Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地方創生メディア

フード  |    2024.11.26

かんころ餅広まれ|発祥の地・外海の地産地消カフェ『出津農楽舎』【前編】

「かんころ餅」

長崎の人にとっては冬の食べ物として浸透していますが、その歴史まで知っている長崎人は少ないでしょう。

かく言う私もその一人。

長崎県の離島・五島が発祥の地だと思っていましたが、実は、長崎市外海(そとめ)が発祥の地ではないかと言われています。

外海は、作物が育ちにくかった地域で、春は麦・秋はサツマイモの二毛作で、主食を確保してきました。

貴重な米や餅を沢山食べたいと考えてできた保存食が「かんころ餅」です。

隠れキリシタンが多かった外海地区では、迫害を恐れた隠れキリシタンが五島に渡って、さつまいもを育て、かんころ餅の文化を受け継いだと言われています。

そんなかんころ餅文化は、近年衰退している傾向にあります。

そんな状況に危機感を抱いた杉山夫妻は、かんころ餅を広めたいと、2022年からかんころ餅専門店「出津農楽舎」を開業しました。

かんころ文化を継承したい

出津農楽舎は、長崎市外海の出津(しつ)集落にあり、長崎市中心部から北西に40キロほど行った場所に位置しています。

出津は、遠藤周作文学館、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成要素の1つとなっており、ド・ロ神父の作った救助院や出津教会もあります。歴史的にも興味深い施設がたくさんある地域です。

出津集落は大きな谷になっていて、地元では出津の谷と呼ばれています。田んぼが少なく昔からお米が取れない地域だった為、麦とサツマイモの二毛作で主食を賄っていました。

サツマイモを保存のために湯がいて、天日干ししたものが「かんころ」です。

「かんころ」は干し芋よりも、もっと乾燥しており、かんころ同士を合わせるとカンカンと音がします。

米が貴重であった昔は、かさを増すために、もち米に「かんころ」を混ぜて蒸し、「かんころ餅」として食べました。

「かんころ餅」は、各家庭によってサツマイモ・もち米・砂糖の割合が異なり、いわゆる「家庭の味」がありました。

かんころ餅づくりは、サツマイモを育て、かんころを作り、かんころ餅として完成させるという、沢山の時間と工程が必要になります。

各家庭で作られていた「家庭の味・かんころ餅」は、私が子ども頃にはすでに「餅屋さんで買うもの」と認識してしまうほどで、家庭で作り継承していくものという認識はありませんでした。

『かんころ文化を継承したい』という想いから出津農楽舎はできました。

かんころとかんころ餅づくり

出津農楽舎では、かんころ餅の原料のさつまいも・もち米作りから取り組んでいます。

「かんころ」の作り方

  • 収穫したサツマイモを、水を浸した大きなバケツに入れ、板を使いゴシゴシと洗います。キレイに皮を剥き「芋かんな」を使い、1センチほどの厚さに切ります。
  • 大きなかまど「くど」で湯がき、熱い内に干し棚「やぐら」で3日から1週間ほど天日干しします。
  • 乾いて硬くなったサツマイモが「かんころ」です。

今回、サツマイモ約20キロを「かんころ」にする手順を取材させて頂きました。

サツマイモを大きなバケツに入れて、大きな板2枚を使って洗い、収穫されたサツマイモの泥を洗い落とします。

サツマイモは1つ1つキレイに皮を剥きます。ピーラーと包丁を使って、サツマイモの皮が残らないように皮を剥いていきます。

サツマイモの皮が残っていると、かんころ餅にした時に、黒い点となってしまうのです。

素材そのものが作り出す自然な黒い点なのですが、消費者によっては嫌がられるため、丁寧に皮を剥きます。

「芋かんな」は、大きな刃が自分に向いていて、大きなかんななので、インパクト大です。

サツマイモは、空気に触れると黒っぽく変色してしまうので、常に水に浸している状態で作業を進めていきます。

1センチほどにカットしたサツマイモは、大きなかまど「くど」で湯がきますが、沸騰しすぎたお湯で湯がくと、カットしたサツマイモが崩れてしまうので、お湯加減にも熟練の技が光ります。

適度に差し水をしながら、湯がきます。熱々のサツマイモを手で触って茹で加減を確認します。

熱いうちに干し棚「やぐら」に干します。やぐらに乗った状態のサツマイモは熱々で、お湯の中に入っているサツマイモの茹で加減を確認していた時の熱さを想像し、「かんころ」作りの大変さに驚愕しました。

「かんころ餅」の作り方

「かんころ」を水で柔らかく戻し、かんころともち米を蒸し器で蒸し、砂糖を加えてつき、形を整えたらかんころ餅の完成です。

かんころを水で戻すのも、手で柔らかさを確認しながら、長年の技術で頃合いを見極めます。

柔らかく戻したかんころともち米を蒸し器で蒸し、砂糖を加えて餅をつきます。

かんころ・もち米・砂糖の比率は企業秘密。

きっと正確な分量だけでなく、長年の勘が加わって、各家庭で伝承された味付けになるのだろうと実感しました。

餅をついてまとまったら、成型します。餅とり粉も国産馬鈴薯のでんぷんを使用し、材料にもこだわりがあります。

1年中、かんころ餅が食べられますように

出津農楽舎の杉山夫妻だけでは、1年を通してかんころ餅を作れるほどのサツマイモを収穫することは難しいそう。

そこで、地域の方にも協力してもらい、サツマイモを育ててもらっています。

各農家にサツマイモの品種を変えて依頼することで、サツマイモの品種によって異なる味わいのかんころ餅を頂くことができるのです。

長崎県長崎市のふるさと納税にも選出

出津農楽舎のかんころ餅は、長崎市のふるさと納税にも選出されています。

1つ1つ丁寧に、心を込めて作られたかんころ餅。

4種の食べ比べセットは、サツマイモの味の違いを楽しむことができるので、ぜひ、素材の味の違いを感じてほしいです。

後編はこちら

かんころ餅広まれ|発祥の地・外海の地産地消カフェ『出津農楽舎』【後編】

出津農楽舎

住所:長崎県長崎市西出津2442
電話番号:0959-25-0880

カフェ営業日:土曜日・日曜日、不定期
営業時間:11時~17時

カフェやかんころ餅の販売についてはInstagramを確認してください。

駐車場:農楽舎の近くに10台ほど停められる駐車場あり。案内の看板を目指してください。

座席:屋内3テーブル10席
   屋外席では、ペットと一緒に過ごすこともできます。

記事をシェアする

この記事を書いた人

shizuka

長崎県在住のライター。 姉弟の2児の母。美味しいもの、新しいもの、歴史があるもの、楽しいこと、何でも大好き!!「 推し活」と「筋トレ」で元気いっぱい!!興味の幅は無限大。長崎の魅力をたっぷりお伝えします。

関連記事