愛媛県松山市祝谷で、料理とおもてなしを通し、思い出に残る一日を提供し続けている「味げん やまもと」。
後編では、店主の山本佳宏さん(以下、山本さん)と、女将さんにインタビューした様子を紹介します。これまでの歩みや、仕事への熱すぎる思いやビジョンなど、貴重なお話を聞かせてもらいました。
最後まで読めば、多くの方から愛されたり仕事で成功したりするために、必要な考え方や行動などの気づきを得られるでしょう。
もともと料理人志望だったのですか?

「いいえ。
もともとは映画監督を目指しており、映像の専門学校に通っていました。卒業する前に東宝舞台株式会社に就職し、帝国劇場の大道具を担当することになります。
日本で一番の大道具と言われる棟梁のもとで、厳しさのあまり同僚が泣かされていたり、辞めていったりするのも見てきました。

半年間休みなく働くと信頼してもらえるようになり、私が辞めるときに、初めて棟梁に送別会を開いてもらえました。私にとって大きな成功体験で、本気でやったら絶対に通じると思うようになったきっかけです。
しんどかったのですが、休みの日にバンドのプロモーションビデオなどを撮影・編集し、食べていけそうになったので独立しました。
建築現場を担う会社で働いたほか、新宿でBARの営業をしていたこともあります。
そんな中で、設計などの仕事をしていた父親が60席の喫茶店を開き、頑張りすぎて体調を崩すことがありました。

後で母から話を聞くと、もし失敗して帰ってきたとき、『学歴に関係なくできるだろう』と、私の将来を考えた上での行動だったと知ります。
25歳で板前に修行に行くと決意し、リゾートホテル『エクシブ琵琶湖』を選びました。
3年ぐらいして東京に戻り、合計10年ほど和食、イタリアン、フレンチ、スペイン料理のお店で修行させてもらいました」
愛媛に帰ってからどうでした?

「漫画が1万冊程ある喫茶店ということもあり、そもそも料理が出るお店ではなかったんです。
厳しすぎた部分もあるので、従業員の方が辞めていったり、お客さんには出した料理を食べてもらえなかったりする日々でした。
このままではいけないと思っていたとき、鴨頭嘉人さんの動画をきっかけに『砥部倫理法人会』へ参加します。

多くの社長から経営について学ばせてもらったお陰で、店がうまくいき始めました。
また、最初は洋食を出していたのですが、途中で和食に転換したのも転機となりました」
お客さんから学ぶことは多いですか?

「成功している多くのお客さんは、行動の軸が社会や社員のためなんですね。
そうした生き方や考え方から学ぶことは多いです。
仕事では正直、しんどいと感じるときもあります。 いつでも課題やチャレンジすることがありますが、逃げずにやっていくと、お客さんにいいものを作れると思うんです」
料理のインスピレーションはどこから?

「例えば、あん肝を使う料理を出す場合、『あん肝に近い食材ってなんだろう?』と考えると、鶏のレバーやフォアグラなどが近いとわかります。
フランス料理では、フォアグラとフルーツを合わせるケースがあります。また、高級中華の場合、レバニラにマンゴーを乗せることで、より美味しさを引き出すこともあるんですね。

そうした知識によって、例えばニラとマンゴーなどを和えた上にあん肝を乗せ、最中に入れると美味しいことが、食べる前からわかります。
そのための経験は最低限必要ですし、到達するまでには失敗の繰り返しでもあるんですが、本当の意味での楽しさを味わえます」
夢は何ですか?

「職人にとって明るい未来を作ることです。
3年後に愛媛県内に2店舗目、6年後にスペイン、10年後に東京に新店舗を作り、職人の可能性を広げてあげられればと。例えば、新入社員には最初に私の元で3年ほど、仕事の基礎を学んでもらいます。
2店舗目のスペイン、3店舗目の東京で6年働くと、技術や経験を身につけられるほか、独立した時に英語や材料調達のノウハウを活かして仕事ができるでしょう。
海外の人の誘致などをみんなで考え、お店の前までお土産物屋さんが並ぶようなコミュニティーも作れたらいいですね」
女将さんの美早さんへインタビュー:「お店をやってきてどうですか?」

「前はカフェで今のお店と単価が違いすぎるので、接客方法を大きく変えるべきなんじゃないかと思っていたんですよ。
お客様と接していくうちに、こちらが緊張すると、お客様も緊張してぎくしゃくするとわかりました。
お客様への気配りや緊張をほぐすための声掛けなど、接客業をするうえでは一緒なんだと感じましたね。

体調が悪いとか忙しいからとかを言い訳にせず、その時のお客様に平等に、料理だけでなく、接客面でも満足してもらえるように努めてきました。
提供した料理などデータを取ったうえで、一人一人のお客様に心を通わせるのが大事だと思っています」
「味げん やまもと」で思い出に残る感動を味わおう

今回、すべてのお話を紹介しきれなかったものの、山本さんのお話を聞いていると心が熱くなりました。
本気で目の前の仕事に取り組んできたからこそ、一言一言に重みがあり、聞く人によっては今抱えている悩みや不安などがちっぽけに感じられるかもしれません。
感動的な料理や心のこもったおもてなしのほか、山本さん自身の経験による深い話などを含め、まさに記憶に残る日本料理店です。
大切な方との思い出を作るときは「味げん やまもと」へ。