力
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/0000000001392.jpg)
大堀相馬焼には「走り駒」「青ひび」「二重焼」という3つの特徴があります。
焼物では聞きなれない特徴ばかりです。
特に、器なのに青ひびとは違和感がありますね。
どういうことか、詳しく見ていきましょう。
走り駒
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/走り駒DL.jpg)
大堀相馬焼に描かれた左向きの馬が「走り駒」です。
この馬は、かつて浪江町周辺を治めていた、相馬藩の御神馬。
躍動する走り駒を描いた大堀相馬焼は、日用品であると同時に、持つ人を福へ導く縁起物でもあるのです。
青ひび
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/青ひびDL.jpg)
大堀相馬焼は素材である土と、焼く前に塗る釉薬(ゆうやく)との収縮率の違いから、器にひび割れが生じます。
このひび割れを「貫入(かんにゅう)」、貫入が広がった地模様を「青ひび」といいます。
青ひびが入るときには、とても美しく澄んだ音が聞こえてきます。
窯から出た器たちの、繊細な産声です。
大堀相馬焼では、青ひびに墨汁を丁寧に擦りこむことで、その味わいを際立たせています。
二重焼
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/二重焼DL.jpg)
二重焼とは、隙間が空いた二重構造のことです。
縦割りの写真を見ると、大きな隙間がはっきりとわかりますね。
二重焼の外側には、ハートのような形の透かし模様が入れられます。
これは、水辺で暮らす小鳥である「浜千鳥」。
「ともに荒波を乗り越える」という意味が込められています。
実は、大堀相馬焼が人の手にやさしいのは、二重焼に秘密があるのです。
二重焼が手にやさしい理由
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一般的な湯呑みは、お湯の熱が器全体に伝わってしまいます。
しかし、二重焼の大堀相馬焼は、外側が熱くなりません。
淹れたてのお茶が入っていても、安心して湯呑みを持つことができます。
大堀相馬焼の器には、もうひとつポイントがあります。
冷たいものを入れたとき、表面に結露が起きにくいのです。
これもまた、二重焼の効果です。
人々が普段使いする器を、より使いやすいように。
その思いから生み出された技術が、人の手にやさしい器を作っています。
大堀相馬焼のお店
浪江町には、大堀相馬焼を扱っているお店があります。
道の駅なみえの敷地内にある「なみえの技・なりわい館」です。
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展示品として飾られている、伝統的な大堀相馬焼。青ひびの美しさが際立っています。
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/展示品-1-1024x686.jpg)
新しいデザインのカップは、浜千鳥の透かしで大堀相馬焼とわかります。
装いをがらりと変えても、人の手へのやさしさは変わりません。
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/マグカップ-1-1024x683.jpg)
人気上昇中のぐい呑み。
小さな器でも、走り駒の躍動感は健在です。
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/ぐいのみ-1024x714.jpg)
しょうがやにんにくをすりおろして、そのまま醤油を注げる薬味皿も人気の一品。
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/薬味皿-1024x684.jpg)
渋い色合いの箸置きもいいですね。れんこんやうさぎ型もあります。
![](https://mediall.jp/wp-content/uploads/2023/08/箸置き-1024x679.jpg)
他にもランプシェードや酒器など、素敵な器がたくさん揃っていました。
このお店では、大堀相馬焼の体験教室も行っています。
世界にひとつだけの器を作ってみてはいかがでしょうか。
消えなかった灯火
今回の記事では、大堀相馬焼の魅力とやさしさをご紹介しました。
大堀相馬焼のふるさと・浪江町は、2011年の東日本大震災に伴う原発事故の際、壊滅的な被害を受けた地域です。
大堀地区に20件以上あった窯元は、浪江を離れ、それぞれの避難先へ行くことを余儀なくされました。
それでも、窯元たちは避難先で活動を再開しました。
あれほど甚大な被害を受けても、大堀相馬焼の灯火は決して消えなかったのです。
時が流れ、避難指示が解除された大堀地区では、拠点である「陶芸の杜おおぼり」が再開しました。
困難に負けず、伝統と技術をつなぎ続けた大堀相馬焼。
故郷の登り窯に火が戻り、青ひびが貫入する美しい音が奏でられるとき、新たな歴史が幕を開けることでしょう。
なみえの技・なりわい館(道の駅なみえ敷地内)
住所:福島県浪江町幾世橋知命寺40
営業時間:10~17時(火・水曜定休)
電話:0240-35-4917
URL:http://www.somayaki.or.jp/hall/
アクセス:JR常磐線 浪江駅より徒歩約15分
常磐自動車道 浪江ICより車で約10分
参考文献
・大堀相馬焼協同組合パンフレット「大堀相馬焼の技を未来へ」
参考サイト:
・大堀相馬焼協同組合HP http://www.somayaki.or.jp/index.html
・大堀相馬焼WEB本店 https://www.soma-yaki.shop/