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教育  |    2024.09.07

子どもに寄り添うために「子ども」の認識をアップデート|東京・町田市

大人たちが子どもにとってよかれと思った言動が、逆効果になる場合もあることを知っていますか。
よりよくサポートするには、大人たちは子どもにどう接すればよいのでしょうか。

今回は、子どもへのさまざまな支援事業を手がける「つるかわ子どもこもんず」理事で、「子どもアドボケイト(児童相談所の一時保護所)」で子どもの声を聞く活動をしている横山雅代さんの講座にお邪魔しました。

「つるかわ子どもこもんず」理事・横山雅代さん

テーマは「子どもが安心できて心地よく過ごせる場づくりのヒント」(主催:町田市地域活動サポートオフィス)です。

横山さんは地域活動で子どもに関わるなかで、子どもについて何も知らないことに不安になったそうです。そこで、「CAP※1」や「子どもアドボカシー※2講座」などのさまざまな講座を受講して、子どもへの知識を深めていきます。
横山さんが強調するのは、子どもに寄り添うためには子どもを見る目をアップデートすること。

今回は、大人と子どもの関係を捉え直し子どもの声を聞く重要性を教えていただきました。

※1:CAP 子どもへの暴力防止プログラム
※2:子どもアドボカシー 子どもの声を聴き、自分の気持ちや考えを表現できるように支援する活動

叱ると怒るは同じで、逆効果になることも

横山さんからYesかNoかで答える以下の質問が出ます。

  • 怒るのはダメだけど、叱るのは大事
  • 愛情を持って叱れば、子どもは変わる
  • 何度も同じことを繰り返す時には、何度も根気よく叱ることが大事

これらの答えは、全部「No」です。叱るのも怒るのも、子どもにとっては同じ行為。何度叱っても、効果はなく、かえって逆効果とのこと。※詳しくは『〈叱る依存〉がとまらない』(著:村中直人)

横山「大人や支援者は、子どもたちを成長させ社会に出た時に困らないようにしてあげたい、という願いがあります。しかし、不適切な言動で逆効果になることも。
子どもに願いを適切に届けるために、『子どもとはどんな存在なのか』を改めて考えることが必要です」

子どもとは、どんな存在なのか 大人と子どもの関係を捉え直す

横山「大人と子どもの関係には、物理的、身体的、知識、経験などの圧倒的な力の不均衡があります。
子どもアドボケイト(児童相談所の一時保護所)の子どもたちは、常に大人たちから以下のような否定的な言葉を投げかけられていました。

  • おまえはダメだ!
  • 子どものくせに
  • 子どもなんだから

このようなことが続くと、相談する人がいない、相談しても何もわからないという状態で、結局は自分の人生なのに自分で決められないようになります

大人が意識しないと、社会的構造の中で子どもたちは無力化・孤立化されていきます。子どもと支援者は共に協力して課題を解決するパートナーシップであると考えましょう」

子どもと支援者(大人)との関係 (講座資料より)

横山「『うるせえ』などの反抗的な言葉を吐く子もいれば、逆に大人に認められようとがんばりすぎる子どももいます。子どもの言動の裏には、どんな願望があるのか考える必要があります。うまく助けてと言えない子どもたちの状況を把握することが大切です。

子どもたちは、要望をきちんと聞いてもらえないと『どうせ何をやっても自分はできない』『自分なんて生きていても価値のない人間だ』などと思ってしまいます。

支援者である大人が一方的に支援するのではなく、子どもと大人は一緒に協力して課題を解決するパートナーなんだと考えるのが重要です。課題だけでなく、願いも一緒にパートナーとして解決しましょう。
その際には一つひとつ対話を通して子どもに確認しながら、共同作業をします」

子どもとはどんな存在か 子どもに関わる権利条約

次は、グループごとに子どもに関わる法体系を考えるワーク。グループごとに権利条約名が書かれたカードが配られ、上から順番に並べていきました。

  • 日本国憲法
  • 子どもの権利条約
  • 子ども基本法
  • 児童福祉法
  • 児童虐待防止法
  • 町田市子どもにやさしいまち条例
条約名など書かれた付箋を並べ直すワーク

どの法律が上位か、どの権利や概念が上に来るべきなのだろうかと、みなさんそれぞれ思いを述べながら並べていきます。

その後、横山さんから子どもの権利条約の原則やその他の法律の詳しい解説がありました。印象的だったのは「子どもにとって最善の利益を決めるのは、子ども。子どもの意見が尊重されて、はじめて子どもにとって最善の利益になる」ということです。

子どもが安心できて心地よく過ごせる場とは

子どもが安心して過ごせる場所とは何か、意見を出し合う参加者の方々

最後に、子どもが安心して過ごせる場所の条件についてグループで話し合い、以下のような意見が出ました。

  • 身体的・精神的安全が確保される
  • 子どもの意見が受け入れられる
  • 自己実現ができる
  • 強制されずに自分の好きなことができる
  • 否定や評価されない

みなさん子育てを経験した親として、子どもに関わる大人として、また自分が子どもだったらと想像力を働かせた意見です。子どもが尊重される社会とは何か、真剣に意見が交わされました。

地域で子どもたちを見守る社会に

「子どもの意見を尊重し、パートナーとして大人たちが支援に関わる」

今回は大人だけでしたが、子どもにとって何が重要か、子ども側の意見を聞く場を大切にしていきたいものです。
子どもに関わる人だけでなく、地域に暮らすさまざまな方が、社会の一員として子どもに関心を持つ必要性を感じました。そうして、これから地域・社会全体で子どもを見守っていけたらと思います。

一般社団法人つるかわ子どもこもんず
東京都町田市鶴川地域で活動中
『つるかわ無料塾 結い』(学習サポート事業)、『結いの学校』(地域交流事業)他
HP:https://tsurukawa-k-commons.jp/

お問い合わせ
info@tsurukawa-k-commons.jp

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この記事を書いた人

瀬崎 貴子

地方から東京の郊外に移り住み、あっという間に子育てが終了。この街が第二の故郷となりました。ここで多くの人に支えられたので、街の魅力を少しでも伝えていけたらと思います。人とのつながりを大切に生きていくのが目標。小京都や美術館めぐり、食べ歩きが好きです。

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