松山市に拠点を置く「NPO法人みんなダイスキ松山冒険遊び場」。
前編では、活動内容や現地取材の様子などを解説しました。
今回は、代表の山本良子さん(以下、山本さん)へインタビューさせてもらった内容について紹介します。
最後まで読めば、NPO法人を立ち上げる行動力や、逆境を乗り越えるマインドなどから学びを得られるでしょう。
課題はありますか?

経営力ですね。
運営する団体がずっと続くよりも、種を1つずつ落としていく方が大事だと思っています。
一人ひとりのお母さんや子どもたちの心の中に何かを落とし、それがまたどこかで芽生えればいいかなとは思っています。

どういう展開をしていくのがいいのかは、焦らずやりたいなと。
子どもたちが元気になるっていうことが、主軸にないといけないと思います。
資金面のこと・組織運営のことと同時に、自然の中で遊ぶ方法など、常に勉強していかないといけませんね。
課題の解決策は何でしょう?

私達の提供する活動を経験をしたことで元気になった子の中から、『こういう活動は必要だから、私がやりたい』というケースが出てくるんじゃないかと。
多分、私も種を誰かからいただいたので、今やってると思うんですよね。
どうなるのかは誰にもわからないかも知れません。
百年たち、『昔そんな時代もあったけど、今良かったね』みたいに感じてもらえるときが来ればと。
山本さんのように行動するには?

自分で決めるしかないですね。
なかなか決めるのは勇気がいるけど、自分で決めないと。
あとは決める前にいろいろ悩んで学んで、それでもやりたい人はやった方が多分幸せ。
悶々としながら40歳や50歳になると、うるさいおばさんになるだけなんで(笑)
嫌われるおばさんになるぐらいなら動いて、子どもからも頼られるお母さんになった方がお得じゃないかなと思います。
逆境の中活動を継続できたモチベーションは?

子どもの姿ですね。
学校行けなくてどうしようなど、いろんな方から相談が来るんですよね。
そもそも0歳から2歳のとき、遊びたいときに遊んで泣きたいときに泣いて、みたいな保育をすると、子どもはしっかり育つんですよ。
共働き家庭が増え、0歳から保育園に入れる人が増加する中、子どもの性格も決まる乳幼児期をもっと大切にしてもらいたいと伝えたいですね。生きづらさで悩む若者の話を聞くたびにその想いが強くなります。

健やかに育っている子どもたちを見ていると、自然の中とかで遊び込んでいるので、心も体も整っていると感じます。
テレビを見てゲームをしてみたいなことだけやっていると整わず、心も体もバランスが悪くなるケースも見てきました。
せっかくだったら、自分の人生を楽しく過ごせる子どもを育てる方がいいのではないかと思っています。
そういう社会を目指すためには、自然遊びとか、保育園、幼稚園の中での質の高い保育というものをもっと増やしていかないと。

いくら口で言ってもなかなか伝わらない部分ではあるので、子どもが家に帰ってからの変化を感じると、『ああ、そうなんだ』って、腑に落ちるみたいです。
こっちから遊ばせるのはアウトなんだけど、そのときにやりたいことを思いっきり集中してやるっていう経験をどれだけ積み重ねるかによって、その子の人生が変わるんだろうとも思うんですよね。
自分の足で自分の道を踏みしめて歩くっていうのを、幼少期からしっかりやるべきですね。
運は良い方ですか?

運がいいというか、神様がいるなって思ってます。
今はちょっと出るけど、フリースクールはどこからも補助金が出なかったんです。
確実に赤字なんですが、支援の場がないとお母さんも子どもも元気を取り戻す場が本当に少ないんです。
確実に赤字なものをやってしまったんですけど、2年目ぐらいにコロナになってコロナ補助金によって助けられたということもありましたね。

生まれたときから運命に逆らわないっていうか、この年齢になって特に『感じる』ことを大切にしてますね。
例えば、みんなからも慕われている有名な大学の先生に対して、すごい人だとみんなが言ったとしても、 自分が違和感を覚える人は素直にみんなに流されずに「すごい」とは言わないようにしています。もしかしたら「すごい」人かもしれないですが…
違和感があると思うことは大事だと思ってます。

まだまだではあると思うんだけど、15年過ぎたとき、次に何が来るのか前兆をなんとなく感じるようになりました。
例えば、3年後とか5年後の子どもの状況が見えてきた時は、自分が後悔しないために伝えるようにしています。
この状態だと子どもが病むなと思うときは、お母さんが傷ついたり、お母さんから拒否されたりしないように考えながら。
100%じゃないですが、これだけ活動していると、子どもに次起きる問題はスタッフも含めて見えてくることもあるので、未然に防げるなら防げた方がいいなと思います。
どこを目指して活動していますか?

学校を変えるなんてことはおこがましいのですが、新しい学校の形を作らないといけないなと思ってて。
日本の今の学校教育とはちょっと違う新しい自由学校です。
多様な子どもたちがワクワクしながら学べる場所を作りたいと思います。どんな学び場を作るかっていうのは、今考えているところなんです。
あとは、森のようちえんをもっと愛媛県に増やしていきたいと思っています。

国からの補助があり、子どもたちが森でしっかり遊べる地方裁量型のものが増えたらいいな〜って思ってます。
まだまだ見えない世界があるけど、大変でも乗り越えることが、次のステージを見るためには大事なことなんだと思って。
何回か扉を開いてきたから、大変なことがあったときでも、これをやることで、次のステージが見えるんだなっていうのは感じるんです。
活動を通して感動したときは?

成長していく姿や、元気で今を生きている子どもたちを見るのが一番幸せです。
エレベーターや電車とかが好きで、個性豊かな男の子が、自然豊かなプレーパークに毎週来ていたことがあるんですが…
体の病気もあり学校もなかなか行きづらいような感じの子だったんですけど、毎週来てジュニアリーダーとしても動いていました。
薬の副作用で体調が悪い時もあったんですが、今は電車に乗って仕事してるって連絡が入り嬉しかったです。
大事にしている習慣はありますか?

深刻な内容も含めていろんな相談が来るから、自分で自分を癒やすことです。
晩ご飯をなるべく作り、主人と楽しく食べて、ビール飲んで、他愛ない会話してテレビみて笑うことです。
内情がわかっているので、主人も草刈りなどを手伝ってくれます。
真面目なことを考え続けたら病むので、どれだけしょうもないことを考え続けられるかをやることも。
子どものコミュ力すごいなと思うから、子どもに負けないぐらいしょうもないことをやるとか(笑)
編集後記

お笑い芸人を本気で目指していた山本さんは気さくな人柄で、分け隔てなく人に接するのが印象的でした。
山本さんのお話を通して、子どもたちが健やかに成長するうえでは、環境や関わる人が重要だと気づきました。
大人にとっても、自然豊かな森などで過ごす時間は、心身ともにリラックスできるものだと言えます。
特に感受性が豊かな子ども時代、自然の中で仲間と過ごした時間は一生の思い出となり、自分で責任を持って考え行動する大人に育っていくことが期待できます。
子育てで悩んだとき、山本さんや「NPO法人みんなダイスキ松山冒険遊び場」のスタッフさんが大きな支えとなるでしょう。
山本さんの今後の活躍に要注目です。