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アート  |    2024.01.05

日本で聴けるのはいわきだけ!極上の音色「16フィートジャーマン・チェンバロ」(後編)

今回の記事は【日本で聴けるのはいわきだけ!極上の音色「16フィートジャーマン・チェンバロ」】の後編になります。
前編はこちら

前編では「いわき芸術文化交流館アリオス」(以下アリオス)にある「16フィートジャーマン・チェンバロ」(以下16ftチェンバロ)をご紹介しました。
後編は、なかなか入ることができないアリオスの楽器庫からお届けします。

アリオスの16フィートジャーマン・チェンバロ

音楽学芸員の足立さんと一緒にエレベーターを降り、貴重なその部屋へ向かうと、声楽のようなポジティフオルガン(持ち運べるパイプオルガン)の音が聴こえてきました。
楽器庫にいらっしゃったのは、ピアニスト/チェンバリストの溝井麻佐美さんです。

ピアニストの溝井麻佐美さん

溝井さんは16ftチェンバロを始め、楽器庫にある貴重な鍵盤楽器を実際に弾いて、コンデションの管理をしていらっしゃいます。

16フィートジャーマン・チェンバロにご対面

長く大きな16ftチェンバロは、フタの絵画や側面の唐草文様だけでなく、脚まで芸術的です。

アリオスの16フィートジャーマン・チェンバロ側面

16ftチェンバロの鍵盤は、白鍵が牛の骨、黒鍵が着色した柘植(つげ)の木でできています。
本体は楓(かえで)で作られ、くるみの皮が貼られているそうです。

アリオスの16フィートジャーマン・チェンバロ鍵盤

丁寧に張られた弦には凛々しさがあります。

アリオスの16フィートジャーマン・チェンバロ弦

美しい音色の仕組み

チェンバロはギターや琴と同じ、弦を弾いて音を鳴らす撥弦(はつげん)楽器です。
鍵盤の後ろには、弦の一本一本をつま弾く爪が並んでいます。

チェンバロの奏法技術はピアノに使えますが、現在のピアノの奏法ではチェンバロを奏でられません。
ピアノは鍵盤を叩くように演奏できますが、チェンバロで同じことをすると、爪が折れてしまうからです。

アリオスの16フィートジャーマン・チェンバロ爪(並び)

音楽学芸員の足立さんが、撥弦機構(弦を弾く仕組み)の部品を外して、見せてくださいました。
白い小さな部分が、弦を弾く爪です。小さくて繊細、そしてとても貴重なパーツですね。

アリオスの16フィートジャーマン・チェンバロ爪(1本)

この後、溝井さんが実際に、16ftチェンバロの音を聴かせてくださいました。

まずは16フィートストップを外して、高音域と中音域だけを使った「G線上のアリア」。
溝井さんが鍵盤を弾き始めた途端、極上の音色があふれ出しました。
軽やかで優雅なメロディは、夢を聴いているような心地良さです。

次に弾いたのは、16フィートストップを入れた「イタリア協奏曲」。
日本ではアリオスでしか聴けない、貴重な低音域が加わると、音色の表情ががらりと変わります。
重低音の深みを増した響きには、思わず驚いてしまうほどの迫力がありました。

バッハが生きていた頃、ドイツの人々がコンサートホールで楽しんでいた16ftチェンバロ。
この重厚で美しい音色を、現代のいわきで聴けるというのは、本当に素晴らしく幸福なことです。

すべての音楽は歌から生まれた

「演奏会を聴きにホールへ集まるのは特別なことではない。だから、映画を見たり飲み会を開いたりするのと同じように、生活の一部になればいいと思う」
足立さんと溝井さんは、口をそろえてこう話します。

すべての音楽は歌から生まれ、楽器へと発展していきました。
そして、歌は言語で成り立っています。
実は、世界各国で言語が異なるように、楽器にも国によって違いがあるのです。

ジャーマン・チェンバロとフレンチ・チェンバロ

左はドイツのジャーマン・チェンバロ、右はフランスのフレンチ・チェンバロの先端です。
ドイツは曲線でフランスは直線。まったく違う輪郭をしています。

この差は弦の張り方の違い、つまり音の響きの違いから来ています。
そして、同じチェンバロなのに響きが違うのは、母国語の響きが違うからなのです。
こんなところにも「音楽は歌から生まれた」という歴史が垣間見えます。

クラシックコンサートは敷居が高く感じられますが、歌うような軽い気持ちで、ホールへ行ってみてはいかがでしょうか。
生演奏ならではの、全身で音を浴びる心地良さをお楽しみいただけます。

アリオス・チェンバロコンサート情報

2024年3月、アリオスで16フィートジャーマン・チェンバロを使ったコンサートが開かれます。
・3月2日(土)18:00 本館5階大リハーサル室
 音楽の隠れ家「銀の鈴を振るがごとく」大塚直哉さん(東京藝術大学教授)
 ※翌日には体験レッスンも行われます。

・3月31日(日)14:00 いわしん音楽小ホール
 「チェンバロリサイタル」マチェイ・スクシェチュコフスキさん
 ※2023年にベルギー・ブルージュ国際古楽コンクールで優勝した、ポーランドの若き演奏家です。

お問合せ先:アリオスチケットセンター
0246-22-5800(10:00~20:00・毎週火曜定休)

いわき芸術文化交流館アリオス

住所:〒970-8026 福島県いわき市平三崎1-6
TEL:0246-22-8111
FAX:0246-22-8181
URL:https://iwaki-alios.jp/

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この記事を書いた人

さわきゆり

福島県いわき市でうさぎ1匹と暮らすフリーライターです。 250ccの小さなバイクで走り回ることが大好き。 いわき・福島の魅力をどんどん発信していきますね! いわきには市の魚・目光に由来する「めひかり塩チョコ」があります。 さて、どんなお菓子でしょう? 検索してみてくださいませ。

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