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フード  |    2023.09.23

最後の晩餐に食べたいものは佐賀にある「南蛮食堂トマトの湯むき」のポタージュ【後編】

JR佐賀駅すぐ近くにある「南蛮食堂トマトの湯むき」
私の人生最後の晩餐には、こちらのポタージュが食べたい!そう思っています。

そう思わせるだけの魅力がある「トマトの湯むき」のシェフ森永泰志さんに、お店のことや料理のことをインタビューしました。

野菜をテーマにシンプルな美味しさを追求

「お野菜を料理するのは、実はとても面白いのです」と、森永さん。
特に、森永さんの手にかかる「新玉ねぎのドレッシング」「にんじんの4種盛り」はその代表例ではないでしょうか。

この白いのが新玉ねぎのドレッシングです

かつてはオリーブオイルやマスタードを使って仕上げていたこの新玉ねぎのドレッシングも、時が経つにつれて、本質的な味わいに洗練されていったそうです。

「作っていくうちにこれもいらない、あれもいらないと引き算されていきました。新玉の1番美味しいシーズンにミキサーを使い、お塩と白ワインビネガー、サラダオイルで作るだけです。これだと玉ねぎの邪魔をしないんです。
これでいいやって思ったのはごく最近になってからですね」

玉ねぎの旨みを邪魔しないシンプルな組み合わせは、玉ねぎ農家の方からも「これが一番おいしい」と言われるそう。

「にんじんの4種盛り」は、一つのお皿で、にんじんを異なる4つの調理方法で味わえる料理です。

取材時期がにんじんの時期ではなく、この写真は私が以前撮影したもの。ニンジンを少し取り分けてしまった後の写真です。

本来はそれぞれ異なるメニューとして使用されていたもの。しかし、森永さんの「これを全部一皿で楽しむ」という発想の転換が、新しいメニューを生み出しました。

「本当に、余計なものはいらないんです。引き算できるようになったのは年齢と関係があるのでしょうね。
昔だったらもう少し、こうしたい、ああしたいというのがあったかもしれません。今はこれでいいやと思います」

このシンプルさの中に、森永さんの料理人としての長い経験と探求心が息づいているのでしょう。

常に新しい料理にチャレンジ

森永さんの料理の創造性は、日常のちょっとした瞬間から生まれることがあります。
たとえばしょうがのポタージュ

これは、家で冷ややっこを楽しんでいる時の閃きから生まれたメニューだそうです。

そして、今年の新作は「きゅうりのスパゲッティ」

きゅうりをスパゲッティ状に切り、砂肝のハムを使用したミートソースをトッピング。森永さんらしい野菜をテーマにしたユニークな料理です。

「このメニュー、来年もやろうと思っています」と森永さんはニコッと微笑みました。

週5日「トマトの湯むき」に通う95歳のおばあちゃん

「トマトの湯むき」には固定ファンが多く、その中のお一人が95歳のおばあちゃん。
20年以上もの長きに渡り、ずっとお店に通われているとのこと。

その方は週に5日ランチに来られるため、12時前にはおばあちゃんのためのテーブルが確保されます。いつも娘さんの手を借りてお店に来てくれるそうです。

そして、驚くべきことに、ランチはいつも完食!

森永さん自身も、彼女のようなお客様の存在がお店を続けいていく原動力になるのではないでしょうか。

「こうして気に入っていただけるお客様がいるからこそ、自分もそれに応えなければ」と森永さんの表情が引き締まったものに変わりました。

未完成だからこそ完成を追いかけて

「『永遠の未完成。これ、完成である』というのが自分の好きな言葉なんですよね」と、森永さんの好きな言葉を教えてくれました。

未完成だからこそ、完成を追いかける。だから森永さんは、毎回新しい挑戦、新しい発見をされているのでしょう。そしてそれが、私たちが「トマトの湯むき」に引き付けられる理由なのかもしれません。

例えば空心菜の料理。これは毎年登場しますが、その調理方法は変化しているそうです。以前はオリーブオイルで炒めていたのが、去年からお水を少量加えた調理法に変えるなど、どうしたらもっと美味しくなるかを追求されています。

「常に自分の頭の中で料理を作っています」と森永さん。

私から見るとすごく料理に情熱があるのは明らかですが、それを伝えると、いつも「これしかできない」と飄々とかわされます。

森永さんが自覚されているかどうかはわかりませんが、その「これしか」の中には、深い情熱と数え切れないほどの試行錯誤の日々が込められています。

「料理は自分なりにはこれしかできないんですけど、かなり面白いなと思いながらやっていますよ。でも、まだまだ途中ですけどね」
と、「途中」という言葉を何度も繰り返されていました。

森永さんのシンプルで真心のこもった料理の世界をいつまでも

「これからの展望は?」とお尋ねすると「生き延びたい(お店を存続させたい)」とのこと。
コロナの打撃もあり、一時はかなり苦しかったそうです。

そして森永さんらしく

「昭和40年生まれで、もうすぐ60歳なので。じゃあこれから何か伸びしろとか、そのようなことは言えないし、だからできることしかできないですよね」と。

「ただ、もしできるのなら、小さいお店にして、家庭用の調理器具を使ってお客様の目の前で料理をやってみたいですね。
今はオーブンもレンジも業務用ですが、それを家庭用にしてプロの料理を作れないかなと。

たとえば、お客様の家の台所でお魚をカリっと焼いて、そこにソースをかけて。するとお客様も『うちの台所でこんな料理ができた』と喜んでくれるでしょうから。
そういうのは面白そうですね」

と、楽しそうに語られました。

仕込みに時間をかけて、手間ひまをかけた「トマトの湯むき」の料理。

あなたもおいしい料理が食べたくなったら、仲の良いお友だちと「トマトの湯むき」で、わいわい食事をしてみませんか。

そのときには、私のおすすめのポタージュを注文することも忘れないでくださいね!

お店の情報

住所:佐賀県佐賀市駅前中央2-2-10 アビタシオン神野 1F
電話番号:0952-31-5171
営業時間
11:30~14:00
17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日
日曜・祝日

Instagram:https://www.instagram.com/tomatono_yumuki/

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この記事を書いた人

副島 かよこ

徳島出身、佐賀在住のフリーライター。 「コトバを編みココロ届ける取材ライター」として愛用のCanon EOS Kiss X7と一緒に、さまざまな取材をしています。クラウドファンディングをしたい方に取材をして、クラファン本文も執筆。今まで執筆したクラファンの総支援額は1800万円・支援者数1600名以上です。 佐賀は知名度が低いですが、住んでみるととても住みやすい場所。そんな佐賀の魅力を発信していきます! 夫とセキセイインコの雨、ウロコインコの晴と一緒に暮らしています。 WEBライター検定1級|メンタル心理カウンセラー|ボイジャータロット国際認定ティーチャー

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