Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地方創生メディア

フード  |    2023.11.25

「美味しいコーヒーをつくる」終わりなき探求|Brunfelsia Roasteryー横浜市青葉区【前編】

Brunfelsia Roastery

「飲めば一生忘れないかもしれない」

その一言とともに目の前に出された一杯のコーヒー。

カップに口を近づけると、香水を思わせる花の香りが鼻腔をくすぐります。

私の知っているコーヒーとは違うーー。

舌に残るような苦味や酸味はなく、さっぱりとした後味は「もっと飲みたい」という逸る気持ちと「飲んだらなくなってしまう」と惜しむ気持ちを同時に湧き上がらせます。

そんな驚きの体験を提供してくれたのが、横浜市青葉区にあるBrunfelsia Roastery(ブランフェルシアローステリー)のオーナー伴憲作(ばん けんさく)さんです。

器具が並ぶカウンターテーブルで、コーヒーを抽出する伴さんの姿を見ていると、理科の実験を目の前にしたようなワクワクとした気分になります。

ガレージを改装したぬくもりを感じさせる店内でコーヒーの香りに包まれながら、伴さんにお話を伺いました。

※本記事は【前編】【後編】に分けてBrunfelsia Roasteryの魅力に迫ります。

「やりたい時にやる」営業時間が書いていないBrunfelsia Roastery

Brunfelsia Roastery

「正直ちょっと入りづらいお店だとは思うんですよ」(伴さん)

こどもの国線こどもの国駅から5分ほど歩いた住宅街にあるBrunfelsia Roastery。

看板にコーヒーの文字はなく、お客さんからは「なんのお店かわからない」と言われることもしばしば。

「そもそも店をやるつもりはなかったんです」

そう話す伴さんのメインの仕事は、豆の卸業とコーチングです。

Brunfelsia Roasteryは、もともとカフェではなく実家のガレージを改装した焙煎所でした。

焙煎所を開いたのは今から6年程前で、当時はコールドテーブルと焙煎機だけだったと言います。

Brunfelsia Roastery

「地元ということもあって、昔からの知り合いも多い。ありがたいことに『何してるの?』と声をかけてくれるんですよね。それで商売とは関係なくコーヒーを振る舞っていました。でも半年くらい経って「さすがに悪いからお金を払うよ」っていう人が出てきたんです。でも当時は食品衛生管理者の資格も取っていなかったので「いらない。いらない」って言ってたんですけど、お金を置いていくようになってしまって」(伴さん)

「これはよくないな」と思った伴さんは、周りの後押しもあり、店をやるために必要な資格を取得します。

当時、お店をやる時間が取れず、空いていた土日を使って「やりたい時にやるか」と今のBrunfelsia Roasteryが始まりました。

Brunfelsia Roastery

お店の営業は土日のみ。

営業時間は書いていません。

なんのお店なんだろうと興味をもってくれていた人たちが「実は、前から気になっていて・・・」と、意を決して尋ねてきます。

「コーヒー屋だとわかると、『コーヒーは飲めないんです』という人も多いんです。でもそういう人が一回来たら毎週来るんですよ。『面白い』って」(伴さん)

一期一会の喜び|コーヒー屋としては破綻?

焙煎する前の生豆。

「焙煎は感覚だけでやったらダメですけど、1割くらいは感覚を頼りにしています。面白い焼き方とか、新しい発見をする上では大切なのかなって」(伴さん)

伴さんはお店で出すコーヒーを”実験豆”と呼び、コーヒーを焙煎する機械を調整して、焼き方を変化させるなど、いろいろなことを試しています。

伴さんが焙煎した実験豆のラインナップがお店のメニューに書かれていました。

しかし、それを見ないお客さんがほとんどだと言います。

「はじめて来店される方にはご説明します。でも常連さんの好みの系統はわかっているので『多分これが好きですよ』と勧めます。ほとんどの方が、勧められたものを飲まれますね」(伴さん)

Brunfelsia Roastery
その時、お店で購入・飲むことができるコーヒーのリスト。説明文にも注目。

伴さんの実験豆は一期一会。同じものがまたとして飲めない、その時限りの出会いというのも魅力です。

「『先週の豆美味しかった!今週買える?』って言われることがあるんですけど『ないです』と答えています。先週の豆は先週だけ、その時にしかないから面白いじゃないですか。うちはブレンドも出しているんですけど、本来ブレンドって、ちゃんと比率を決めているので再現性のあるものなんですよ。1杯目、2杯目、3杯目って同じ味じゃなければいけない。でもうちで出すブレンドって再現性ゼロ。面白く混ぜちゃっているんで。コーヒー屋としては破綻していますけど、そういうのが楽しいんですよね。遊び心まんさいです」(伴さん)

同じ味のコーヒーは飲めないーー。

しかし、訪れる度に新しい出会いと新鮮な驚きが待っています。

コーヒーのマリアージュは無限大

Brunfelsia Roastery

取材で訪れた時、お店にはカボスが並んでいました。

「今週はカボス週間なので置いておいたんです。それがライムになる時もあればグレープフルーツになる時もあります」(伴さん)

意外に思えたコーヒーとカボスの組み合わせ。

しかし、伴さんによるとコーヒーと柑橘系の相性は抜群だと言います。

「コーヒーは、ジンやウォッカでも抽出できるんです。例えば、200mlのコーヒーに対して、15mlのジンを入れる。そこにカットしたライムを絞って、カクテルのような感じにすると合いますよ。お店にはそれだけを飲みに来られる方もいます」(伴さん)

お店にあるコーヒー器具の1つ。弾いた豆をフィルターに通すことで、自分が狙いたい粒度に揃えることができる。粒の大きさを変える、揃えることでどれだけ味が変わるか実験するのが面白いという。

コーヒーとお酒の組み合わせも新鮮です。

年末年始には、日本酒を熱燗にして、コーヒーを抽出するのも美味しいのだそう。

「豆の細かさによって、同じコーヒーでも味が変わるんですが、日本酒の場合はコーヒー豆を荒めに引きます。ちょっと形容し難い味なんですけど美味しいです。コーヒーカクテルは自由度が高いですね。マリアージュは面白いですよ」(伴さん)

他のカフェではなかなか飲めない、少し変わった組み合わせを味わえるのもBrunfelsia Roasteryならでは。

ワクワク体験を提供!コーヒーのエンターテイメント

お客さんが何を飲むか悩んでいる時、伴さんが聞くのが「ここに来る前に何を食べましたか?」という質問。

直前に食べたものに合わせて、甘みをしっかりしたものにするのか、苦味のあるものにするのか、フルーティーなものをもっていくのか、抽出の濃度はどうするかなど、伴さんは考えを巡らせます。

「正解は何かって言われると定かではないんですけど、カウンセリングっていうのかな?話を聞いて『じゃあ、これだと思いますよって』お出しするのも面白いです」(伴さん)

自分にあったものを提供してもらえる特別感がそこにはあります。

Brunfelsia Roastery
コーヒーチェリーの皮や果肉部分を乾燥させた「カスカラ」。

飲み慣れた味から離れて、新しい味に挑戦するのは勇気のいること。

伴さんは、お店に訪れるお客さんに『チャレンジしてみてください』と伝えていると言います。

「初めて来られたお客さんの中には『酸味が苦手、苦いのがちょっと』とか、逆に『苦いのがいいんです』など、いつもと違うものに挑戦することをためらわれる方がいます。みなさん自分の領域というものがあって『その範囲外のもの、苦手なものには踏み出さない、挑戦しづらい』ってあると思うんです。でも、せっかくお店まで来たのであれば挑戦しないのはもったいないですよね。お客さんには『そこからちょっとはみ出てみませんか?』とあえて声をかけています」(伴さん)

Brunfelsia Roastery

お客さんには、ワクワクしながら自分の領域の範囲外に出てみてほしいーー。

今まで伴さんが勧めたものを飲んで「やっぱり無理です」と言うお客さんはおらず、全くコーヒーに興味がなかったのにハマってしまう人もいるのだとか。

「『他のコーヒーが飲めなくなる』って言ってもらうこともあるんですけど、違う飲み物だと思ってもらった方がいい。『コーヒー・・・かもね?』って言うのが、僕の店のコンセプトなんです。『新しい飲み物だ』と言っていただくのは嬉しいですね」(伴さん)

Brunfelsia Roastery

伴さんの手にかかると、飲み慣れたはずのコーヒーも違った飲み物に。

思い切って挑戦した先には新たな発見があったり、自分の知らなかった一面に気づかされたりすることがあるかもしれません。

「感じ方は人それぞれなので、うちで出すコーヒーが美味しくない可能性もある。でも、お店にくるお客さんはみんなびっくりされます。ワクワク体験・面白い体験をしたければ是非いらしてください」(伴さん)

新しい何かがポッと生まれるきっかけに

Brunfelsia Roastery
お店にはショコラテも。取材当時のショコラテはスパイシー系。「秋・冬はみなさん糖分を欲するので、次のショコラテは甘めにしようかな」と伴さん。季節によって変わる味わいもワクワクするポイント。

Brunfelsia Roasteryでは、企業をメインにコーヒー豆を卸しています。

「パワースタンドを置いている企業さんが日本でも増えていると思います。そこで企業の方が『あー、疲れた。これからでっかいプレゼンだ。よしあのコーヒーを飲もう』って飲むのがうちのコーヒーだったら面白い。もしかしたら、のちに誰もが知る製品の重要な決定の場面で、実はうちのコーヒーを飲んでいたなんてこともあるかもしれないじゃないですか」(伴さん)

「何かを作り上げている世界で活力剤になるアイテムがうちのコーヒーだったら最高ですね」と伴さんは目を輝かせます。

Brunfelsia Roastery
テイスティング用のグラス。グラスによっても味や香りの感じ方は変わるそう。

コーヒーをきっかけに人との出会いも生まれます。

お店を始めたら、面白い人、個性的な魅力をもつ人との出会いがあったという伴さん。

各業界で活躍しているお客さんから、面白い話が聞けるのだと言います。

「いろいろな業界の『えー!』って言う話が聞けるんです。僕は『Newton』っていう雑誌が好きで、定期的に買っているんですが、自分の知らない未知の世界が垣間見えて、プロフェッショナルの人たちのかけらに触れられるのが面白いんですよね。それと同じことがお店にいると生で味わえるんですよ」(伴さん)

お客さんと話をしていて、自分の知らない世界が知れるのは、お店を開業した時には狙っていなかった喜びだったと言います。

伴さんの人柄か、美味しいコーヒーがそうさせるのか、コーヒー片手にワクワクする話が飛び交います。

Brunfelsia Roastery

Brunfelsia Roasteryはお客さん同士の交流もあり、お店での出会いをきっかけに、一緒に仕事をすることになったケースもあるのだそう。

「元々、そういうのを望んでいたんです。本来カフェって社交場だったので、この店も社交場としての役割を果たしたら面白いですね。コーヒーを通じて繋がった人同士で、仕事や何かが新しく生まれるのが好きなんです。その生まれる瞬間、片手にうちのコーヒーがあったらなおよしですね」(伴さん)

ワクワクする気持ちや新しい出会いが生まれるBrunfelsia Roastery。

【後編】は、伴さんがコーヒーの世界に足を踏み入れたきっかけや、これからの夢についてお伝えします。

Brunfelsia Roasteryの情報

Brunfelsia Roastery

店名:Brunfelsia Roastery(ブランフェルシアローステリー)

住所:〒227-0038 神奈川県横浜市青葉区奈良1丁目22−8

電話:03-6450-7667

営業:土日(営業時間は公式LINEでお知らせ)

メール:brunfelsia.roastery@gmail.com

Instagram:Instagramへ

記事をシェアする

この記事を書いた人

Takano

フリーライター。元WEBエンジニア。社会福祉士の資格をもつ。SEOライターを経て、現在は主に取材記事を執筆。文章を通して、魅力あふれる企業・人・お店・自然・食べ物・イベントを紹介。旅先で植物園、美術館、博物館を訪れるのが好き。 感情が伝わる文章を目指しています。ぜひ、PRのお手伝いをさせてください!

関連記事