
体育館に近づくにつれ、子どもたちの元気な声が聞こえてきました。それと同時に、子どもたち以上に元気な男性の声が聞こえてきます。
声の主は、ワッキー先生こと、運動保育士の脇坂祐輝さん。
ワッキー先生は元保育士で、現在は滋賀県長浜市を中心に年少から小学生までの運動遊び教室『TRYきっず』を運営しています。『TRYきっず』では、楽しく体を動かすことで「今までできなかったことができるようになる」を目指す教室です。
現在は約50名の子どもたちが参加しています。
「保護者さんと一緒に子どもたちが日々成長する姿を見られるので、とてもやり甲斐のある仕事です。不安もありましたが、今は毎日ワクワクしながら取り組んでいます」
ワッキー先生は、シャボン玉のようにはじける笑顔で語ってくれました。今回は、ワッキー先生に『TRYきっず』を開始したきっかけや取り組みの内容、教室の特徴などについて詳しく伺いました。
9年間勤めた保育園を退職して独立

「今まで出来なかったことが出来るようになった子どもたちを見て、運動遊びだけでやっていこうと決意しました」
今では運動遊びを仕事にしているワッキー先生ですが、元々は運動遊びにそれほど興味がなかったと語ります。
「元々保育士の仕事にやりがいを感じていて、自分自身にも合っていると思っていました。運動遊びについては、それほど興味が無かったのが本音です。長浜市が運動遊びに力を入れていることもあり、私自身も運動保育士の資格を取得したことで興味を抱くようになりました」
運動保育士とは、NPO法人運動保育士会が認定している「運動あそび実践」と「脳機能と発育発達」に関する資格です。運動と保育の専門家として、豊かな社会性を育み、自発性を促進させる役割を担います。
独立のきっかけは担当していた園児の卒園だった

「ちょうど昨年、保育園で担任をしていた年長の子どもたちが卒園したので、その子たちの卒園を機に私も保育園を退職しました。もちろん子どもが好きで、保育士として日々楽しく仕事をしていたのですが、保育全般ではなく運動保育の分野に進んでみようと思ったのが退職のきっかけです」
今も、当時担任として関わっていた子どもたちが『TRYきっず』に参加しているとのこと。ワッキー先生が子どもたちに接する様子を見ると、子どもたちや保護者の方々との信頼関係と絆、縁というものの深さを感じ取れます。
退職金を注ぎ込んで道具を購入

体育館を見渡すと、絵本に出てくるおもちゃ箱をひっくり返したような、色とりどりの道具が並んでいました。運動遊びには跳び箱やマット、鉄棒、トランポリン、縄跳びなど多くの道具を使用します。ほかにも見たことのない遊び道具も多数見られました。
「じつは、道具を揃えるために退職金を使いました。車のなかは、いつも道具でいっぱいの状態です。幼稚園や保育園と同じような遊びだと、どうしても子どもたちは飽きてしまいます。ですので、常に新しいことができないかと、毎日が試行錯誤の連続です」
書籍やほかの教室などで勉強して挑戦し続けるワッキー先生は、道具の使い方も工夫しています。

マットは平面で使用するものだと認識していましたが、『TRYきっず』では斜めにして登ることもあるようです。また、道具を使わない遊びや、親子で触れ合える遊びも工夫されています。
ワッキー先生の活動内容

ワッキー先生の具体的な活動内容について伺いました。『TRYきっず』以外にもさまざまな活動をされているようです。
学童や支援センターでの講師としても活動中

「現在は米原市で毎週木曜日、長浜市で毎週金曜日に『運動遊び教室』を開催しています。そのほかの業務としては、水曜日に『放課後等デイサービス』の職員をしているのと、保育園や学童、各支援センターでの運動遊びの講師です」
『放課後等デイサービス』は、支援の必要がある子どもたちを対象にした通所施設です。ワッキー先生は『TRYきっず』だけでなく、多くの施設で子どもたちに体を使う楽しさを伝えています。
『感触あそび』とのコラボ企画は応募が殺到

集客に関してはチラシを配布していますが、チラシよりも口コミでの申し込みが多いといいます。また、無料のイベントやコラボ企画のイベントなどを通じて『TRYきっず』の認知度も高まっていきました。
なかでも人気のイベントは、親子で取り組む感触遊びとのコラボ企画です。
運動遊びだけでなく、米粉絵の具や春雨、パン粉を使用し、大きな模造紙に絵を描いたり、感触を楽しみながら遊んだりします。感触遊びの専門家との共同企画で、イベント開催時には申し込みが殺到しました。
『TRYきっず』では貴重なスモールステップを体験できる

『TRYきっず』の目的は、体の各部位を上手に使いながら総合的に運動することです。
総合的な運動といえば器械体操のイメージではないでしょうか。しかし、器械体操の教室はどこも本格的な教室ばかりです。
一方で、『TRYきっず』は本格的な器械体操とは大きく異なります。重要視しているのは、運動の苦手な子どもたちでも取り組めるようなスモールステップです。
「たとえば逆上がりや跳び箱など、今までは出来なかったことができるようになるように取り組んでいます。少しでも子どもたちの自信につながるように声掛けを行い、スモールステップを積み重ねていく指導方針です」
ワッキー先生自身が保育士出身ということもあり、子どもたちとのかかわり方に関しては、ほかの教室と一線を画します。また、運動を通して子どもたちと保護者の方々を幸せにしていきたいと、目をキラリと輝かせながら語ってくれました。
ボランティアでの地域活動にも尽力

ワッキー先生は営利目的だけでなく、地域でのボランティア活動にも積極的に参加しています。
「4月から、市民センターで親子で遊べる活動として開催されるイベントが決まりました。まだ具体的な名称や内容については決まっていませんが、日程はすでに決まっています」
市民センターでの地域活動では、子どもたちに自信をつけてもらうのが大きな目標です。また、土日に親子で遊ぶ場所がない人のための居場所になればいいとワッキー先生は語ります。
「ぜひ、イベントを通じて親子間のコミュニケーションに役立ててほしいです」
ワッキー先生自身も一人の父親であり、同じ境遇の保護者にとっては身近な悩みに応えられる存在でしょう。ほかにも、地域の施設で開催している運動遊びの講師への依頼もあったとのこと。
今後、ますます需要が高まり、活動の場も広がっていきそうです。
ワクワクするような新たな挑戦

保育士の仕事も楽しかったけれど、自分で何かに挑戦したかったと熱く語るワッキー先生。子どもたちを教えることで、自分に何ができるのかを理解できたといいます。
「イチから自分で作り上げていくなかで口コミが広がり、今まで以上に多くの方々に喜んでいただけるようになってきました。また、色々なお仕事の依頼もいただけるようになってきたこともあり、とてもやり甲斐を感じています」
保育園を退職する際には不安もあったといいますが、今は色々な挑戦をしていくことで新しい世界が見えるようになってきたといいます。
「次はどのような展開にしていこうかと、未来を考えることが楽しくなってきました。だから、今は不安以上にワクワクしています」
先生自身がワクワクした日々を楽しむことで、子どもたちにもその楽しさが伝わっているように感じました。
『TRYきっず』に関する詳細はインスタグラムまたは公式LINEをご覧ください。

Instagram:www.instagram.com/trykids.100/
LINE:TRYきっず公式LINE