岡山県津山市は小京都とも言われる歴史と文化に育まれた街です。最近では、B級グルメのホルモンうどんを目当てにいらっしゃる方も多いようです。
この津山に「ポート アートデザイン津山」という、アートを楽しめる施設があります。この記事では、大人のアート空間「ポート アートデザイン津山」の楽しみ方を、ご紹介しましょう。
明治時代の建築を楽しむ
館内に入る前に、外観を楽しみましょう。気づくのは、重厚な赤いレンガです。レンガ造は、明治時代の特徴的な建造物、細かなところにも意匠が施されています。
今日の日本の建築技術や産業の基礎は、明治の煉瓦の建築を主要な対象として築かれてきたのである。短かったが重要な時間であったということができよう。
『日本近代建築の歴史』より
レンガ造りの建物が作られた時代は短かったのですが、今でも東京駅などで見ることができます。
ポート アート&デザイン津山の建物は、明治期に銀行として建てられました。レンガのほかにも花崗岩の細工や、門扉の独特な形状などに、当時建築にあたった人たちの「西欧文化を取り入れよう」という先人の思いを感じます。
門扉のデザインも凝っています。
掲示板の上にも同じデザインが施されています。
では建物に入ってみましょう。
館内を楽しむ
施設の見取り図はこちら。
館内は大きく6つのブロックに分かれています。
- 本館ラウンジ
- 中庭スペース
- 金庫ギャラリー
- レンガギャラリー
- ホワイトギャラリー
- コーヒースタンド
では、扉を入ったところにある本館ラウンジからご紹介します。
本館ラウンジ
正面の扉からはいると、高い壁とシャンデリアが迎えてくれます。ここが本館ラウンジです。
壁上部には緻密な細工が施してあります。高層入母屋造りだそうで、釘を1本も使っていない建物です。
シャンデリアも素敵
天井が高いので、声があまり反響しません。そのせいか、シンとした空間が広がります。
本館ラウンジでは、金継ぎの教室などもおこなわれているそうです。
中庭の脇にある通路を通って煉瓦ギャラリーに向かいましょう。
中庭
通路の脇に中庭スペースがあります。
お天気の良い日は、ひと休みするのも良さそうです。
金庫ギャラリー
金庫ギャラリーは残念ながら撮影禁止。
なにがあるのか、一度訪ねて、確かめてみてください。
レンガギャラリー
レンガギャラリーでは、地元でプロのアーティストとして活躍されている方の展覧会がおこなわれています。
取材したときには藍作家である渡辺洋美さんのイベントが開催されていました。
藍染の「のれん」をくぐって進みました。
進んだ先にあるアートスペースはレンガに囲まれる空間です。往時の人の息づかいが聞こえるような佇まいのなかに、アートが飾られています。
レンガギャラリーは2つの部屋。境界のレンガはボーダーになっています。
作家さんのこだわりの展示。
レンガの厚みが「なんだかいい」ので、何もかもがドラマチックで感情的な意味を持つように感じられたのは、私だけでしょうか?
ホワイトギャラリー
建物の最も奥のスペースは増築部分。ホワイトギャラリーと呼ばれています。
この空間も、また特別な空間です。
室内は真っ白に塗られていて、レンガギャラリーの対比で作者の思いを感じられる気がします。
渡辺洋美さんが在廊されていたので話を聞くと「館長さんに声をかけていただいた縁で個展を開催できました。ポート アートデザイン津山は、アートを飾る空間が広く、雰囲気もあるので、ありがたかったです」とのこと。作家さんにとっても、素敵な空間なんですね。
コーヒースタンド
珈琲の漢字は、江戸時代、津山班の宇田川榕庵が字をあてたと言われています。残念ながら、取材時にはオープンしていなかったのですが、イベントのときには大勢の人が楽しんでいるそうです。
館長に効くポート アート&デザイン津山の魅力
最後に、アート・ポート津山の館長である飯綱洋平さんにお話をうかがいました。
飯綱 この場所は、元は銀行の建物だったのですが、津山市が取得し、洋学資料館として使われていました。洋学資料館が、別の場所に移転してからは9年間用途が決まらなかったのですが、2018年の10月から「ポート アートデザイン津山」として使っています。
–飯綱さんは、最初から館長さんだったのですか?
飯綱 はい。私は、もともと県北にもアートを身近に感じられる空間をつくりたいと思って、鏡野町でギャラリーを経営していました。こちらの建物をアートに活用するという計画が立ち上がった際に、ぜひ関わりたいと応募したんです。めでたく採用されて、現在までこの建物の管理をしています。「ポート アートデザイン津山」の名前も私が付けました。
–名前に込められた思いを教えていただけますか?
小さい頃から芸術やデザインが好きでした。建築でフランスに留学していたこともあります。フランスでは、街そのものがアートで、日常にアートが溶け込んでいました。
先ほど話したように、私には岡山県北の人にも、アートを気軽に楽しんでほしいという気持ちがありました。だから、この施設の名前をつけるとき、遠くからも人がやってきて地元の人も楽しめる、港のようなところができたらいいなと思って、港=ポートという名称をつけました。県外からたずねてくれる方も増えてきて、だんだん港のようなところになってきたなと思っています。
–展示をおこなう作家さんは、どのように決められているんでしょうか?
飯綱 地元でプロとして活動されている方に、お声掛けをしています。地道な活動をしている方の灯りになりたいです。
–まさに港の灯台ですね。来館される方へは、どんなことを伝えたいですか?
飯綱 日常を忘れられる空間として使っていただきたいです。この施設は無料なので、10分でも気軽に寄ってみてください。そして、アートと向き合った思い出を持って帰っていただきたいです。
–開催情報は、どこでわかりますか?
飯綱 公式インスタグラムがありますから、そちらをフォローしていただけたらと思います。
PORT ART&DESIGN TSUYAMA(@port.tsuyama) • Instagram
ポート アート&デザイン津山は、気軽にアート体験ができる場所
ポート アート&デザイン津山は、日常から離れて気軽にアート体験ができる場所です。ちょっと時間ができたら、あなたも立ち寄ってみませんか?
INFORMATION
ポート アート&デザイン津山
708-0841 岡山県津山市川崎823
Tel : 0868-20-1682 Fax : 0868-20-1683
開館時間 / 10:00 – 18:00 (入館は17:30まで)
休館日 / 毎週火曜日・祝祭日の次の平日・年末年始
公式ホームページ:PORT ART&DESIGN TSUYAMAから引用